《モリタク流人生観》がんステージ4の森永卓郎さんの“食べたいものを食べる”生活 食べ放題が叶えてくれる「スプーン1杯分のカレーと焼きそば3本と焼き肉2枚」のわがまま
歯に衣着せぬコメントで、経済や社会を鋭く分析してきた森永卓郎さん(67才)がすい臓がんと宣告されたのは昨年のこと。発見時、すでにステージ4。「来年の桜は見られない」と宣告されながら、桜も新緑も猛暑も、秋の風も感じながらいまなお精力的に情報を発信し続けている。ピーク時の体重は102kgだったが、現在は半減。体重の減少を食い止めるためにも“食べたいものを食べる”選択した。そんな森永さんの食生活に迫る。【前後編の後編。前編から読む】
いちばん好きなのは食べ放題
食べたいものは数多くあれど、食べられる量は多くない。そんな森永さんがいまいちばん好きな食事は「食べ放題」。
「例えばカレー屋に行ってスプーン1杯分のカレーをくれと言ったら、怒られますよね。何を言ってるんだ、頭おかしいんじゃないかと。でも、それがしたい。
スプーン1杯分のカレーと、焼きそば3本と、焼き肉2枚とか、あとアイスクリームにソフトドリンクとか。要するに、いろんなものをスプーン1杯分ずつ食いたいんです。
それが許されるのは食べ放題の店だけなんですよ。本当は食べ放題である必要はまったくない(笑い)。欲しいものを全部取っても1皿分ぐらいにもなりませんから。奥さんは“金をドブに捨てるようなもの”“無駄遣い”と言いますが、同じことをできるところってほかにないでしょう。だから行こうぜって誘うんだけど、2~3週に1回くらいしか許可が出ないんですよね。私が行ったら店はぼろ儲けだと思うんだけど(笑い)」
自分の畑の野菜だけは食べる
マイナス20kgのダイエットに成功した2年後の2018年、森永さんはかねてより関心を持っていた農業を始めた。自宅近くで30坪の農地を借りて、トマトやきゅうり、なすなど20種類以上の野菜のほか、一昨年からはスイカにチャレンジ。60個の大豊作で、物価高の時代の節約にもなると農業の可能性を説いてきた。そのマイクロ農業も、いまは休んでいる。
「筋力が落ちてしまったので、うちの隣の畑をやっている80代のおじさんに手伝ってもらっています。野菜は食べないけど、自分の畑でとれた野菜は食べます。今年もスイカは上出来で、暑かったからめちゃくちゃ甘くなってすごくおいしかったです」
スーパー銭湯で温浴療法
食生活以外の習慣では、スーパー銭湯通いが新たなルーティンになった。
「がんになってからの習慣です。奥さんと毎週一緒に行ってます。温浴療法がいいとすすめられたのと、掛け流しの温泉に入っていると発想が泉のように湧いてくる。実はいま寓話を執筆しているのですが、1回湯船につかると3つくらいストーリーができます。私は温泉に入っているときと、飛行機が高度8000m以上を飛んでいるときに、クリエーティビティが桁違いに上がるんです。
やめられない習慣もあって、大きな声じゃ言えないけどたばこはバンバン吸ってます。1日15~20本くらいかな。免疫力って結局は前向きな気持ちなんだと思います。ストレスをためると免疫力が落ちて、がん細胞が優勢になってしまう。だから禁煙してストレスがたまるくらいならバンバン吸ってしまおうというわけです。ただ、お酒は体にかなり負担がかかるので1か月にひと口くらいかな」
来春の桜は見られないと宣告されてから、間もなく1年が経つ。森永さんは、いまの食生活こそが自分の命を延ばしていると語る。
「好きなものを好きなだけ何も気にせず食う。やりたい放題。何も気にせずバットを振り抜く。そう決めてから絶好調、あんまり死ぬ気がしませんね。
ただし、これはあくまで私個人の人生観です。やりたい放題やって寿命が短くなる可能性もある。だけれども、多少縮んでもなんのストレスもなく、苦痛もなく、残りの人生を過ごす方がいいというひとつの選択肢。自分の人生ですから、自分で選ばないとね」
寓話はすでに第一集が完成し、年内に刊行予定。好きなものを好きなだけ食べながら、温泉につかって生まれたストーリーには森永さんの生き様が詰まっているはずだ。
(了。前編から読む)
※女性セブン2024年11月7日号