健康・医療

【夏こそ危険】息切れ、倦怠感、めまい、手のしびれ、むくみは「夏バテ」ではない可能性 脳卒中の予兆を見逃すな

夏でも怖いヒートショック

少しでも異変を感じたら、「夏バテ」だと放置せず、すぐに病院へ。そもそもなぜこの時期に血管病が起こりやすいかを知っておくこともリスクヘッジになる。黒岩さんが説明する。

棟を手でおさえ苦しそうにしている女性
夏の発汗によって血液量が減少すると血管病のリスクが上がる(写真/PIXTA)
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「夏は汗を大量にかくため、体内の水分が失われやすい。脱水状態になると血液が濃縮され、血管が詰まりやすくなります。

冬は寒さが原因で血管が締まり症状が出ますが、夏は発汗によって血液の量が減少することで血管病のリスクが上がるのです」

夏の血管病において特に注意が必要なのは、糖尿病患者だと黒岩さんは続ける。

「糖尿病薬のひとつに『SGLT2阻害薬』があり、これは尿から糖を排出させるもので近年、糖尿病薬としてスタンダードに使用されている薬です。

しかし、利尿作用があるため、脱水症状になりやすい。加えて糖尿病の人はもともと心臓の血管が詰まりやすい傾向にあるので、そこに脱水が加わることで、ますます心筋梗塞になるリスクは上がります」

夏は脱水症状で「脳梗塞」が増えるということを示したグラフ
脱水状態になると血液が濃縮され、血管が詰まりやすくなる
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糖尿病や高血圧などは、自覚症状がないまま脳卒中や心筋梗塞などのリスクを高めるが、その魔の手を加速させるのが連日の猛暑だ。

埼玉県在住の会社員・Bさんが昨夏の出来事を振り返る。

「友達とエアコンの効いた喫茶店から外に出て“暑いね~”なんて言いながら歩いていたら、頭がくらくらし始めたんです。最初は“熱中症かも”と思っていたら、だんだんろれつが回らなくなってきて……。

異常を感じた友達がタクシーで近くの病院に連れて行ってくれました。診察の結果、脳卒中を起こしていたようで緊急手術に。幸い命に別条はありませんでしたが、後遺症が残り、半年近いリハビリを余儀なくされました」

もともと血圧が高めだったというBさん。脳卒中の引き金になったのは暑さによるストレスと、外気とエアコンが生み出した「寒暖差」だった。

「過度の暑さに伴うストレスは、血圧を上げる要因にもなります。また、空調が強く効いている場所から暑いところに移動すると、極端な温度変化によって血圧が乱高下します。汗をたっぷりかいて脱水状態のところにそうした血管への強いストレスが加わると、ダブルショックで脳卒中や心筋梗塞などのリスクが急上昇します」(幡さん・以下同)

冬は、暖かい浴室を出て寒い脱衣所に移動した際などに、血管が一気に収縮して脳卒中などを引き起こしやすい。「ヒートショック」と呼ばれる現象だが、同様のことが夏のエアコンでも生じるのだ。

温度変化に対応できるような服装

暑い日中は外出を控えるのがベストだが、外出しなければいけないときは服装に気を配りたい。

「温度変化に対応できるような、脱ぎ着しやすい服装を心がけてください。素材としては風通しのよいものを選ぶこと。

エアコンが効いた場所に入ったとき、冷えすぎないように肩や膝はあまり露出しないことが重要なので、一枚羽織りものを持ち歩くといいでしょう」

室井さんによれば、アメリカでは脳卒中の兆候について「BE-FAST」(図版参照)という標語を掲げ、注意を促しているという。

「『F』はFaceで、顔がまひして片側だけが垂れたり、口角が下がったりすること。『A』はArmで、片腕だけが脱力して力が入らない状態です。

このような症状が1つでも該当すれば7割が脳卒中だとされているため、早めに救急車を呼んでください」(室井さん)

脳卒中や心筋梗塞などの血管病の治療は一刻を争う。素早く対処すれば救命率が高まり、後遺症も軽くて済む可能性がある。少しでも疑いを持ったら予兆をしっかりチェックしてほしい。

(後編に続く)

※女性セブン2024年8月22・29日号

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