
死に物狂いで大爆笑を獲りにくるはず
作家Y「ケイダッシュステージといえば、トム・ブラウンもいますね(笑い)。彼らが合体漫才でM-1の決勝に彗星の如く現れたのは2018年でした。今回、6年ぶりに悲願の決勝進出で、しかもラストイヤーです」
局員K「彼らはテレビでもすでにお馴染みですが、正統派漫才師ではないのは自他ともに認めるところ。得意の合体漫才を大きく進化させた奇想天外なネタは昨年の敗者復活でも大絶賛されました。今年はラストイヤーなので死に物狂いで大爆笑を獲りにくるはず。やり過ぎて出血とか骨折とかしないでほしいと願うばかりです(笑い)」
記者T「テレビでもそれなりに売れてるからという思いは一切なく、本気で優勝を獲りにきてるコンビ。それが奇想天外なあのネタから伝わってきます。さすがに1番手だと大会自体が壊れてしまいそうな気もしますが、順番に恵まれたら優勝の可能性は大いにあるかと思います」
作家Y「そんなトム・ブラウンを昨年の敗者復活で破ったのがエバースです。エバースは今年の予選が始まる前から芸人の間で『絶対に決勝に行く』と言われていたほど、いま脂がのりまくっているコンビです。芸人からの注目度がとにかく高いですね」
局員K「ボケとツッコミのバランスもいいし、ネタの世界観も独特でいい。ふたりの身長差もほどよくあって、コンビとして理想的なルックスなのもいいですね。キャラがしっかり浸透すればバラエティー番組の平場でも即戦力になる逸材だと思います」

神戸大学卒のお笑いエリートとは
記者T「10月に開催された、結成10年未満の賞レース『NHK新人お笑い大賞』では決勝でジョックロックを制し、見事優勝。若手漫才師のなかではネタの完成度がずば抜けてますし、勢いもある。基本は屁理屈漫才なので派手さには欠けますが、ツッコミの町田(和樹)くんの粗暴なキャラがハマれば爆発する予感はあります」
作家Y「エバースと名勝負を繰り広げたジョックロックは、今回の9組の中ではダントツで“無名”、最強のダークホースと言われています。正直、私も知りませんでした」
局員K「結成3年目で、大阪のよしもと漫才劇場でも下のグループに所属。ボケのゆうじろーとツッコミの福本(ユウショウ)の年齢は11歳差という異色のコンビですが、ネタは相当爆発力がありますよね」
記者T「ゆうじろーがステージを広く使ってボケまくり、福本がセンターマイクで仁王立ちで突っ込むというスタイルは霜降り明星を彷彿とさせますが、そこさえバレなければ相当新しい漫才に見えるはず(笑い)」
作家Y「納得です。ゆうじろーのボケはやや不安定ですが、福本のツッコミは大爆発を期待させるほどの仕上がり。最後のほうの出番を引くことができれば、ぺこぱのように最終コーナーからまくって最終決戦に残れる可能性は意外とあるかと思いますね」
局員K「エバース、ジョックロックを含め、今年は初出場組が多いのも特徴。テレビではそこそこお馴染みでもあるママタルトも初出場ですね。ボケの大鶴肥満ばかりが目立ちますが、ツッコミの檜原(洋平)くんも意外と腕のある芸人さんですよね」
記者T「ネタ作成も担当する檜原さんは高校時代にはM-1甲子園で優勝するという実力者。霜降り明星の粗品さんとはその大会で出会ってからの仲。その後、神戸大学に進学し、大学お笑い時代は大阪の劇場『5upよしもと』でも活動するなど実はかなりのエリート芸人でもあります。流れ流れて大鶴と組み、サンミュージックに所属してますが、ネタのクオリティはしっかりしている」
作家Y「大鶴をうまくコントロールしつつ、大鶴の見た目に頼りすぎない予測不可能なネタで挑めば、意外な伏兵になる可能性は十分にあります」

「こんなすごいやつがいるのか」
局員K「同じく初出場のバッテリィズはキャラの強いエースと、ネタ作り担当の寺家によるコンビ。去年も敗者復活までは出てるので実力はありますし、大阪のよしもと漫才劇場の主力コンビになりつつある」
記者T「エースのアホ丸出しのボケもいいですが、寺家のしゃべりのテンポやツッコミの技術は相当高い。ただ、やや既視感があるネタが多いので、大会用にブラッシュアップした技アリのネタに期待したところです」
作家Y「初出場組のラスト1枠は双子芸人のダイタク。吉本興業の中では若きM-1戦士たちのお兄ちゃん的存在で、ダイタクの決勝進出を聞いた後輩芸人たちはみんな泣いていましたよね」
局員K「今年でラストイヤー。M-1が再開した2015年からは毎年準決勝と準々決勝には進出していて、今年のラストイヤーで悲願の決勝進出をかなえました。節目の20回目で、第一回のチャンピオンである中川家以来の兄弟漫才師が優勝する……なんてことになると俄然“物語”が生まれますね」
記者T「彼らの場合はネタは売るほどあるので困らないと思いますが、双子をいかしたネタでいくのかいかないのか。双子に触れずに笑いを獲れるスキルは余裕であるコンビですが、初見だと双子が気になってネタに集中できないという可能性も。番手とネタがハマれば大爆発の可能性を秘めた“ベテランコンビ”です」
作家Y「そして最後が、4年連続決勝進出の真空ジェシカ。テレビではすでにお馴染みな存在、ネタに対するハードルも相当あがっているはずが、安定の決勝進出です」
局員K「彼らも大学お笑い時代からの実力者ですが、あのぶっ飛んだ世界観で4年連続決勝進出はさすがとしか言えない。ただ、今年でそろそろ決めないと、ネタの傾向がすでにお客さんにまで知れ渡っているので、なかなか優勝を狙う位置にいくのは難しくなるのではないかと思いますね」
記者T「同意見です。M-1で頭ひとつ抜けるのは、なにより斬新さが大事。過去には、全国区では無名だったブラックマヨネーズやミルクボーイが一撃で優勝を決めたように、『こんなすごいやつがいるのか』と会場で痛感させることが物凄いグルーブ感を生みだす。今回は審査員9人に対して高い平均点を要求されるわけですから、真空ジェシカにとっては今までで最も苦戦しそう」
作家Y「とはいえ、独創的なネタの世界観は随一なので、破壊力は抜群。もしコンサバティブな打ち合いが続いていれば、流れを変える存在になれる可能性も存分に秘めています。我々の予想を軽々と超える傍若無人なネタに期待したいですね」