健康・医療

《閉経後、骨密度は減少!》加齢によりリスク高まる「骨粗しょう症」のメカニズムと50~65才の間に一度は検診を受けた方がいい理由

ジョギングしているシニア女性
骨の健康を保つケアはすぐに始めるべき(写真/イメージマート)
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骨が弱くなるのは70代以降と思いがちだが、頭蓋骨は30代からやせ始め、しわやたるみの原因に。また、骨量が減少し始めるのは女性ホルモンの分泌が低下する40代というから、骨の健康を保つケアはすぐに行う必要がある! 骨の危険度をチェックして今すぐ対策を始めよう。

骨の“危険度”をチェック

まずは別掲の「骨の危険度チェック」をしてみよう。あなたはいくつ当てはまっただろうか。

若い頃より身長が縮んだり、腰痛に悩んだりするのは中高年ならよくあること。それが、骨粗しょう症の入り口になるとは驚きだ。

骨の危険度チェックの表
骨の危険度チェック
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「骨粗しょう症になっても骨折しなければほとんど自覚症状がありません。しかし、女性は等しく、閉経(50才前後)を境にガクンと骨密度が減少します」と言うのは、東京大学医学部附属病院病院長の田中栄さん。

骨密度の低下で骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気が「骨粗しょう症」だが、日本骨代謝学会によると、若年成人(20才)の平均骨密度(若年成人腰椎骨密度は20~44才、大腿骨近位部骨密度は20~29才を基準とする)を100%とした場合、70%未満で骨粗しょう症と診断されるという。

「さらに、X線検査で背骨(椎体)か脚のつけ根(大腿骨近位部)に骨折があれば、骨密度が基準値でも、骨粗しょう症と診断されます。

さすがに骨折していたら痛くて気づくと思うでしょうが、骨粗しょう症の背骨は、『いつの間にか骨折』と呼ばれ、痛みもなく折れていることがあるんです。若い頃より身長が3cm以上縮んだ人は、すでに骨折が起きている可能性があります」(田中さん・以下同)

骨折リスクは、何度も骨折を繰り返すことでさらに高くなる。

「厚生労働省によると、介護や支援が必要となった主な原因として、骨折は、認知症や脳梗塞、高齢による衰弱に次ぐ4位(厚生労働省:令和元年国民生活基礎調査より)。要介護リスクの高さも無視できません」

骨折したことのある人は、再度起こさない「二次性骨折予防」が重要だ。

骨密度低下の原因は、骨代謝サイクルの乱れ

閉経後、なぜ骨密度が加速度的に低下するのか。

骨代謝のメカニズムを示したイラスト図
骨代謝のメカニズム(イラスト/つぼいひろき)
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「それには、骨代謝のメカニズムを知る必要があります。 骨は、『破骨細胞』が古くなった骨を吸収(破壊)し、『骨芽細胞』が新しい骨を作るというサイクルで、少しずつ生まれ変わります。皮膚と同様、新陳代謝を繰り返しているんです。

破骨細胞は骨髄の細胞から分化し、血液とルーツは同じです。必要に応じて血液細胞が破骨細胞となって古い骨を溶かします。一方、骨芽細胞は筋肉とルーツを同じくし、骨の近くに“種”のように存在し、必要なときに骨芽細胞となります」

そして、1~2年で約20%の骨が置き換わるという。

「骨代謝は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌に影響を受けます。分泌が正常なうちは問題ないのですが、閉経とともにエストロゲンの分泌が減少すると、骨を壊す破骨細胞が暴走し、骨を作る骨芽細胞の働きを上回ってしまう。骨密度の低下は、骨代謝サイクルの乱れによるものなのです」

女性の骨量の変化を示したグラフ
女性の骨量の変化(イラスト/つぼいひろき)
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生理が止まるほど過度なダイエットをした人は注意

成長期に骨密度は増え、20才前後で男女ともにピークを迎え、30代まで維持される。しかし、更年期(45~55才)が始まるあたりからエストロゲンの分泌が減り始め、骨密度も低下していく。

「ただ、ピーク時に生理が止まるほどの過度なダイエットをした人は、ホルモンバランスの乱れで若くして骨密度が低い場合があります。過去にそんな経験をした人は要注意です」

いま現在、やせすぎの人も気をつけよう。

骨密度(g/平方センチメートル)とは、単位面積あたりの骨量(=カルシウムなどのミネラル量)を指す。カルシウムがたっぷり詰まった骨がベスト!ということだろうか。

骨の構造を示した図
骨の構造(資料提供/雪印メグミルク)
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「そうとは言えません。強い骨にするには、カルシウムに加え、コラーゲンも必要。骨の構造は、よく鉄筋コンクリートにたとえられます。コンクリートがカルシウムで、鉄筋がコラーゲン。コンクリートだけでは衝撃でボキッと折れてしまうため、しなやかな鉄筋を加えて強度を高めますよね。骨も同じです。

骨組織が作られすぎると骨が硬化する『大理石骨病』という疾病や、石灰化(カルシウムの沈着)が低下すると『くる病』(子供の疾患)、『骨軟化症』(大人の疾患)という疾病に罹患する場合も。ちなみに、骨粗しょう症は、カルシウムとコラーゲンの両方が減少します」

65才までに一度は骨粗しょう症検診を

骨密度が下がる50~65才の間に一度は骨粗しょう症検診を受けた方がいいと田中さんは指摘する。

「40才から5才ごとに、各自治体から骨粗しょう症検診の案内が来ているはずですが、残念ながら受診率は全体で4~5%程度。がん検診などと比べて危機意識が低いからだと思いますが、将来のリスクに備え、自身の骨密度の状況は把握していただきたいですね」

骨密度を測る方法は?

「健康診断でおなじみなのが、かかとの骨量を測る超音波測定法や手のレントゲンで測るMD法(X線の一種)です。手軽ですが、どちらも正確性がさほど高くないため、心配な人は、腰椎や大腿骨をX線で測るDXA(デキサ)法がおすすめ。大がかりな機械なので、インターネット等で備えている病院を調べてください」

骨粗しょう症検診は、住まいの自治体のホームページをチェックするか、かかりつけ医に相談してみよう。

◆教えてくれたのは:整形外科医・田中 栄さん

東京大学医学部附属病院病院長。東京大学医学部整形外科助手、講師、准教授、教授を歴任し、2023年より現職。日本整形外科学会専門医・代議員、日本骨粗鬆症学会理事、日本骨代謝学会監事ほか。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2024年10月17日号

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