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《圧倒的予想》M-1優勝コンビは誰?松本人志不在で「令和ロマンは優勝できないか」9人の審査員が選ぶ「ボケ数多めのコンビ」とは

5組もいる決勝初出場組が台風の目となるか。(M-1公式インスタグラムより)
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お笑い賞レースの最高峰と言われる漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2024」の決勝が、12月22日18時30分からテレビ朝日系で生放送される。今年は節目となる第20回大会ということで主催側の鼻息も荒く、今までのチャンピオンたちが総出演のポスターが作成されたり、番組公式本もリリース。例年以上の盛り上がりを見せるなか、エントリー数は1万330組で史上最多を更新、激戦状態に。果たして第20代チャンピオンの栄冠は誰に輝くのか? 毎年予選をすべてチェックしている現役放送作家のY氏、バラエティー番組を多く制作する民放テレビ局員のK氏、そしてお笑い界に詳しい芸能記者のT氏ら、普段から厳しい目で芸人を見てきた“プロ”が優勝を予想した。

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『欽ちゃんの仮装大賞』のようなノリで参加

作家Y「エントリー数は1万組を超えましたが、実はアマチュア出場者も年々増えており、今年は5713組。半数以上がアマチュア出場者なんですよね」

局員K「一部、『欽ちゃんの仮装大賞』のようなノリで参加している人もいるようですが、実際はアマチュアのレベルも相当高くなっていて、大学お笑いとか養成所レベルのコンビでも爆笑を獲ってたりする。今まで一回戦を突破するアマチュアって全体の10組ぐらいでしたが、ここ2~3年くらいは100組ぐらいが突破しているようですね」

記者T「それでもアマチュアにとっては相当狭き門ですが、東大と早大の4年生コンビ『ナユタ』が2年連続で準々決勝まで駒を進めるなど、まさに注目の逸材。変ホ長調以来の、アマチュア芸人のファイナリストが近い将来出てきてもおかしくはない」

作家Y「あと、今大会最大の話題は審査員ですね。松本人志さんが不在なので、どうなるのかとみんな思っていたところ、若林正恭(オードリー)、礼二(中川家)、山内健司(かまいたち)、塙宣之(ナイツ)、博多大吉(博多華丸・大吉)、哲夫(笑い飯)、柴田英嗣(アンタッチャブル)、海原ともこ(海原やすよ ともこ)、石田明(NON STYLE)と、まさかの9人体制に」

局員K「いつもよりふたり多いということはより平均点が重視されるため、ボケ数多めのネタで会場の笑いを途切れさせないコンビが有利になる傾向にあるのは間違いない。いわゆる世界観のある『革新的なネタ』というのは、かなりリスキーになってくる。9人全員をひれ伏させて高い平均点を獲るのは至難の業ですよ」

記者T「審査員のほとんどが現役の漫才師でもありますから、お客さんの笑いには相当敏感なはず。2022年に山田邦子さんがカベポスターに低目の84点を出したことがありましたが、ああいう素っ頓狂なことをすると審査員側にもダメージが大きいため、保守的な採点になる可能性は高い。あまり差が出ないかもしれませんね」

作家Y「2015年大会は9人体制、翌2016年大会は5人体制というのもありましたが、基本的には審査員は7人体制。歴代最高得点は2019年のミルクボーイが叩き出した681点ですが、7人体制じゃないとこれと比べられないというもどかしさも。節目となる20回大会なのに何をやってんだ、と怒り心頭なお笑いファンが多いのも事実です」

初の審査員となる若林(右・2019年撮影)
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ダントツなのは令和ロマン。しかし…

局員K「松本さんは今回で3度目の不在ですが、彼がいないと審査員の数がどうしても狂ってしまうんですよ(笑い)。そんな節目の大会でもあり、3度めのレアな大会でもある今回、優勝コンビはどうなると思いますか?」

記者T「9人体制でより高い平均点を獲りにいくため、ボケ数が多く精度も高いという意味では、令和ロマンがダントツなのは間違いないです。まぁ、面白くもなんともない予想にはなってしまいますが」

