いくつになっても、若々しく好印象な美人へと寄せることができる“骨格補正メイク”を考案した池田曜央子さんは、30代まで建築士として活躍していたキャリアウーマン。最終回となる第3回は、39歳からメイクの道に進み、1000人以上の女性をきれいにしてきた池田さんに、これまでのキャリアが役立った経験と美容が大人女性にもたらす効果についてお話ししていただきました。
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培ってきたキャリアを活かして発想を転換
20代から30代にかけて、建築や空間デザインの仕事で走り続けた池田さん。30代の終わりからメイクの仕事を始めたことは意外に思えますが、建築の現場で培ったことが今に活きていると語ります。
「今振り返ってみると、新築ではなくリフォームの仕事をしていたのが、現在につながっている部分は大きいと思います。今あるものを修正したり、今あるものを変えるために帳尻を合わせるということは、メイクにも共通するものがあるんです」
自分の経験をもとに伝え方も工夫する
池田さんが提案する“骨格補正メイク”は、顔の輪郭やパーツの比率を測ってから、元々の顔立ちや加齢によって変化が出ている箇所をメイクで黄金比に近づけようというもの。これは、建築の仕事の経験無しには生まれなかったものだといいます。
「グループレッスンをはじめた頃は、測るということはしていなくて、誰にでも共通するメイクのルールをホワイトボードに書いて、さぁやってみましょうと席を回っていたんですが、人の顔はそれぞれ違いますから、説明する内容も少しずつ変わるんですよね。
ある時、生徒さんから『なぜ彼女はこうしてと言われるのに、私は違うんですか?』と質問されたことがあったんです。でも、顔が丸いとか長いとか、目が離れてるとか寄ってるとか、直接言われるのってなんだか嫌ですよね。だから、傷つけずに、でも分かりやすく伝える方法を模索しました」
建築士の経験から生まれた“骨格補正メイク”
顔のバランスに対して直接的に言うのはデリカシーがないと思い躊躇するものの、レッスンであるゆえに正確に理解してもらうことは必須。そこで池田さんが導いたのが数字で示すこと。
「数字だったら客観的な事実だし、傷つかないんじゃないかと思ったんです。設計の仕事をしようと買ったけれど、全然使っていなかったCAD(コンピュータ支援設計)のソフトの存在を思い出し、顔の比率を測ったらどうだろうって。
そこで生徒さんの顔写真をそれぞれ撮影して、比率を測って説明したんです。あなたはこことここを比べるとここが小さいからメイクで修正する。ここが広いからここを狭める。そうしたら、みなさん納得して、理解してくださったんです。比率の数字なら傷つくこともないし、自分のメイクの方向性の基準がわかりやすい資料ができるんですよね。
遠い業界のようですが、実は建築士の経験があって“骨格補正メイク”の土台ができ上がったんです。どんな経験が、いつ活きるかわからないものですよね」
迷っている人へのアドバイスは自分の経験が源
43歳のときに、糖質依存を克服し、17kgのダイエットをしてミセスコンテストに挑んだ池田さん。自ら経験してみることで、スクールで教える内容やアドバイスの幅が広がったのだとか。
「生徒さんの中にコンテスト出場のためにメイク講座に来るかたが何人かいらっしゃって、みなさん楽しそうに自分磨きをしていたんですよね。
やるからには本気と、ウォーキングの授業やボディのメンテナンスに行って、話し方の先生にも教わって…と奮闘する姿を見て、自分も挑戦してみたいなと思ったんです。
自らやってみることで、ステージではどういうメイクが求められているか理解できて、今までになかった観点からアドバイスできることも増えました。学ぶなら経験者からのほうが安心だと思うので、私は自分が経験したうえでアドバイスをすることが多いです」
メイクに迷っている人は現在地がわかっていない
大人女性がメイクをするときは、まずは写真を撮ってみてからだと池田さんは指南します。それも、自身の経験があるからだそうです。
「私自身もそうだったのですが、メイクに迷っている人は、目的地だけを見ていて、現在地がわかっていない人が多いです。
そこで、今の自分の現在地を理解するために、顔の写真を撮ってみることをおすすめしています。すると、年齢を重ねてから起こるたるみ、影や張っている場所など、鏡ではわかりにくいことも、平面で見ると現状をしっかり把握できて、目指す方向性が理解できるんです。
私が提案する骨格補正メイクは、基準となる比率が全部決まっていて、現在地を把握したうえでメイクでちょっとずつ黄金比に寄せるというものです。論理的に基本のバランスへと修正するだけで、顔が若々しく見えます」
論理的なものはみんなに納得してもらえる
「メイクってなんとなくセンスによるものだと思われがちですし、実際にセンスで成功している先生やメイクさんもたくさんいます。でも私はセンスではなく、誰でも理論立てて理解できるスーパーベーシックなもののほうが、腑に落ちて習得できるんじゃないかなと思うんです」と話す池田さん。ベーシックで論理的なものだからこそ、生徒たちも納得してくれるのではないかと自己分析します。
「生徒の中にも、他のメイク講座に行ってみたけれど、センスでふんわり教えられて、再現もできないという声を聞きます。私の講座で学んでやっとなるほどと理解できたと言っていただけるので、迷ったら論理的にメイクを学ぶのがいいかと思います。
きっと、私が感覚的な天才肌タイプだったら、『こうしたほうがきれいじゃない?』と自分のセンスに任せて言っていたと思うんですけど、そうじゃないからこそ、誰が見ても美しいと思う基準があるんだから、この通りにやってみれば絶対に似合うメイクになる、と説明できるようになったんですよね。
建築の現場でも、図面に必要な寸法が出てないと認識のすり合わせができず、すぐに呼び出されていたんです。でも図面にきちんと寸法が記されていれば、電話1本で納得してもらえる。今振り返ってみると、その経験もあって、人に正確に伝える方法は数字だと思ったのかもしれません」