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「会社の指示だから」「伝えるように言われたから」はダメ!上司が部下のやる気を引き出す「ネガティブフィードバック」でやってはいけないこと

やる気がある女性
部下のやる気を引き出すフィードバックのコツをプロが伝授(Ph/photoAC)
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厳しいことを効果的に伝え、相手の行動変容を促す、ネガティブフィードバックは、ビジネスシーンなどで有効な手段です。それを実践する上で大切なのは、何をどう伝えるかだけでなく、上司側のマインドを整えることだと話すのは、『ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』(アスコム)を上梓した、人事コンサルタントの難波猛さん。ネガティブフィードバックを成功させるための5つのマインドセットと、感情的にならないための「アンガーマネジメント」について教えてもらいました。

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ネガティブフィードバックで大切な上司側のマインドとは

ネガティブフィードバックでは、何をどう伝えるかも大切ですが、ネガティブな情報を伝える際の上司側のマインドを整えることも大切です。「やりたくない」「面倒くさい」という気持ちを抱えたまま部下との面談に臨んだり、無感情に淡々とギャップを埋める行動について伝えたりしても、部下側も反発し、互いに感情的になってしまう可能性があります。

ネガティブフィードバックで大切なのは、ロジカル(論理的)なだけでなく、上司自身と部下の感情的な面に配慮したコミュニケーションを心がけること。

「そのためには、上司の側が『落ち着いて、ただし無感情ではなく真摯な姿勢で』ネガティブな話を伝える心の状態をつくることが重要です」(難波さん・以下同)

嫌われることを覚悟する

難波さんが必要だと話す、ネガティブフィードバックのための最初のマインドセットは、「嫌われることを覚悟する」こと。面談で厳しいことを伝えれば、部下には大なり小なり反発されるのが自然です。ネガティブフィードバックは「いかに嫌われないか」ではなく、「嫌われる可能性を織り込み済み」で行うコミュニケーションです。

「上司の役割は、『部下に好かれること』ではありません。『部下を成長させること』で、『組織の成果を最大化すること』です。嫌われないが部下を成長させられず組織の成果を達成できない。それでは厳しい言い方をすれば、上司としての役割放棄です」

期待するが期待しない

2つ目のマインドセットは、「期待するが期待しない」こと。期待するのは「部下の変化と改善」で、期待しないのは「上司の思い通りの行動」です。「この人は成長できる」と期待したうえでネガティブフィードバックを行いますが、解決策や行動計画は部下自身に考えさせ、上司はあくまでも支援やアドバイスに徹することが大切です。

応援する女性
上司はあくまでも支援に徹する(Ph/photoAC)
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「『部下の可能性(改善・気付き・変化・成長)には期待する』『100%上司の思い通りの行動は期待しない』というバランス感覚のあるマインドセットをもって臨むと、部下は厳しいフィードバックを受けたとしても『自分に期待してくれている』『自分の計画を尊重してくれている』『自分を応援してくれている』と、根底の部分で上司への信頼感を持つことができます」

感情をこめるが感情的にならない

3つ目のマインドセットは「感情をこめるが感情的にならない」ことです。「部下がどうなるのがベストか」という「相手軸の感情」はこめつつも、「この人と話すのは面倒くさい」「こんな成果は自分が困るから勘弁してほしい」といった「自分軸の感情」は避けましょう。

また、「会社から指示されたからやりなさい」といった、部下に対する期待やポジティブな感情を持たずに行う「無感情なフィードバック」も部下の過度な反発を招く恐れがあります。

「ネガティブフィードバックは性善説に立つのが基本です。それでも、厳しいことを伝えられた部下が、短期的に反発したり、挑発したり、ケンカ腰になったりと感情的に反応することもあります。少なくとも、上司側は過剰に感情的に反応しないように心がけましょう」

