質問がうまい人はキーワードをつかんでいる
会話を続けるには、質問の方向を外さないことも大事です。
たとえば、相手が最新の「ゴジラ」の映画がよかったと熱心に感想を話しているときに、「そういえば、トカゲは飼ったことがありますか?」などと聞いたら、相手は「この人は何を聞いてるんだ?」とがっくりしてしまうかもしれません。
こんなふうに、話の内容からずれていると、「一体何を聞いていたんだ」「いきなり違うことを言い出して、唐突だな」という印象になります。仕事の場であれば、信用も落としかねません。
こんな「事故」を起こさないためにまず大事なのは、話の要点を書いておくこと。
つまり、メモをとることです。
相手の話を聞いて、自分が知らなかったこと、気がついたことを書いていくことで、話の内容を頭の中で濾(ろ)過(か)して、整理することができます。
文章ではなく、キーワードを書き留めるだけでもかまいません。
多くの場合、手元にメモがないことのほうが多いですから、そのときはキーワードを頭に留めておくことで、次の質問につなげられます。
キーワードさえ見つけられれば、「今お話しされた○○(キーワード)という言葉ですが、もう少し具体的に言うと、どんな感じでしょうか」「なぜ、○○(キーワード)だと、そうなるのでしょうか?」と、次へつながる質問ができます。
このメモをとる(キーワードを頭に留める)作業を習慣化することで、発言の中からキーワードを拾うセンサーが鍛えられていきます。このセンサーの感度を高めることが、質問力アップにそのままつながります。
職場でも鋭い質問ができて、一目置かれるかもしれません。
◆教えてくれたのは:明治大学文学部教授・齋藤孝さん
1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い」人』(詩想社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『話がうまい人の頭の中』(リベラル新書)等多数。著者累計発行部数は、1000万部を超える。テレビ出演多数。