作家Y「今まで誰も成し遂げてない『2連覇』を視野に入れ、盤石の仕上がりですよね。優勝した前回もそうでしたが、高比良くるまさんがネタ順や客席の雰囲気を一瞬で判断してネタを決めるというのは神業レベルの正確さ。そして、ネタのストックも潤沢にあるし、ボケ数がとにかく多いのも特徴。実際、劇場で令和ロマンがスベってることは一度も見たことがありませんし、準決勝でも会場がうねるほどの今年一番の爆笑を獲ってました」

局員K「賞レース向きの漫才では、いまだダントツなのは令和ロマンで間違いない。しかし、2連覇のハードルは正直高すぎます。フットボールアワー、NONSTYLE、パンクブーブーですら達成できなかったわけですから。審査員もさすがに粗探しをしてしまうはず」

記者T「となると、昨年惜しくも準優勝だったヤ―レンズがまくる可能性は十分にあると思いますね。実際、準決勝でも令和ロマンに近い大爆笑を獲ってましたし」

作家Y「ヤーレンズはこの1年でテレビでこそブレイクしてませんが、ラジオでのトークの完成度は業界でも話題になるほど。そのまま漫才に落とし込めるほど仕上がった素晴らしい話芸の持ち主です。M-1はどの順番でやるかで大きく左右される大会ですが、ヤ―レンズと令和ロマンはどの順番で出ても確実に高得点を出せる強みがあります」

局員K「令和ロマンとヤ―レンズは合同ライブでも切磋琢磨した間柄ではありますが、令和ロマンの2連覇に対するハードルが上がりきった今、ヤ―レンズのほうに可能性を感じるというのも頷けます」

記者T「今回はオードリーの若林さんが初めて審査員を務めますが、ヤ―レンズはオードリーと同じケイダッシュステージ所属。長らくオードリーだけが事務所をけん引してきた印象ですが、ヤ―レンズは事務所の看板漫才師になれる超有望株でもある。若林さんには照れずに高得点をつけてほしいですね」

初の二連覇を目指す令和ロマン。(M-1公式インスタグラムより)
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死に物狂いで大爆笑を獲りにくるはず

作家Y「ケイダッシュステージといえば、トム・ブラウンもいますね(笑い)。彼らが合体漫才でM-1の決勝に彗星の如く現れたのは2018年でした。今回、6年ぶりに悲願の決勝進出で、しかもラストイヤーです」

局員K「彼らはテレビでもすでにお馴染みですが、正統派漫才師ではないのは自他ともに認めるところ。得意の合体漫才を大きく進化させた奇想天外なネタは昨年の敗者復活でも大絶賛されました。今年はラストイヤーなので死に物狂いで大爆笑を獲りにくるはず。やり過ぎて出血とか骨折とかしないでほしいと願うばかりです(笑い)」

記者T「テレビでもそれなりに売れてるからという思いは一切なく、本気で優勝を獲りにきてるコンビ。それが奇想天外なあのネタから伝わってきます。さすがに1番手だと大会自体が壊れてしまいそうな気もしますが、順番に恵まれたら優勝の可能性は大いにあるかと思います」

作家Y「そんなトム・ブラウンを昨年の敗者復活で破ったのがエバースです。エバースは今年の予選が始まる前から芸人の間で『絶対に決勝に行く』と言われていたほど、いま脂がのりまくっているコンビです。芸人からの注目度がとにかく高いですね」

局員K「ボケとツッコミのバランスもいいし、ネタの世界観も独特でいい。ふたりの身長差もほどよくあって、コンビとして理想的なルックスなのもいいですね。キャラがしっかり浸透すればバラエティー番組の平場でも即戦力になる逸材だと思います」

独特の世界観を持つトム・ブラウン。(M-1公式インスタグラムより)
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神戸大学卒のお笑いエリートとは

記者T「10月に開催された、結成10年未満の賞レース『NHK新人お笑い大賞』では決勝でジョックロックを制し、見事優勝。若手漫才師のなかではネタの完成度がずば抜けてますし、勢いもある。基本は屁理屈漫才なので派手さには欠けますが、ツッコミの町田(和樹)くんの粗暴なキャラがハマれば爆発する予感はあります」

