不調改善

《夏こそ冷えに注意》不調を遠ざけるカギは「腸を温める」こと!今すぐ実践したい「朝の具だくさんスープ」、腹巻き、腸もみ体操

女性のお腹
腸を温度を上げて内側から元気に! 最強の腸活術を専門家が伝授(Ph/イメージマート)
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健康の要である腸。消化や吸収、排泄だけでなく、生活習慣病や認知症のといった病のリスクや、免疫維持にも関係することが最新研究で明らかになっている。あらゆる腸活方法や整腸食品がひしめく中、最強の腸活術を伝授する。

監修・取材

全国冷え症研究所所長 山口勝利
松生クリニック院長 医学博士 松生恒夫

腸を温めて「病気にならない体になる」

食物繊維を豊富に含んだ食品を食べて、納豆やキムチなど発酵食品を食卓に並べ、ストレッチやウオーキングなど運動を欠かさない―整腸のためにやるべきことはいまや無数にある。その中で、もっとも重要なのは「腸を温める」ことにあった。全国冷え症研究所所長の山口勝利さんが言う。

「人の体温には、環境に左右されやすい皮膚の温度と、体の機能を守るために一定程度保たれる『深部温度』というものがあります。この深部温度が1℃下がると免疫力が30%下がり、深部温度が1℃上がると免疫力は500%くらい高まるといわれています。

疫力が高まれば感染症にかかりにくくなり、腎臓病など重大疾患を予防できるばかりか、深部体温を上げたことで腰痛やひざの痛みなどが緩和されたという声は多くあがっています。また代謝も11%上がるとされます。すると、やせやすい体になり、自律神経も整うなどさまざまな健康効果が期待されるのです」

松生クリニック院長で医学博士の松生恒夫さんは、腸を温めることで、「病気にならない体になる」と続ける。

「腸にはウイルスや細菌、がん細胞などの異物を排除する免疫の働きがあり、免疫細胞やリンパ球の60%以上が集まっていて、“人体最大の免疫器官”とも称されるほど。

腸が冷えることで動きが停滞すると当然そうした働きは弱まるため、自律神経のバランスも崩れて交感神経が優位になってさらに腸の動きが悪化します。腸内環境も乱れ、アレルギー疾患や生活習慣病、感染症、うつ病、がんなど大きな病の危険にさらされることになる。翻っていえば、腸を温めることによってあらゆる不調や病気を遠ざけられるということです」

あなたは何個あてはまる? 腸冷え度チェックリスト

□下半身や足先、手足などが冷えやすい
□時間帯や場所による温度差が大きいと体調が悪くなる
□便秘したり、ガス腹やおなかの張りを感じたりすることが多い
□冬になると便秘や下痢などの腸トラブルが悪化しやすい
□いつもなんとなくおなかがスッキリしなくて、体も重い
□手足や顔がむくみやすい
□緊張したり不安があったりすると胃腸の調子が悪くなる
□それほど過食していないのに、太りやすくやせにくい
□ダイエットしていても下腹だけぽっこり出ている
□疲れやすく、風邪をひきやすい
□入浴ではあまり湯船につからず、シャワーだけのことが多い
□腕や足、腹部などを露出する服をよく着る
□移動は車や電車が多く、あまり歩かない
□冬、温度差のかなり大きいところを頻繁に行き来する
□夏はクーラーのきいた室内に長時間いる
□運動や活動的なことが好きではない
□朝食を抜いたり、飲み物だけにすることが多い
□ビールなどのお酒が好きで毎日のように飲んでいる
□野菜や果物はあまり食べない
□生活の中でストレスを感じることが多い

腸冷え度チェックリスト
腸冷え度チェックリスト
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チェックの数が、

0~2個なら「ほぼ安心」
3~4個なら「軽症」
5~7個なら「進行中」
8個以上なら「重症!」

腸冷え度チェックリストの結果
腸冷え度チェックリストの結果
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出典/松生恒夫『腸の冷えを取ると病気は勝手に治る』

