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《終活で考えたい人間関係》「年賀状じまい」の意外な効果、あらかじめトラブルの芽を摘む「相続」の方法

年賀状
終活で考えるべき人間関係のポイントをプロが解説(写真/photoAC)
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終活は人との絆を感じることにもつながると話すのは、『終活1年目の教科書 後悔のない人生を送るための新しい終活法』(アスコム)を上梓した、1級FP技能士の黒田尚子さん。終活をすることで人間関係が深まったり、絆をつないだりすることになり、人生の充実感を高めることにもなるという。どういうことか、詳しく教えてもらった。

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終活適齢期の人間関係は、強めたり復活させたりすることが大切

終活と聞くと、何かを整理したり、処分したりするイメージが強いが、60代前後の終活適齢期の人間関係は「断つ」のではなく、むしろ「強める」「復活させる」といったことが重要だと黒田さんは話す。いざというときには、予想以上に誰かの人の手を借りなければならないものの、いざというとき頼りになる人は意識しなければ見つからないためだ。

具体的には、付き合いのある友人や知人と普段から連絡を取り合い、近況を報告し合ったり、同窓会などに出席したりするのがおすすめ。また、そうした人がいなくても、よく行く喫茶店やスーパーの店員、郵便局や宅配便の配達員などに一声かけてみるのもいいそうだ。

「些細な人間関係であっても頻度を増やすことで意外なつながりができることもあります」(黒田さん・以下同)

年賀状じまいで人間関係を強く、濃くする

終活の1つとして挙げられる「年賀状じまい」も人間関係を強めることにつながるという。年賀状じまいとは、年賀状のやり取りを辞退したいことを伝えるもの。年賀状じまいをすると人間関係が希薄になると思うかもしれないが、年賀状じまいをすることで義理上の付き合いを整理でき、より大切な人たちとのコミュニケーションに時間やお金をかけることができるようになる。

年賀状
年賀状じまいをすると人間関係が濃くなる(写真/photoAC)
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「これまでの年賀状を眺めてみて、『この人であれば、ずっとお付き合いしたい』、そんな人がいれば、年賀状じまいをして、別の方法で交流を続ければいいだけの話です」

人間関係がストレスなら孤独への耐性をつける

ただ人によっては、人間関係自体がストレスに感じることある。その場合、「無理に人間関係を作る必要はないと割り切るのも手です」と黒田さん。人間関係がストレスになる場合は、「1人はさみしい」という思い込みを捨て、「孤独への耐性」を身に着けておくことを黒田さんはすすめている。

「ワイワイと集まれる仲間がたくさんいたからといって、幸せとも限りません。一度、そういった思い込みを捨ててみるのも1つの手です。自覚はなくても、人と会った後に帰宅して、『あ~疲れた! しばらく1人の時間がほしい』なんて思う人は、実は人間関係に疲れがちなのかもしれませんよ」

「相続」について考えることで残された人との絆がつながる

終活をする際の大きなテーマの1つである「相続」は、面倒で時間やお金がかかるイメージが強い一方、残された人との絆をつなぐことになると黒田さんは話す。相続は、単に自分の財産を継承することではなく、誰に何を残すかを考えたうえで自分の財産を託すことだからだ。

手紙
相続は残す相手へのメッセージになる(写真/photoAC)
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「具体的に、誰に何を残そう? と考えた時、その人に対しての気持ちが必ず背景にありますよね。なぜ、それを残したいと思ったのか。理由もあるはずです。引き渡す財産に気持ちと理由がこもっているならば、『相続は、後に残される人へのメッセージ』とも言えるのではないでしょうか」

トラブルの芽は摘んでおく

後に残される人のことを思うのならば、起こるかもしれない相続でのトラブルの芽をあらかじめ摘んでおくことも重要だ。特に、日本の相続は財産に不動産を含むケースが多く、分割が難しい不動産はトラブルの原因となりやすい。

こうした相続でのトラブル回避には、遺言書の作成が有効だ。特に、遺言書の作成においては、「付言事項」を活用するのがいいという。付言事項とは、遺言書において法的効力を与えることを直接の目的としない記載事項のことで、家族へのメッセージや葬儀・納骨に関する希望などを自由に書くことができる。

「例えば、長男に遺産を多めに渡す場合や、介護してくれた長男の嫁に遺贈する場合、長年連れ添った妻に財産を残すため、子供に遺留分を請求しないようお願いする場合など、特定の相続人に肩入れした遺言ももめる原因になりがちです。そこで、付言事項に、遺産分割への想いを書くことでトラブル防止に役立ちます」

血族以外の大切な人に財産を残したい場合も遺言書は有効

相続人は配偶者と被相続人(故人)の血族とされており、相続の順番や相続割合なども決まっているが、事実婚(内縁関係)の夫や妻など、「相続人ではないが大切な人」に財産を残したいと考える場合もあるだろう。そうした場合にも、遺言書が有効だ。

遺言書
相続人以外への相続の場合も遺言書は有効(写真/photoAC)
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「遺言書は、相続財産について本人の希望を書いたもの。『誰に』『どの遺産を』『どのように』引き継ぐのかを自由に記すことができ、法的効力が認められています」

終活はただ物を整理したり、葬儀などの希望をまとめておいたりするだけではない。いざというときに頼れる人間関係を作ったり、相続を通じて大切な人にメッセージを残したりすることも重要な終活の1つであり、それは人との絆をつなげることにもつながるのだ。

◆教えてくれたのは:CFP、1級FP技能士・黒田尚子さん

白いジャケットの女性
CFP、1級FP技能士の黒田尚子さん
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くろだ・なおこ。CNJ認定乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格。大学卒業後、日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得し、その後FPとして独立。医療、介護、老後、消費者問題などに注力しながら、一般社団法人患者家計サポート協会顧問や城西国際大学の非常勤講師も務める。著書に『終活1年目の教科書 後悔のない人生を送るための新しい終活法』(アスコム)など。

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