鈴木亮平(41歳)が主演を務めた映画『シティーハンター』が4月25日よりNetflixにて独占配信中です。誰もが知る大人気コミックを日本ではじめて実写化した本作は、主人公の冴羽獠が東京・新宿の裏社会で活躍するさまを描いたもの。コミカルな要素もてんこ盛りの、上質なアクション・エンターテインメント作品に仕上がっている。本作の見どころや鈴木さんの演技について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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あの『シティーハンター』がついに日本で実写化
本作は、漫画家・北条司さんによる同名作品をNetflixが実写化したもの。これまでに『シティーハンター』はアニメ化をはじめ、さまざまなメディアミックス展開がなされてきました。香港やフランスではすでに実写化されていますが、日本での実写化はこれが初めて。
主演に鈴木亮平さんを、ヒロインに森田望智さんを迎え、『ストロベリーナイト』(2013年)や『ういらぶ。』(2018年)、『名も無き世界のエンドロール』(2021年)など、多くのエンターテインメント作品を手がけてきた佐藤祐市監督がメガホンを取っています。
そんな本作が描くのは、東京・新宿の裏社会で起こるさまざまなトラブル処理を請け負うスイーパー(始末屋)、冴羽獠の活躍。コミカルでスリリングな大作が誕生しています。
描かれるのは一流スイーパー(始末屋)の活躍
物語の舞台は東京・新宿。主人公の冴羽獠(鈴木)は、裏社会で起こるさまざまなトラブルの解決を請け負うスイーパーです。
大人の女性に目がなく、ことあるごとに「もっこり!」などと口にする変わった男ですが、スイーパーとしての腕前は超一流。
ある日、そんな彼のもとに一件の仕事の依頼が舞い込みます。その内容とは、有名コスプレイヤーの女性を捜索するというもの。獠は相棒の槇村秀幸とともに彼女の行方を追いますが、槇村がある組織に狙われ、突然この世を去ってしまいます。
残された彼の妹・槇村香(森田)から事件の真相を調べてほしいと懇願され、獠は新宿の街に繰り出していくのです。
安藤政信、森田望智らが提示する世界観
世界中にファンを持つ『シティーハンター』の、満を持しての日本での実写化。やはり錚々たるメンツが一堂に会し、本作の世界観を作り上げています。
主人公・獠の相棒である槇村秀幸を演じているのは安藤政信さん。1996年に映画『キッズ・リターン』でデビューを果たして以降、数々の作品を背負ってきた人物として知られていますが、そのキャリアも30年に届こうとしている現在、バイプレイヤー的な立ち位置を築きつつもあるのではないでしょうか。映画にドラマにと、彼の姿を見かけない日はないように思えるほどです。
本作は獠と香がバディになるまでを描くものですから、安藤さんの出番は決して多くはありません。ただ、こういった作品は導入部こそがもっとも重要。観客(視聴者)に作品の世界観を提示しなければなりません。安藤さんはその肉体と声をもって槇村秀幸というキャラクターを立ち上げ、『シティーハンター』の世界観を構築することに貢献しています。
最重要キャラクターである香を演じる森田さんといえば、放送中の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)を支えているひとりです。彼女に対して俳優としての貫禄のようなものがあるのを感じているのは筆者だけでしょうか。いえ、多くのエンタメファンにとってそうだと思います。
どのような作品にも柔軟に適応し、ときにはシーンを支配してみせる。森田さんはそんな力を持っていると感じます。それはこの『シティーハンター』という作品においても発揮され、主演の鈴木さんとともに痛快なバディ関係を作り上げています。
そのほか、華村あすかさん、水崎綾女さん、片山萌美さん、阿見201さん、杉本哲太さん、迫田孝也さん、木村文乃さん、橋爪功さんといったプレイヤーが揃っているうえ、アニメ版で獠の声を担当している神谷明さんが本作でも声の参加を果たしています。
そんな作品の看板を背負っているのが、鈴木亮平さんというわけです。
鈴木亮平=獠にあがっていた期待の声
実写版『シティーハンター』で鈴木さんが獠を演じるとの報が出たとき、ネット上はポジティブな声で溢れていたものです。
日本が誇るビッグタイトルの実写化とあれば、賛否の意見が分かれるのは当然のこと(実写化にはいろいろな理由があるはずなので、筆者は基本的に賛成も否定もしませんが)。それでも本作の場合は、そのビジュアルが出た瞬間から期待の声があがっていました。
理由のひとつは、やはりその再現度の高さ。鈴木さんは高身長の恵まれた身体の持ち主で、演じる役ごとにハードな肉体改造もやってのける俳優です。ファーストビジュアルの時点で、誰もが彼が獠として生きているところを想像できたのでしょう。
もうひとつの理由は、言うまでもなく彼のこれまでの功績です。時代劇にも現代劇にも、鈴木さんはあらゆるジャンルの作品に適応し、動的な演技も静的な演技も高く評価されてきました。その要素は実際に本作にも見て取れるのです。
コミカルとシリアス、ふたつの顔をもつ獠を体現
先述しているように、獠とは急に「もっこり!」などと言い出す変わった人物で、おちゃらけてばかりいる非常にコミカルな存在です。しかしそのいっぽうで、シリアスな態度でことに当たることもある。このふたつの顔には大きな差がありますが、それが極端すぎるとキャラクターとしての一貫性が無くなってしまいます。
本作で鈴木さんは鍛え抜かれた肉体をさらけ出して陽気に踊ったりなどしていますが、物語の核心に迫るとき、その表情はきゅっと引き締まっています。まるで別人です。けれども私たちは鈴木さんの体現する獠というキャラクターに対して、絶えず一貫性があるのを感じます。
よくよく注意して見ていると、コミカルで陽気な様子の中にも厳しさがあり、シリアスな厳しさの中にも必ず陽気さを取り入れているのが分かります。大胆な演技を展開するときほど繊細さを大切にし、繊細さが求められる演技に徹しているときこそ少しだけ大胆なことをする。これらがつながっているから、私たちは獠というキャラクターをに嘘がないのを感じるのです。