家事・ライフ

《後悔のない終活》まずやるべきことは?「“一軍”ではない服は捨てる」「思い出は処分してコンパクトに」「健康を優先してやりたいことを考える」

服の断捨離
後悔のない終活のためにまずやるべきことをプロが解説(写真/photoAC)
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終活で満たすことができる欲求の1つに、生きててよかったという気持ちを味わったり、やりたいことをやりきったと感じられたりする「自己実現の欲求」がある。そのために終活で具体的にやるべきことを、『終活1年目の教科書 後悔のない人生を送るための新しい終活法』(アスコム)を上梓した、1級FP技能士の黒田尚子さんに教えてもらった。

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まずは身につけるものをすべて一軍に

生きててよかったという気持ちを味わうためにまずやるべきことは、気に入らない洋服やアクセサリーを処分すること。家にいるときも出かけるときも、自分が好きで気に入っている「一軍」を身に着けられるようになれば、それだけで気持ちが上がっていく。

洋服
終活では身に着けるものをすべて一軍にする(写真/photoAC)
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このときに大切なのが、今の自分に合っているかどうかをチェックすることだ。

「自分に合っていないのは、もう“一軍”ではないのです。処分するのは勇気がいるかもしれませんが、思い切ってやってみるのをおすすめします」(黒田さん・以下同)

思い出を整理してポジティブに

次にやりたいのが、「思い出」を整理することだ。ここでのポイントは、片付けをしながら「いい出来事」を思い出すこと。人間の脳は「悪い出来事」をより強く記憶するようになっており、物事をポジティブにとらえるには、意識的に行動する必要がある。

そのため、思い出の整理では、いい出来事を思い出しやすいよう、思い出深いものから取り掛かるのがいいという。

「私のおすすめは、写真やアルバムの整理です。今の生活を振り返り、これからを考えるきっかけになりますし、昔の写真を眺めていると、楽しかったこと、うれしかったことを思い出しませんか。写真を見直すうちに、家族への感謝や自分自身の頑張りをねぎらう気持ちがわき起こってくるはずです」

思い出をコンパクトに残す方法3つ

写真など思い出の品を処分すると思うと抵抗があるかもしれないが、処分しても思い出自体が処分されるわけではない。「『コンパクトにして残す』と考えてみてはどうでしょうか」と黒田さん。思い出は消えてなくなるのではなく、形を変えて残る、と考えるのがいいという。

コンパクトにする具体的な方法は、「写真に撮る」、「リメイクする」、「一部だけ残して飾る」の3つ。最も手軽なのは「写真に撮る」だが、ランドセルを財布やパスケースにするなど「リメイクする」もよくある方法だ。「一部だけ残して飾る」パターンでは、雛人形などの大物をリサイズして飾りやすくするケースがあるそうだ。

スマホで写真を撮る
写真に残せば思い出はコンパクトになる(写真/photoAC)
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「先日、伺ったお宅のリビングには、素敵な額が飾ってあって、何かと思ったら、着物や帯の一部を切り取って入れてありました。こんな方法なら、いつでも思い出せる安心感から、悔いなく手放すことができるのではないでしょうか」

健康を優先してやりたいことを挙げる

自己実現の欲求を満たすためには、やりたいことをやりきることも大切だ。お金を理由に何かを我慢してきた人も多いだろうが、黒田さんは、終活適齢期の終活の場合は「健康を維持するためにお金と時間を使ってジムに通う」など、健康を優先してやりたいことを考えるのがおすすめだという。

「お金自体には何の価値もありません。お金は、それを使って、人生を豊かにするためにあるのです。もしお金があっても、健康でなかったら? そう考えてみると、これからの行動が変わりませんか」

自分の楽しみを探す

そうは言っても、「自分だけが楽しむなんて」と罪悪感を覚える人もいるのではないだろうか。家族など誰かのためという「他人軸」で行動してきた人ほど、「自分軸」で物事が考えられなくなっていることがあるそうだ。しかし、自分だけの楽しみを持っているというのは、「1人でも人生を楽しめる」ということであり、将来、もしも孤独になってしまっても、生きがいを持って生きていくことにつながる。

自分の楽しみを探すには、まず自分が楽しいと思うことを3つ挙げてみるといいという。ぱっと思いつかない場合は、嫌なことがあったときにどんなことをして気を紛らわせているかを考えるのでもいい。その思いついたことが、楽しいと感じられることのヒントになるそうだ。

「ぜひ、楽しみを見つけてください。1つと言わず、たくさん。誰かのための『他人軸』ではなく、自分だけのための『自分軸』を持つことは、決してわがままではありません」

人生であといくらお金を使えるか計算する

終活を通じてやりたいことを見つけても、老後のお金が足りなくなることを心配して、なかなかお金を使えないという人も多い。

それに対し、黒田さんは「自分ができる限り長寿をまっとうすることを前提に、1年あたりの使う金額を決定する」ということをすすめている。どれくらい生きられるかは個人差があるため、ある年齢の人がその後何年生きられるかを示した期待値である「平均余命」で考えるのがおすすめだ。

電卓
残りの人生で使えるお金を計算しよう(写真/photoAC)
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例えば、70歳の平均余命は男性約15年、女性は約20年だ。70歳以上の平均貯蓄額約1595万円を前提とすると、男性は毎月約8万9000円、女性は約6万6000円使える計算となる。

「まずは計算をしてみてください。そうすれば、今の生活のままでよいのか、それとも節約したほうがよいのか、あるいは安心してもっとお金を使ってよいのか目に見えるはずです」

◆教えてくれたのは:CFP、1級FP技能士・黒田尚子さん

白いジャケットの女性
CFP、1級FP技能士の黒田尚子さん
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くろだ・なおこ。CNJ認定乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格。大学卒業後、日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得し、その後FPとして独立。医療、介護、老後、消費者問題などに注力しながら、一般社団法人患者家計サポート協会顧問や城西国際大学の非常勤講師も務める。著書に『終活1年目の教科書 後悔のない人生を送るための新しい終活法』(アスコム)など。

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