真剣に業務に取り組む

4つ目のマインドセットは、「真剣に業務に取り組む」ことです。「自分のことを棚に上げて、相手にだけ高い要求をするのは信頼を失う行為です」と難波さん。部下に厳しいことを言うのであれば、上司自身も真剣に業務に取り組み、「この人に言われたら仕方がない」と相手に思わせることも重要です。

「人間はどうしても自己評価が甘くなりがちです。自分を俯瞰する『メタ認知』を鍛えて、部下の前に自分自身の行動に対して客観的にネガティブフィードバックを行うことも、上司として必要な姿勢です」

自分で決める

最後のマインドセットは、「自分で決める」ことです。「伝えるよう会社に言われたから」といった、言い訳を考えてしまうような優柔不断さでネガティブフィードバックに臨むのは厳禁。

ネガティブフィードバックの実施が会社側の決定や要望であるということは起こりえますが、実際に部下と面談するのは上司だからです。「なぜこのことを伝える必要があるのか」が上司としても腹落ちしてから面談に臨み、もし納得できないならば、上司自ら会社側と話し合うことも必要です。

考える女性
自分で納得したことだけ話す(Ph/photoAC)
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「上司が口にする言葉は、どんなに言い訳をしても上司自身が発した言葉です。だからこそ、『伝えるか、伝えないかは自分で決める』ことが重要なのです」

「アンガーマネジメント」で怒りの感情をコントロールする

いくら心を整えてから面談に臨んでも、部下から強く反発されると思わず感情的になってしまうこともあるでしょう。そんな時のために覚えておきたいのが「アンガーマネジメント」。

アンガーマネジメントは、常に怒らないようにするのではなく、自分の怒りの感情やパターンを認識し、怒るべき場面では適切に怒り、怒る必要がない場面では怒りを抑える技術です。

「このスキルを身につけると、怒りに任せて行動することはなくなります。たとえば、部下の反抗的な表情や挑発的な言葉に怒りの感情がわいてきても、落ち着いて対話できるということです」

人それぞれ「コアビリーフ」があることを知る

アンガーマネジメントの観点で、まず把握しておきたいのが「コアビリーフ」という考え方。コアビリーフとは、個人が正しいと思っている信念や価値観を指し、このコアビリーフを他人や社会が破った時に怒りの感情が生まれます。コアビリーフのこだわりは人それぞれで、許容量も人によって異なります。自己分析し、コアビリーフを破られることを許せないタイプであるという自覚がある人は、「相手には別のコアビリーフがある」ということを念頭においてから面談を始めましょう。

ハートを持った手
人それぞれ大切にしている信念は異なる(Ph/photoAC)
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「上司の『コアビリーフ』を押し付けられた部下は、自分の『コアビリーフ』が侵害されるので当然反発します。部下の仕事へのこだわりや、働くうえで大事にしている信条などのコアビリーフを把握して、そこを満たしながら成果が出る方法を一緒に考えてみてください」

感情が荒立ちそうなときは一度面談を止める

それでもお互い感情的になってしまったり、嫌な空気になってきたと感じたりした場合は、一度面談をやめるのも有効な選択肢です。

アンガーマネジメントでは、怒りを感じる場所や状況から一時的に離れることを「タイムアウト」と表現します。面談中は部下からタイムアウトを宣告するのは難しいため、上司が部下の感情も把握しながら適切なタイムアウトを設定しましょう。

「日を改めて再開するほうが、クールダウンしてお互いに冷静に考える時間ができて、実のある面談になる確率は高くなります」

◆教えてくれたのは:人事コンサルタント・難波猛さん

スーツを着た男性
人事コンサルタントの難波猛さん
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なんば・たけし。マンパワーグループ株式会社シニアコンサルタント。早稲田大学卒業。コンサルタントとして3000人以上のキャリア開発施策、2000人以上の管理者トレーニング、100社以上の人員施策プロジェクトにおけるコンサルティング・研修等を担当。セミナー講師、大学講師、官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。著書に『ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』(アスコム)など。

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