世帯主が60代の世帯における貯蓄の中央値は「700万円」(政府の最新調査)。しかしながら、値上げラッシュに景気の低迷などから不安になる人も多いはず。だが、心配は無用。60才からでも遅くない。投資に成功しているマネーの達人の投資術から、その秘訣を探る。
最後に笑うのは「売らなかった人」
投資での成功者たちが必ず守っているルールは「信じた銘柄を売らない」こと。夫の退職金をわずか3年半で2億円にした“億り人主婦”で、現在は専業投資家となったナスダッ子さん(63才)は、2022年、約2億円あった資産が、米国金利上昇を受けて1億円に半減。しかし、それでも自分で選んだ銘柄を手放すことはなかったという。
「米ハイテク企業は業界全体が拡大しており、私はその中で圧倒的シェアを誇る、将来が期待できる銘柄を選んでいたので、株価が下がっても信じて待つことができたんです」(ナスダッ子さん)
損失を減らすために、一定の割合以上株価が下がったら売る「損切り」という方法もあるが、マネーのプロたちは「損切りをすると、損をする」と口を揃える。
特に新NISAは非課税保有期間が無期限になったので、「損切り」のつもりで売却した後、再び株価が上がる可能性は充分にある。『50歳ですが、いまさらNISA始めてもいいですか?』の著者でファイナンシャルプランナーの鬼塚祐一さんは言う。
「長期分散投資をしているなら、相場の変動に一喜一憂してはいけません。最初に決めた資産割合を変えずに、あえて何もせずにただ持ち続ける『戦略的放置』を貫いてください」(鬼塚さん)
60才でも長期投資する時間は充分にある
なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さんは「たとえいま60才でも、この人生100年時代では長期投資をする時間は充分にある」と語る。
「それでも時間は限られているので、60才を超えてから2000万円以上をめざすなら、毎月1万円では足りない。可能なら10万円単位など、ある程度大きな金額で毎月、積み立て投資をしてほしい。それまでの貯蓄や退職金などの中から半分ほどは長期投資に回してもいいでしょう」
自身の資産運用のためにファイナンシャルプランナーの資格を取得したカズターンさんは投資を始めるにあたり、ライフプランを考え、家計の見直しから始めたという。
「できるだけ年金などで生活できるよう、毎月の支出を洗い出し、保険料やスマホ代など、抑えられるものはすべて抑え、固定費を見直しました。一攫千金をねらって手持ちのお金をすべて投資するのではなく、半年分くらいの生活費を確保した上で、当面は使う予定のないお金で投資しました。投資は“継続、積立、分散”が大原則です。
国民年金は70才まで繰り下げるので、投資もそれまでは続けて、配当金も再投資する予定です。70才を過ぎてもできるだけ取り崩すつもりはありません」(カズターンさん)
冷静に、時には大胆に。60才からの戦略次第で、人生を大きく変えることも不可能ではないのだ。
※女性セブン2024年10月24・31日号