重要なのは体表面の温度より深部温度

ここまで読んで、「自分は平熱も高いし、わざわざ腸の温度を上げる必要はない」と思う人もいるだろう。しかし、そこには大きな落とし穴がある。山口さんが解説する。

「健康な人であれば体表面の温度より深部温度は1~2℃ほど高い37・2~38℃くらいが理想。気をつけたいのはいくら平熱が低くないからといって深部温度が高いとは限らないことです。これまで6万人以上の血液と内臓の温度を調べてきましたが、平熱が36℃台であっても6割ほどの人の内臓は冷えています。手足の冷えがある人は内臓の温度も低い傾向にあり、日本人の約8割は内臓が冷えていると分析しています。

恐ろしいのは、平熱が高く冷え症でもないと、内臓の冷えに気づかないことです。実感しないままに冷えがどんどん悪化し、病気が忍び寄ってくることも充分ありえます」

山口さんは、まずは自分の体の状態を正しく知ることが大切だと続ける。

「1日のうち4~5回ほど、体温計で自分の体温を測ってみましょう。体温の変動が1.5℃以上あるような場合はすでに自律神経の異常が起こっていて、内臓が冷えていると考えられます。また、おへそをはさんで上下に右手と左手をあててみてください。どちらが上でも構いません。上にあてた手よりも下にあてた手が温かければ内臓が冷えているサインです」

乳酸菌や根菜類、みそ汁を積極的に摂る

腸の温度を上げるためにはどうすればいいか。まずは体に入れる食べ物を意識したい。

「整腸効果もある乳酸菌や根菜類、みそ汁は積極的に摂るといいでしょう。逆に生野菜は体を冷やしてしまいます。腸活でヨーグルトを食べる人も多いかもしれませんが、ヨーグルトは体を冷やす牛乳が原料です。食べるなら、1日のうちでいちばん体温が低い朝ではなく、ある程度温まってきた昼か夜がいい。

究極の温め食材はヒハツという香辛料です。インドでは薬としても使われ、日本ではロングペッパーや島こしょう、ヒバーチなどの名称で売られています。実際、ヒハツを1日1g食べ続けてもらったところ、60才の女性のかたが0.4℃、50才の男性のかたが0.9℃、内臓の温度が上がりました」(山口さん)

ヒハツやエクストラバージンオリーブオイルなど調味料も体を温めるものにシフト。
ヒハツやエクストラバージンオリーブオイルなど調味料も体を温めるものにシフト(Ph/PIXTA)
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松生さんが推すのは、「具だくさんのスープ」と「エクストラバージンオリーブオイル」だ。

「腸を温める第一の方法は温かい液体を摂取することですが、一時的に温まるだけでは意味がありません。なるべく長く温かい状態を維持するために摂っていただきたいのがエクストラバージンオリーブオイルです。80℃の白湯と、オリーブオイルを垂らした白湯、しょうが湯の3種類の温度変化を調べたところ、1時間後もっとも温かかったのはオリーブオイル入りの白湯でした。

これは油膜によるものと考えられますが、油ならなんでもいいわけではありません。エクストラバージンオリーブオイルは精製しておらず、酸度が低く、薄く均一に広がって、高い保温効果を得られます」

同様に、具なしのコンソメスープと具だくさんのスープを飲んだ後、それぞれの体内温度の変化をサーモグラフィーで検出したところ、具だくさんスープは時間が経っても温度が下がりづらかったという。

「具は豆や雑穀、野菜など食物繊維が含まれたものが望ましいでしょう。さらに、蠕動運動がもっとも活発に行われる“腸のゴールデンタイム”である朝に食べることで、排便効果も期待できます」(松生さん)

みそ汁や具だくさんスープは積極的に取り入れて。みそ汁には根菜を入れるのがベスト
みそ汁や具だくさんスープは積極的に取り入れて。みそ汁には根菜を入れるのがベスト(Ph/PIXTA)
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日本人の食生活の変化によって増加した腸の病気

