ラストイヤーにしてようやくM-1決勝進出を掴んだ双子コンビのダイタク。親しい先輩や後輩から喜びの声は後を絶たない。『M-1』という賞レースに苦しめられてきた彼らにとって、M-1の特に決勝進出については最高の“酒の肴”になるようだ。インタビュー会場となった焼肉店ではどんどんとグラスを空け、M-1決勝、そして仲間たちの話はお酒が進むに連れてさらに熱くなった。
芸人は売れるのが遅ければ遅いほど幸せ
──出順の理想はありますか?
大:僕トップバッターでも全然いいです。
拓:俺、一番最後は嫌かもな~。
大:いや、一番最後はいいだろ
拓:一番最後だったらいいか!
大:8番目、9番目とかはだるいですね。ずっと待ってずっと煙草吸って、いつだよ!早く呼べよ!ってなるでしょ。
拓:喉乾いて、煙草吸ってで、もうめんどくせぇわ!ってなっちゃうよ。ダンビラムーチョの大原も去年はまじで早く呼ばれたいって言ってましたよ。去年2番目のシシガシラはスベリまくってたんで。だらしねぇ!(笑)
大:俺らはもう出る機会がないって思ったらすごく気楽ですよ。
拓:ラッキーっすよ。みんなによかったねって言われるのは、下手したらラストイヤーで1回しかM-1に出ないのはいちばん幸せなんですよ。もちろん優勝が一番幸せですよ。よく芸人は売れるのが遅ければ遅いほど幸せって言われるくらい。劇場は楽しいし、悔しい想いをするのは一瞬じゃないですか、M-1の時期だけとか。オズワルド、ゆにばーすはどんだけ今苦しんでいるか……!昔の自分の残像と闘わなきゃいけないんですよ。めっちゃ褒められたあの頃のネタ、その残像と闘わなきゃいけない。
大:なんでこんなことになっちまったんですかね、M-1……(笑)
M-1だけで芸人人生を決めちゃうのは違うだろ
拓:俺らがいちばんお世話になっている先輩の囲碁将棋さんが “M-1”についての想いを文章で綴るという番組があったんですけど、あれこそが本音を言ってくれたって感じ。あれが全芸人の本音だと思う。
大:うん。
拓:M-1行ってないで、評価はされていて、劇場にお客さんを呼べて、テレビにも出るって、結構難しいことで。まさに僕らも“囲碁将棋ロード”を歩んでいる途中だったんですよ。劇場では評価されて、お客さんもそれなりについてくれて、若手の頃からいつ決勝に行ってもおかしくないって言われ続けてるという意味で、“お前は囲碁将棋みたいになれるから”って1年目くらいのときに言われて。囲碁将さんのラストイヤー(2019年)の年、僕らも一緒に準決勝にいっていたので袖で見ていたら、めちゃくちゃスベってたんですよ。敗者復活も国民投票最下位。ラストイヤーですよ?これなかなか難しいことなんですよ。
大:最高だな(笑)
拓:普段はあっけらかんとしている根建さんが、M-1が終わったとき芸人辞めるわって言いだしたんですよ。俺らはその噂を聞いたときに、ふざけるなと。俺らの大将がやめてどうすんだよ、M-1ごときでって。囲碁将棋はずっと俺らの囲碁将棋だから。面白いよ、ずっと俺らの大将だよ。絶対に越えられない壁であってほしいのに。根建さんって自分のことをあまり話さないから、M-1に賭けてたとすら思わなかったんですよ。「別にM-1行けなくたっていいだろ」って口では強がって言っていたんで。俺らも同じようなところあるんですけど。
そこから囲碁将棋を辞めさせるわけにはいかないだろってことで、俺ら、オズワルド、ニューヨークで囲碁将棋の名前を使って『以後勝利』っていうライブをうつんですよ。
俺らからしたら偉大な先輩が、たかがM-1ですよ。その後の人生の方が長いのに、M-1だけで芸人人生を決めちゃうのは違うだろって。
大:M-1の先の人生が長いからなんですよね。だからこそ決勝にいっておきたいんです。矛盾しているようで本質というか。M-1の決勝に行った方が、今後の人生が楽だって分かっているから。漫才だったら食って行けると思っていた人が決勝に行けなかった時の辛さを山ほど見てきて、僕らもその一端を担うのかなって思っちゃっていました。
拓:俺らは先輩がM-1の決勝に行っても行けなくても尊敬していることは変わらないんですよ。でも本人は、行けなかったという十字架をずっと背負って生きてきて、社内評価でも面白いけど“M-1の決勝は行ってないよね”っていう見方もされるし、どれだけ面白くても決勝に行っていないから世間は知らないんですよ。その歯がゆさがめちゃくちゃあるんです。僕らが世話になっている先輩たちがTHE SECONDに行っても、その十字架はいまだに背負っているんですよ。
大:これで飯食えなくなってみてください。「俺たちがM-1の決勝に行っていなかったからだ……」って思うと思いますよ。そこまでの存在なんですよ、M-1グランプリって。
4杯目につづく
【プロフィール】
ダイタク
1984年12月28日生まれ。熊本県出身。
2009年に結成した双子コンビで、東京吉本に欠かせない兄貴的存在。
12月22日18時30分から生放送の『M-1グランプリ2024』(テレビ朝日系)に、初の決勝進出を決めた。
取材・文/まつもと