健康・医療

更年期のホットフラッシュによる寝汗や睡眠障害 改善に役立つ食材はGABAを含むかぼちゃ【医師解説】

ベッドに寝ている女性
ホットフラッシュは就寝中も起こる。不快な寝汗を改善するには…?
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更年期障害の1つであるホットフラッシュは就寝中にも起こり、寝汗による不快感から睡眠障害につながることがある。「ホットフラッシュによる寝汗対策としては、体に熱がこもらないようにすることと、自律神経の乱れを整えることが有効です」と話すのは、医師の木村眞樹子さん。漢方医学にも精通している木村さんに、更年期の寝汗の原因と対策、改善に役立つ食材や漢方について教えてもらった。

更年期に寝汗をかく理由

寝汗は寝ている間の体温を調節するために起こる生理現象ですが、更年期にはホットフラッシュが原因の寝汗に悩む人も増えます。

ホットフラッシュの主な原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減ることで起こる自律神経の乱れです。自律神経には交感神経を副交感神経の2種類があり、両者がバランスをとって作用することで体温を調節しています。このバランスが乱れると体温調節が難しくなり、ホットフラッシュにつながるのです。

ベッドで眠そうにしている女性
ホットフラッシュによる寝汗が睡眠障害につながることも
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ホットフラッシュが起こると顔や上半身にのぼせやほてりを感じます。そして、体から熱を逃がすために顔や首まわり、胸などに汗をかきやすくなります。就寝中に大量の汗をかくことによる不快感から何度も目が覚め、睡眠不足などの睡眠障害になることも珍しくありません。

更年期の寝汗や就寝中のホットフラッシュへの対策

ホットフラッシュによる寝汗対策には、体に熱がこもらないよう衣類や寝具を工夫したり、自律神経を整えたりするのが有効です。

衣類や寝具を工夫する

衣類や寝具を工夫して体に熱がこもりすぎないようにすると、汗による不快感が減ってより快適に眠れるようになります。

就寝時の寝具の中の温度は約33度(国立精神・神経医療研究センター「温度、湿度と睡眠」https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column21.html)が快眠によいとされているため、季節や部屋の温度に合わせて寝具を選びましょう。

冬は保温性に優れた羽布団や、断熱性に優れたウールの敷きパッドなどを選ぶといいでしょう。夏は、コットンやリネンなど薄手で吸湿性のあるパジャマが適しています。

通気性のよいメッシュ構造や、そばがら素材の枕を選ぶと、頭に熱がこもりにくく、快眠につながります。

寝具の中の温度を確認するには、専用のセンサーやデバイスと連携して温度を測定できるアプリを活用すると便利です。寝具内の温度を測ることで、約33度に合わせて寝具などの調整がしやすくなります。冬に寝具が冷えるときは、湯たんぽや電気毛布などを使って適温に調整しましょう。

就寝前に心身をリラックスさせる

ホットフラッシュは自律神経が乱れ、交感神経が優位になると起こります。そのため、副交感神経を優位にするために、就寝前に心を落ち着かせることがホットフラッシュによる寝汗の予防につながります。

ラベンダーとアロマオイル
アロマなどでリラックスして副交感神経を優位に
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たとえば、ストレッチやアロマ、ゆったりとした音楽などを取り入れて、就寝前にリラックスタイムを設けましょう。

更年期の寝汗改善に役立つ食材

更年期の寝汗改善には、自律神経に作用してリラックス効果をもたらすとされる神経伝達物質のひとつ、GABA(ギャバ)が役立ちます。

GABAを多く含む食材として、秋から冬におすすめなのがかぼちゃです。かぼちゃは夏に収穫されますが、数か月保管して追熟させると栄養と甘みが増しておいしくなるので、秋から冬が旬とされています。

かぼちゃの煮物
てリラックス効果をもたらすGABAを含むかぼちゃがおすすめ
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GABAは水に溶けやすい成分なので、かぼちゃを調理する際は蒸すか電子レンジを使うと流出を抑えられます。かぼちゃのほかには、なすやじゃがいもにもGABAが豊富です。
また、GABAは体内での合成を促すことでも増やせます。GABAを増やすには、体内での合成に欠かせないビタミンB6を摂取しましょう。ビタミンB6は魚では秋が旬のかつお、肉では鶏むね肉などに多く含まれています。食物からGABAを摂取するとともに体内での合成を促すことで、GABAの不足を防ぐことにつながります。

更年期の寝汗には漢方薬も役立つ

ホットフラッシュによる睡眠障害対策には「自律神経の乱れを整える」「体にこもった熱を冷ます」といった生薬を含む漢方薬を選びます。

小皿にのった生薬
ホットフラッシュによる睡眠障害には漢方でも対策できる
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おすすめの漢方薬

・加味逍遙散(かみしょうようさん)

「気(エネルギー)」や「血(栄養)」の巡りをよくして自律神経を整え、体の熱を冷ますことで、のぼせ感があるような更年期の不調に働きかけます。ホットフラッシュや不眠症などの更年期症状に用いられる代表的な漢方薬です。

→加味逍遙散について詳しく知る

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

「気(エネルギー)」の巡りをよくして体内の熱を冷まし、精神を安定させることで、自然な眠りを促す漢方薬です。自律神経を調整したり、興奮を抑えたりする働きがあるため、心を落ち着かせたい人に適しています。

→柴胡加竜骨牡蛎湯について詳しく知る

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:医師・木村 眞樹子さん

白衣を着た女性
医師の木村眞樹子さん
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きむら・まきこ。医師。都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科に在勤。総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医。産業医として企業の健康経営にも携わる。

自身の妊娠・出産、産業医の経験を経て、予防医学・未病の重要さと東洋医学に着目し、臨床の場でも西洋薬のメリットを生かしながら漢方の処方を行う。

症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でもサポートを行う。

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