作家Y「エバースと名勝負を繰り広げたジョックロックは、今回の9組の中ではダントツで“無名”、最強のダークホースと言われています。正直、私も知りませんでした」

局員K「結成3年目で、大阪のよしもと漫才劇場でも下のグループに所属。ボケのゆうじろーとツッコミの福本(ユウショウ)の年齢は11歳差という異色のコンビですが、ネタは相当爆発力がありますよね」

記者T「ゆうじろーがステージを広く使ってボケまくり、福本がセンターマイクで仁王立ちで突っ込むというスタイルは霜降り明星を彷彿とさせますが、そこさえバレなければ相当新しい漫才に見えるはず(笑い)」

作家Y「納得です。ゆうじろーのボケはやや不安定ですが、福本のツッコミは大爆発を期待させるほどの仕上がり。最後のほうの出番を引くことができれば、ぺこぱのように最終コーナーからまくって最終決戦に残れる可能性は意外とあるかと思いますね」

局員K「エバース、ジョックロックを含め、今年は初出場組が多いのも特徴。テレビではそこそこお馴染みでもあるママタルトも初出場ですね。ボケの大鶴肥満ばかりが目立ちますが、ツッコミの檜原(洋平)くんも意外と腕のある芸人さんですよね」

記者T「ネタ作成も担当する檜原さんは高校時代にはM-1甲子園で優勝するという実力者。霜降り明星の粗品さんとはその大会で出会ってからの仲。その後、神戸大学に進学し、大学お笑い時代は大阪の劇場『5upよしもと』でも活動するなど実はかなりのエリート芸人でもあります。流れ流れて大鶴と組み、サンミュージックに所属してますが、ネタのクオリティはしっかりしている」

作家Y「大鶴をうまくコントロールしつつ、大鶴の見た目に頼りすぎない予測不可能なネタで挑めば、意外な伏兵になる可能性は十分にあります」

10組目の敗者復活枠も実力者揃い。(M-1公式ホームページより)
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「こんなすごいやつがいるのか」

局員K「同じく初出場のバッテリィズはキャラの強いエースと、ネタ作り担当の寺家によるコンビ。去年も敗者復活までは出てるので実力はありますし、大阪のよしもと漫才劇場の主力コンビになりつつある」

記者T「エースのアホ丸出しのボケもいいですが、寺家のしゃべりのテンポやツッコミの技術は相当高い。ただ、やや既視感があるネタが多いので、大会用にブラッシュアップした技アリのネタに期待したところです」

作家Y「初出場組のラスト1枠は双子芸人のダイタク。吉本興業の中では若きM-1戦士たちのお兄ちゃん的存在で、ダイタクの決勝進出を聞いた後輩芸人たちはみんな泣いていましたよね」

局員K「今年でラストイヤー。M-1が再開した2015年からは毎年準決勝と準々決勝には進出していて、今年のラストイヤーで悲願の決勝進出をかなえました。節目の20回目で、第一回のチャンピオンである中川家以来の兄弟漫才師が優勝する……なんてことになると俄然“物語”が生まれますね」

記者T「彼らの場合はネタは売るほどあるので困らないと思いますが、双子をいかしたネタでいくのかいかないのか。双子に触れずに笑いを獲れるスキルは余裕であるコンビですが、初見だと双子が気になってネタに集中できないという可能性も。番手とネタがハマれば大爆発の可能性を秘めた“ベテランコンビ”です」

作家Y「そして最後が、4年連続決勝進出の真空ジェシカ。テレビではすでにお馴染みな存在、ネタに対するハードルも相当あがっているはずが、安定の決勝進出です」

局員K「彼らも大学お笑い時代からの実力者ですが、あのぶっ飛んだ世界観で4年連続決勝進出はさすがとしか言えない。ただ、今年でそろそろ決めないと、ネタの傾向がすでにお客さんにまで知れ渡っているので、なかなか優勝を狙う位置にいくのは難しくなるのではないかと思いますね」

記者T「同意見です。M-1で頭ひとつ抜けるのは、なにより斬新さが大事。過去には、全国区では無名だったブラックマヨネーズやミルクボーイが一撃で優勝を決めたように、『こんなすごいやつがいるのか』と会場で痛感させることが物凄いグルーブ感を生みだす。今回は審査員9人に対して高い平均点を要求されるわけですから、真空ジェシカにとっては今までで最も苦戦しそう」