そもそも、日本人の食生活の変化に腸を冷やす要因があると松生さんは指摘する。

「いまから50年前、日本では腸よりも胃や十二指腸の病気が圧倒的に多かった。しかしいまでは腸の病気が増加の一途を辿っています。この50年で日本人の主食は米からパンに変わり、野菜や食物繊維の摂取量は大幅に減りました。一方で体を冷やす乳製品や、肉の摂取量は増えています。

腸の機能維持のためには食物繊維は必須。主食でもち麦や大麦、全粒粉パンなどを食べるだけでも腸の状態はよくなり、温活の効果も高まります」

入浴・マッサージ・冷房 外部から受ける刺激を意識

食事に気を配ると同時に、体の外側から温めることも心がけたい。毎日の習慣にすべきは、浴槽につかっての入浴だ。山口さんが言う。

「お風呂の効果は体を温めるだけではありません。あがってしまえば結局は冷えますから。お風呂に入ってリラックスすることで副交感神経が優位になり、深部体温を上げやすい状態を作るために非常にいい。リラックスすることが重要なので、温度や時間など細かいことは気にしなくても大丈夫です。自分が心地いい温度で、のぼせないよう気をつけてお湯につかってください」

松生さんは、入浴時には腸もみ体操をしてほしいと重ねる。

「私のクリニックでは、38~40℃のぬるめのお湯に20~30分ほど半身浴することをすすめています。お湯につかりながらやってほしいのが腸もみ。下腹部の右下から骨盤に沿って、へその右上、左脇腹、左下まで順番にお腹をもんでいくだけです。お風呂に入る前に深呼吸するとより効果が高まります」

腸ストレッチ
腸ストレッチ
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腸ストレッチは
3つのポイントを意識して!
(2)おへその左上あたりを押す
(1)手のひらでおへその右上あたりを押す
(3)左脇腹あたりを押す

手のひらで押し出しながら「手のひらで腸を押すことでガスが抜けやすくなります」(松生さん)
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日常の生活の中で、冷えにさらされる機会は少なくない。特に夏場は冷房による冷えに注意が必要だ。

「寒暖差や、部屋の外と中の温度差が10℃以上になると腸には大きな負担がかかります。これからの季節は、40℃近い屋外を歩いた後に、急に冷房のきいた室内に入る機会が増えます。腹巻きはその冷えからお腹を守る必需品。1か月腹巻きを続けて便秘が解消された、お腹の張りが軽減されたというかたもいます」(松生さん)

腹巻きで、体の外側からも温活を。
腹巻きで、体の外側からも温活を(Ph/PIXTA)
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筋肉をつけて体内部の熱を作る力をつける

腸の温度を上げるには、腸だけを温めればいいというわけではない。

「食べ物や入浴で温めなくとも、自分で熱を作る力と、その熱を運ぶ力を高めることで深部温度は上がりやすくなる。必要なのは筋肉です。ジムに通って鍛えなくても、自宅でできるストレッチで充分。背筋を伸ばしていすに座り両腕を前に伸ばして体を左右にひねる、またはいすに座って両手をそれぞれの太ももにおいてすべらせながら上体をゆっくり前に倒すといった動きを取り入れて。どちらも立った状態でやってもOKです」(山口さん)

松生さんは腸の構造を意識してストレッチをしてほしいとアドバイスする。

「立ったままでも、座ったままでも、腸の構造に沿ってガスを抜いていくことを習慣にしてください。手のひらでおへその右上あたりから左方向に押し出し、さらに左下へと押していきます。背筋をすっと伸ばして行ってくださいね」

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今年もまもなく暑い夏がやってくる。冷えを求めるのではなく、温めることを意識すればその先の秋も冬も、きっと太り知らず、病気知らずで過ごせるはずだ。

※女性セブン2024年6月13日号

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