冬になると「冷えは万病のもと」とばかりに、誰もがかぜやインフルエンザの予防にはげむ。だが、「下半身の病」は、防ぎ方や治し方がわからないどころか、時には本人さえ知らぬ間に進行していく──。誰にも相談できない「尿漏れ」の対処法を知っておこう。専門家に聞いた「尿漏れ」対策に効果的な食品、習慣のランキングについても紹介する。
ランキングは、以下の10人の「医師」「看護師」「管理栄養士」に、尿漏れの予防と改善に役立つ「食品」と「生活習慣」を挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点として集計。
・朝倉博孝さん(埼玉医科大学医学部泌尿器科教授)・菊池真由子さん(管理栄養士)・麻生れいみさん(管理栄養士)・窪田徹矢さん(くぼたクリニック松戸五香院長)・清水加奈子さん(管理栄養士)・高澤直子さん(順天堂東京江東高齢者医療センター泌尿器科医)・西村かおるさん(排泄ケア専門看護師)・平田悠悟さん(平田肛門科医院副院長)・松島小百合さん(松島病院外来部門長、大腸肛門病専門医)・望月理恵子さん(管理栄養士、健康検定協会理事長)
市販の薬で尿漏れは解決しない
急激に寒さが深まり、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎など、2024年も感染症が猛威を振るっている。だが、冬に患者が増えるのは感染症ばかりではない。寒さは「下半身の病」も悪化させる。特に「尿漏れ」は、冬の大敵だ。
寒い冬はトイレが近くなりがち。年を重ねるほど症状が深刻になるのが「尿漏れ」だ。寒さで交感神経が優位に働くことで膀胱が収縮することも、尿意に拍車をかける。埼玉医科大学医学部泌尿器科教授の朝倉博孝さんが解説する。
「尿漏れ自体に季節性はありませんが、臨床においては、冬になると尿漏れが増える傾向にあります。
女性の尿漏れでもっとも多いのは、咳やくしゃみをしたときや立ち上がったときなど、お腹に力が入ると漏れてしまう『腹圧性尿失禁』。一方、膀胱が過剰に活動することで起こる『切迫性尿失禁(過活動膀胱)』は、男女関係なく加齢とともに増加傾向にあります。腹圧性と切迫性の両方の症状が出ることもあり、日本人の約3割が尿漏れに悩んでいると考えられます」
いずれも、治療には処方薬が有効。
「切迫性尿失禁には『抗コリン薬』や『β3刺激薬』などが有効ですが、難治性の場合は膀胱鏡を使った『膀胱ボツリヌス壁内注射術』や、仙骨部に膀胱を刺激する装置を入れる『仙骨神経刺激療法』などを取る場合もあります。
市販薬は漢方も含めて対症療法にすぎないので、できるだけ早めに病院へ行ってほしい。泌尿器の分野は性別で専門が異なるので、女性専門の泌尿器科を選びましょう。日本看護協会が認定する皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)のいる病院がおすすめです」(朝倉さん)
尿漏れに「発酵食品」に期待
尿漏れの予防・改善には、食生活が重要。男女ともに多い切迫性尿失禁の予防には、尿道の健康を助ける1位の「ベリー類」がもっとも効果的という結果に。管理栄養士の麻生れいみさんが言う。
「キナ酸やプロアントシアニジンなど、尿のpHをコントロールする作用のあるポリフェノールが豊富なクランベリーが特におすすめです」(麻生さん)
2位にランクインしたのは「発酵食品」。管理栄養士で健康検定協会理事長の望月理恵子さんが言う。
「ヨーグルトはもちろんのこと、納豆は便をやわらかくするマグネシウムのほか、体を温めて血行をよくするナットウキナーゼを含んでいるため、冷えからくる尿の悩みに効果的です」
3位の「ナッツ類」は、豊富なマグネシウムが尿漏れを予防する。くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢さんが言う。
「マグネシウムは、くるみやぎんなん、かぼちゃの種にも豊富です。特にかぼちゃの種はマグネシウムとオメガ3系脂肪酸も摂取でき、相乗効果で骨盤底筋と尿道の健康維持に役立つ。1日に約30gを目安に食べることをおすすめします」
同じく3位には「たんぱく質」「食物繊維」の多い食品、6位にはその両方を兼ね備えた「バナナ」が名を連ねた。
7位の「しょうが」は体を温める効果があり、冬の冷えからくる尿漏れの改善が期待できる。