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生前整理は終活ではなく「前向きに生きるきっかけ」整理収納のプロが教える心構え

ライフプランのイメージ写真
明るいセカンドライフのために生前生理を(Ph/PhotoAC)
写真6枚

大切な家族や子供のことを思って生前整理をしようと考えるものの、たくさんの物を片付けるのは、根気がいることです。「生前整理」という言葉を最初に使ったという古堅純子さんは「一気に捨てなくてもいいんです、それでも生前整理はできます」と話します。そこで、幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザーの古堅さんから、生前整理の心構えを教えてもらいました。

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生前整理は夢と希望を持ってするべき

これまで生前整理をしたいとお話されるお客さまのお宅に何度もうかがいました。その中で、思い出が詰まった物と悲しそうにお別れする姿をたくさん見てきたんです。

長年の思い出が詰まった物を捨てるのって、しんどいことですよね。そこで、生前整理は、ただ捨てるのではなく、これからの暮らしのための夢や希望を持った整理と考えていただきたいのです。

生前整理は前向きに生きるためのきっかけ

人生が終わるときのことを考え、「こんな状態で家族に後を任せるのは申し訳ない、もっと物を減らさなきゃ」と、つらい思いをして片付けをしているかたが多く見受けられます。

真っ白なノートとドライフラワー
あなたが片付けの先に望む人生は?(Ph/PhotoAC)
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自分がいなくなったあとを見越して片付けをするのはもちろんいいことです。けれど、片付けること自体を目的にするのではなく、その先に何を望むか設定することが大切だと感じます。やりたいことがもっとできるように片付けをしましょう、というのが私の生前整理の考え方です。

目的を「明るいセカンドライフ」にシフトする

つまり、物をただ減らすことを目的とした生前整理ではなく、今の生活をよりよくするという気持ちや、老後の過ごしやすい環境づくり、満喫しやすいシニアライフのためといった夢や希望を持って片付けに取り組むことがいいのではないかと思います。そういった前向きな気持ちで物を整理するほうが、生き方もポジティブになります。

生前整理に持つべき明るい目的とは?

物を大事にするべきだと教えられて育ってきた50代以降は、捨てることに特に抵抗があるはず。だからこそ、目標をもって物や部屋を整えるという考え方にシフトすることで、生前整理の第一歩を踏み出しやすくなりますよ。

個室を持って自分らしく生きる準備を

今後の人生を前向きに生きていただくためには、家事や仕事で忙しくてできなかった趣味に没頭したい、個室を持ってこんなことをしたいなどのビジョンをもつのがいいでしょう。なかでも子育ての中心にいた女性は、子供やパートナーの生活を優先して過ごし、自分のスペースがないままの人も多いです。そんな人こそ、セカンドライフに自分専用のスペースを作って、そこで趣味の時間を楽しんでいただくことをおすすめしています。

シックな部屋
セカンドライフの充実のために自分の部屋を作ってみるのも◎(Ph/PhotoAC)
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部屋数のある家なのに、夫婦で同じ部屋で寝ているというご家庭をよく見かけます。ずっと何十年も暮らしてきた状態のままだと、そこを変えようという考えが持ちづらいようなんです。

まず個室を持つことで、自身の趣味の時間が増えたり、これまで我慢していた好きなことなど、本当はやりたかったことが見えてきたりすることがあります。この部屋を自分の部屋にしたい、こう使いたい、といった思いによって心も体も動くんです。

たくさんある物の原点を考えるとやりたいことがわかる

ずっと育児や仕事を頑張っていたので、個室があってもやりたいことが見当たらないという人もいるかもしれません。そんな人は、家にたくさんある物を見直してみてください。

生前整理のために片付けようとする人は、なぜかたくさんある物から捨てようとする傾向にあります。例えば、布や生地がたくさんあるので捨てるかどうか迷っているお客さまがいました。「なんでこんなに布があるんですか?」と尋ねると「実は昔、洋裁が好きだったんです」なんて話してくださるんです。

ミシンをかけている
たくさん集めた物と向き合ってみて(Ph/PhotoAC)
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迷っているくらいならむやみに布を捨てるべきではないし、ミシンのための部屋があったら、今からでも自分だけの没頭できる空間で趣味の時間を過ごせますよね。

捨てたい物は、なぜ買ったのか?と考えてみる

食器が多いというかたは、まず「なぜこんなに大きな食器棚や、たくさんの食器があるのか?」と原点に戻ってみましょう。そうしたら、買った当時はたくさんの人を家に呼んでもてなすのが好きだったとか、出産前に時間の余裕があったときは食器集めが趣味だったとか、なぜ買ったのかがわかりますよね。

段ボールからコーヒーカップを出している
自分の人生を振り返って物の選択を(Ph/PhotoAC)
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こんなに食器を持っていたって仕方がないと心を閉ざしてすぐにあきらめてしまうのではなく、自分の願望に立ち返ってみましょう。そこから今後の人生をふまえて、物の選択を始めてみてください。

「家に友人を呼んで、料理を作ってもてなしたい」という前向きな目標が1つできるだけで、今の家にある物を見直すようになります。客人に出すことを前提に考えたら、欠けている食器はいらないと思うでしょうし、箱に入ったままの食器を並べて幸せな気持ちになれるかもしれません。そうした取捨選択することが、自分のための生前整理につながります。

◆教えてくれたのは:幸せ住空間セラピスト・古堅純子さん

古堅純子さん
幸せ住空間セラピスト、家事効率化支援アドバイザーの古堅純子さん
写真6枚

幸せ住空間セラピスト、家事効率化支援アドバイザー。整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、企業内整理収納マネージャーの資格を所持。1998年、老舗の整理収納サービス会社に入社。20年以上現場第一主義を貫き、クライアントのもとへ通う。5000軒以上の家でサービスを重ね、古堅式メソッドを確立。オンラインを含むコンサルティングやメディア出演や講演も行う。著書は累計60万部で、最新著は『「シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新聞出版)。YouTubeチャンネル「週末ビフォーアフター」は、1000万回再生を突破。チャンネル登録者数9万1000人(2022年4月現在)。https://s-d-m.jp/talents/jyunko-furukata/

構成/イワイユウ

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