作家Y「とはいえ、独創的なネタの世界観は随一なので、破壊力は抜群。もしコンサバティブな打ち合いが続いていれば、流れを変える存在になれる可能性も存分に秘めています。我々の予想を軽々と超える傍若無人なネタに期待したいですね」

昨年のリベンジを果たすか。(M-1公式インスタグラムより)
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「案外圧勝できるかも」

局員K「今年の敗者復活はどうでしょうか。昨年と同じ『勝ち残りシステム』が今年も採用となりましたが、正直あまり評判はよくないですよね」

記者T「そうですね。21組が3ブロックに分かれ、1組ずつネタ終わりで『暫定勝者』か『挑戦者』かどちらが面白かったかを会場のお客さんが審査し、各3ブロックの勝者3組を決めるのは芸人審査員。今年は渡辺隆(錦鯉)、野田クリスタル(マヂカルラブリー)、斎藤司(トレンディエンジェル)、久保田かずのぶ(とろサーモン)、井口浩之(ウエストランド)と、歴代のチャンピオン5人です」

作家Y「なぜ本選の審査員はチャンピオンではない芸人も交じってるなか、敗者復活のほうがチャンピオンばかりなのかも気になりますが……(笑い)」

記者T「審査員は置いといて、誰が勝ち上がってくるかですよね。準決勝のウケだけで言ったらインディアンスが私の中では当確です」

作家Y「オズワルドは例年よりも気合いを入れすぎないようにしているフシがあるため、過去のネタと比べるとどうしても物足りなさを感じます。僕は勢いがあるナイチンゲールダンスを推しますね」

局員K「私は昨年のファイナリストだったマユリカ、カベポスター、ダンビラムーチョのどれか一組にあがってきてほしいと思ってます。ダンビラムーチョは『キングオブコント』の『冨安四発太鼓保存会』のネタがキレッキレだったので、あれぐらいオリジナル度の高いネタで勝負してくれたら、案外圧勝できるかも」

記者T「とはいえ勝ち残りですから、本選同様敗者復活戦もネタ順で大きく左右されますよね。あまり先に出すぎると、どうしても後から見たネタのほうが面白く感じてしまうので。そういった意味でも、敗者復活戦は元のかたちに戻してもらいたいです」

20回目の記念大会で波乱は起きるか。(M-1公式インスタグラムより)
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トップ3は……

作家Y「では、この座談会で今大会のトップ3をまとめてほしい、ということなんですが……やはり最大のポイントは審査員席に松本人志さんがいない、ということに尽きると思うんですよ。大会の流れをつくるコメントをするのも毎回松本さんですし、ファイナリストたちも当然松本さんにウケたいという思いは特段強い。また、審査員側の芸人も松本さんをどうしても意識せざるをえなかったところを、今回はフラットな賞レースとしての採点になってくるのかと思います」

局員K「これまでの、松本さん不在の大会で優勝したのは、2004年大会のアンタッチャブル、そして2015年大会のトレンディエンジェルです。あえて共通点を挙げるなら、ハイテンションかつボケ数多めのコンビ、ですね」

記者T「それも踏まえた我々が導き出した『M-1グランプリ2024』のトップ3は……1位ヤ―レンズ、2位令和ロマン、3位トム・ブラウンです!」

作家Y「令和ロマンが2連覇したらおそらくM-1グランプリは終わってしまうので(笑い)。ラストイヤーのトム・ブラウンが爪痕を残すも、最終的には総合点でヤーレンズが優勝、というジャッジです」

局員K「いつもは『1番手のネタ順を引いてしまうと大きく崩れてしまうのはご容赦ください』というエクスキューズを必ずつけるのですが、この3組なら一番手でも残れると思います」

記者T「とはいえ、1番手が令和ロマンだと昨年同様全体的に盛り下がるので、それはやめてもらいたい。あと、トム・ブラウンが1番手なのも大会の空気がおかしくなりそう」

作家Y「やはり我々が予想した3組が1番手のネタ順を引いてしまうと大きく崩れてしまうのはご容赦ください、ですね(笑い)」

 

取材・文/藤原三星

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