健康・医療

《中性脂肪の健康基準値》日本では「空腹時150mg/dL以下・非空腹時175mg/dL以下」が正常、米では「999mg/dLまで正常」の大きなギャップ“気にする必要なし”の指摘も

体を動かすエネルギー源だが、たまりすぎると肥満のもとに(写真/PIXTA)
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健康診断において、正常か、異常か──その境界線となるのが「健康基準値」。オーバーすれば、そのまま治療を勧められることもあるだろう。しかしその数値は、医療の進歩や医薬品メーカーの都合で「コロコロと変わる」もの。国によっても基準は異なる。そんなあいまいな基準を信じていていいのだろうか。

「中性脂肪」の基準値が変化

たとえば、「中性脂肪」の基準値が変化している。日本動脈硬化学会は2022年、5年ぶりに「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」を改訂した。それまで「脂質異常症」の診断基準は、「空腹時の中性脂肪150mg/dL」のみだったが、改訂により「非空腹時175mg/dL」という基準が加わり、さらに基準が厳しくなった。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。

日本動脈硬化学会は5年ぶりに「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」を改訂した
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「血糖値に食後血糖値と空腹時血糖値があるように、脂質も空腹時と食後で値が変わることがわかってきたために、基準が変更されたのでしょう」

ただし東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんは、中性脂肪の値について、そもそもあまり気にする必要はないと指摘する。

「血糖値と違って中性脂肪の値は空腹時に測っても値のばらつきが大きいので、健康をチェックするデータとして利用する価値はほとんどない。私は35年間、毎日中性脂肪の値を記録していますが、空腹時でも日によって大きく変動します。また、心筋梗塞や脳梗塞を招く“食後高脂血症”は空腹時の値からはわかりません。

そもそもアメリカでは999mg/dLまで正常値とされている。1000mg/dLを超えると急性膵炎などのリスクがありますが、心筋梗塞の原因となる可能性は極めて低い」(大櫛さん)

中性脂肪の薬に副作用の指摘

薬の副作用を指摘するのは、新潟大学名誉教授で予防医学が専門の岡田正彦さんだ。

中性脂肪を下げるときに使用する薬には副作用がある(写真/イメージマート)
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「中性脂肪を下げるときはフィブラート系の薬が処方されることが多いですが、血液の流れがよくなりすぎて脳出血のリスクが高くなります。中性脂肪だけ高い人は、薬で下げる必要はありません。むしろ低くなりすぎるのも問題で、中性脂肪が正常値の人に比べ、極端に値が低い人は心臓病のリスクが約2倍に増えるという研究もあります」

そもそも、中性脂肪で血液がドロドロになるという思い込みが間違いだと、精神科医の和田秀樹さんは指摘する。

「中性脂肪が1000mg/dLだとしても、100mlの水の中に1gの脂肪が入っているのと同じ状態です。コップ半分ほどの水に、10滴くらい油を垂らした状態なので、血液がドロドロになることはありません。

私自身、普段の中性脂肪は600mg/dLくらいで、食事内容によって高くなりますが、3桁をキープするように意識しているので特に支障をきたしていません。脱水症状によるドロドロ血液で心筋梗塞のリスクは高まるため、中性脂肪より水分を摂ることが大切です」 

※女性セブン2024年11月28日号

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