
ジメジメとした日が続く梅雨の時期。関東での梅雨入りは記録的に遅い6月下旬の見込みだ。食生活や運動量は変わっていないはずなのに、なんだか太った気がするという人も増えてくる。その体の変化には、気候が関係している可能性がある。そこで、ヨガインストラクターの高橋かなこさんに、梅雨太りの原因とその解消方法について教えてもらった。
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梅雨に太りやすくなる原因
梅雨に太ったと感じるのは「むくみ」が原因かもしれません。梅雨の時期は気圧が急激に低くなり、自律神経が乱れやすくなります。この乱れにより血管の収縮や拡張の調整がうまくできず血流が悪くなると、不要な水分が体外へ排出されにくくなります。すると、体内に余分な水分がたまりやすくなり、むくみにつながるのです。
また、冷えもむくみの大敵です。夏は気温が高く冷えにくいと思いがちですが、決してそんなことはありません。エアコンの効いた部屋で長時間過ごしたり、冷たい食べ物や飲み物を口にする機会が増えたりすると体が冷えて、血流が悪くなるので、むくみやすくなる可能性があります。
むくみと体重増加の関係
前述した通り、むくみとは余分な水分が体にたまった状態をいいます。その水分の重さに比例して体重も増加する傾向があるため、太ったと感じるのです。

たとえば、足やすねなどを指で押さえて、そのあとがなかなか戻らないほどむくんでいるときは、正常時の5〜10%以上の水分が体内にたまっており、普段の体重が60kgの人は63〜66kg以上に増える可能性があります(益田市医師会「むくみ(浮腫)とは何?」https://www.masuda-med.or.jp/info/health_information/health_information-678/)。
このように、脂肪が増えていなくても水分によって体重が増えると、見た目にも影響が出て太ったように見えるのです。
梅雨太り解消ストレッチ
梅雨の時期の体重増加の一因であるむくみを改善するには、ストレッチも有効です。部位別のストレッチを紹介するので、すきま時間に実践してみましょう。
ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎの筋肉には、足に送られた血液を押し上げて心臓へ戻す筋ポンプ作用がありますが、運動不足などでふくらはぎの筋力が低下して筋ポンプ作用が弱まると、冷えやむくみを引き起こす血行不良の原因になります。そのため、ふくらはぎの筋肉を毎日意識的に動かすことがむくみの改善につながります。

【1】腰幅程度に両足を広げて真っ直ぐ立つ。座って行う場合は、いすに浅く腰掛ける
【2】かかとを上げて10秒キープする
【3】ゆっくりとかかとを下ろす
【4】【2】【3】を5〜10回程度繰り返す

立ってストレッチを行う際に体がグラグラする場合は、壁などに手をついて体を支えてください。立ったままであれば通勤電車の中や家事の合間に、座ったままであればデスクワーク中にも実践できます。
股関節のストレッチ
脚のつけ根には下半身のリンパが集合するリンパ節があり、この部分に老廃物がたまると下半身全体がむくみやすくなります。つまり、脚のつけ根をストレッチでほぐすことで、リンパの流れがスムーズになり、むくみの解消につながるのです。

【1】仰向けで、両手を体の横に置く
【2】ひざを曲げ、脚を付け根から外回し、内回しする。それぞれ10回程度行う

【3】両脚を上げて、力を抜いてブラブラする
ひざで大きな円を描くようにゆっくり回すのがポイントです。体がグラグラして安定しない場合は、両手でしっかり床を抑えて脚を動かしましょう。
首のストレッチ
首周りの筋肉をほぐしてリンパの流れをよくすると、顔まわりのむくみ解消の効果が期待できます。頭に添えた手の重みで首周りの筋肉を伸ばしていきましょう。
【1】あぐらで座る。左手を真横に伸ばして床に置き、右手は左耳の上あたりに添える

【2】頭を右に倒して10秒キープしたのち、頭の位置を正面に戻し、同様に逆も行う

【3】両手を後頭部に添えて頭を前に倒して10秒キープしたのち、頭の位置を正面に戻す

【4】鎖骨に手を添えて頭を後ろに倒して10秒キープし、頭の位置を正面に戻す
背中が丸まらないように、背筋を伸ばして行うのがポイントです。また、このストレッチはいすに座っていても、立った状態でもできるので、ふくらはぎのストレッチ同様に家事の最中や通勤時間、デスクワークの合間などにやってみてください。
梅雨太り解消に役立つ食材
梅雨太りの原因であるむくみは、気圧の変化や冷え以外に塩分の過剰摂取によっても起きます。塩分を摂り過ぎると体内の塩分濃度を薄めるために水分をため込むため、梅雨太り解消には塩分を摂りすぎないように注意するのが大切です。
また、利尿作用がある「カリウム」を多く含む食材を食べることで、体内にたまった塩分(ナトリウム)や水分の排出を促す効果が期待できます。

カリウムは海藻類や果物などのほか、これから旬を迎えるきゅうりやモロヘイヤなどの夏野菜にも多く含まれています。
暑い日でも食べやすい生野菜サラダや冷製スープにするなどして、日々の食事に積極的に取り入れましょう。
梅雨太りには漢方薬も役立つ
むくみによる梅雨太り解消には、ストレッチや食事での工夫に加えて、「水分の循環をよくして余分な水分の排出を促す」「血流をよくして、脚の筋肉の緊張をゆるめる」といった作用がある漢方薬を取り入れ、むくみを改善するのもおすすめです。
おすすめの漢方薬
・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
疲れやすく、汗をかきやすい人に用いる漢方薬です。体の余分な水の排泄を促し、水太りやむくみを解消します。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
疲れやすく、貧血症状のある人に用いる漢方薬です。血行を促進して体を温めるだけではなく、水分代謝をよくすることで、むくみや冷えを改善します。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:ヨガインストラクター・高橋かなこさん

たかはし・かなこ。RYT200(全米ヨガアライアンス認定)修了インストラクター。企業での事務経験から、デスクワークで疲れた部位や崩れた姿勢のためのレッスンを得意とする。自身のダイエット成功経験から、美しい体を作るためには食と思考が大切だと痛感し、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp)などで精力的に情報発信を行っている。