不調改善

《今から備える》“梅雨だる”どうしてなる?対策は? 薬剤師が解説する

頭に手を当てる女性
“梅雨だる”とも呼ばれる、梅雨時期の体調不良には早めの対策を
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例年6月上旬ころから始まる梅雨。この時期特有の気候の変化は、体のだるさや頭痛、めまい、関節痛、むくみなど、“梅雨だる”の症状を引き起こす。薬剤師の山形ゆかりさんによると、早めの対策をすることで体調不良を改善できるという。そこで、梅雨だるが起こる原因を漢方医学の考え方で解説してもらうとともに、予防・解消のための食事や漢方薬について教えてもらった。

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梅雨だるの原因

梅雨だるの主な原因は2つあり、気圧・気温の変化による自律神経の乱れと水分代謝の低下が挙げられます。

気圧・気温の変化による自律神経の乱れ

梅雨だるの症状である、だるさや疲れなどが起こるのは自律神経の乱れが主な原因です。自律神経は、交感神経と副交感神経の2つの神経がバランスをとることで、気圧や気温の変化に対処し、体調を保っています。

たとえば、気圧の変化によって体にかかる圧力にあわせて、自律神経が血管の膨張または収縮をして太さを調整し、気圧による圧力を体の内側から押し返しています。しかし、天候が不安定で気圧の変化が大きくなる梅雨時期は、自律神経に負担がかかり、調整機能が乱れやすくなります。

また、晴れの日と雨の日の激しい寒暖差が繰り返されることは体にとってストレスとなり、やはり自律神経の乱れにつながります。

悪天候と体調不良のイメージ
梅雨時期の不安定な天候が体調不良の原因に
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加えて、雨が多い梅雨の時期は気圧が低くなりやすく、低気圧の状態では体をリラックスモードにする副交感神経が優位になります。体を休ませようとして血圧や脈拍の低下、体力や気力の減退、眠気の誘発などが起こるため、だるさを感じたりやる気が起きなくなったりしやすくなります。

水分代謝の低下

むくみや頭痛、めまい、消化器系の不調といった梅雨だるの症状は、体内の水分代謝が低下し、余分な水分がたまることで起こります。水分代謝が低下する原因は、梅雨の時期の湿度の高さです。

漢方医学では、梅雨の時期の湿度の高さを「湿邪(しつじゃ)」と呼びます。湿度が高いと体内に余分な水分をため込みやすく、体が冷える原因となり、むくみや頭痛、めまいなどの不調を引き起こすと考えられています。

湿邪は消化器にも影響を与え、食欲不振や消化不良、下痢なども起こりやすくなります。そのため、消化器系の不調も湿邪による梅雨だるの症状に当てはまります。

結露
湿度が高いと水分代謝が滞りやすい
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梅雨だるの予防・解消法

梅雨だるを予防・解消するには、自律神経を整えたり水分代謝を活発にしたりすることが有効です。生活リズムの見直しや適度な運動などでセルフケアをしましょう。

生活リズムを整える

不規則な生活で体内時計が乱れると、自律神経も乱れて梅雨だるにつながりやすくなるため、生活リズムを一定にするように心がけましょう。

平日や休日にかかわらず、なるべく毎日同じ時間に起きるようにし、起きたらカーテンを開けて日の光を浴びることで、体内時計をリセットできます。曇りや雨の日もカーテンを開け、暗い場合は電気をつけて部屋を明るくすると、体が活動モードに入りやすくなり、だるさの軽減につながります。

また、1日3回決まった時間に食事を摂ることも大切です。とくに、朝食を食べることで内臓が動き出し、その刺激によって体が活動モードへと切り替わり、体の活動リズムを整えることができます。

体を冷やさないようにする

体が冷えると水分代謝が低下して、梅雨だるの悪化につながります。蒸し暑い日が続く梅雨の時期は、冷たい食べ物や飲み物をとりがちですが、梅雨だるを予防・解消するには、できるだけ温かいものを摂り体を冷やさないようにすることが大切です。

マグカップを持つ女性
梅雨時期の体調不良対策には体を冷やさないようにすることが大切
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また、梅雨の時期くらいからスーパーや電車など外出先の冷房が効いていることも多くなります。冷房で体が冷えないように、すぐに羽織れるカーディガンやストールなどを持ち歩くのがおすすめです。

適度に運動する

体を温め、血行を促すことが水分代謝の促進につながるので、運動も梅雨だるの予防・解消に効果が期待できます。

室内でできるストレッチや簡単な筋トレであれば、雨の日でも可能です。血流アップには、とくに第二の心臓と呼ばれるふくらはぎを動かすことが効果的なので、スクワットのような運動がおすすめです。また、つま先立ちや階段の昇り降りといった簡単な動作でも、意識的に行うことで梅雨だる解消に役立ちます。

梅雨だる解消に役立つ食材

梅雨だる解消には、体内の余分な水分の排出を促し、水分バランスを整える食材を取り入れましょう。

余分な水分を体の外に出す働きがあるカリウムが豊富なきゅうりやトマトは、梅雨の時期に旬を迎えるので、ぜひ食卓に取り入れたい食材です。また、食物繊維やミネラルが豊富なわかめやとうもろこしなども体内の水分の巡りをサポートする働きがあり、体に溜まった老廃物の排出を促して水分バランスを整える食材です。

きゅうりとトマト
きゅうりやトマトなど、旬の食材でカリウムを摂ることがおすすめ
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また、しょうがやねぎなどの薬味は、体を温めたり胃腸の働きを活発にしたりする効果で、梅雨だるの不調の改善に働きかけます。

ただし、きゅうりやトマトは食べすぎると体を冷やし、とうもろこしやしょうがの過剰摂取は胃腸に負担をかけます。ひとつの食材を摂りすぎるのではなく、さまざまな食材を摂ってバランスのいい食事を意識しましょう。

梅雨だる解消には漢方薬も役立つ

梅雨だるには、「体内の水分代謝を改善して余分な水分を排出する」「消化・吸収の働きをよくして必要なところに栄養を届ける」といった作用で、不調の根本改善を目指す漢方薬も役立ちます。

スプーンにのった生薬
梅雨だる解消に役立つ漢方薬を2つ紹介
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おすすめの漢方薬

・五苓散(ごれいさん)

利尿や発汗によって余分な水分を排出し、体内の水分のバランスを整えます。頭痛やむくみ、下痢などに用いられる漢方薬です。

→五苓散について詳しく知る

・六君子湯(りっくんしとう)

胃腸の働きを高めて、胃にたまった余分な水分を排出します。胃痛や胃もたれ、食欲不振など消化器系の不調に幅広く用いられる漢方薬です。

→六君子湯について詳しく知る

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:薬剤師・山形ゆかりさん

白衣の女性
薬剤師の山形ゆかりさん
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やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。

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