健康・医療

【現役医師が本音座談会】人工関節置換術や脊柱管狭窄症手術は“受けたくない”と語る理由「どんな手術にも合併症や後遺症が起こりうる」

4人の医師から“特定の手術”を受けたくないという声があった(写真/PIXTA)
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私たちの不調や病気を治してくれる医療。白衣を着た医師から「この薬をのんでください」「この手術をやりましょう」と言われたら、何も疑うことなく、その治療を受け入れるだろう。しかし、医師が心の内では“自分だったら受けない”と思っていたら──その現役医師たちが匿名座談会だからこそ言える本音を語りつくした。語ってくれたのは、内科クリニックの院長のA子(50代)、乳腺科・婦人科のクリニック院長のB美(40代)、がん専門病院勤務の医師のC夫(40代)、大学病院外科医のD代(50代)の4人だ。4人からは、特定の手術を受けたくないという声もあがった。【全3回の第2回。第1回から読む

人工関節置換術は“ドル箱手術”の代表

B美:ひざや股関節の調子が悪くなっても、人工関節置換術は受けたくないですね。患者さんの中にも人工関節を入れる人が増え、手術をして痛みが取れてよかったという人がいる一方で、リハビリが大変でそのまま車いすになってしまうかたもいる。大腿骨を骨折するなど避けられないケースもあるけれど、車いすになるリスクは減らしたい。

D代:人工関節置換術って、“ドル箱手術”の代表ですよね。手術自体の難易度はそれほど高くないし、流れ作業的に入院とセットで受け入れると病院は儲かる。レーシックも同様で、学術的な評価がされていないから私は受けたくない。

C夫:私自身はレーシックを若いときに受けて満足していますが、40代以降に受けても老眼になると手元が見えづらくなるので、メリットがなくなりますよ。私が受けたくないのは、歯科のインプラント治療。長期におよぶ追跡調査がまだ行われておらず、効果や問題点が明らかになっていません。入れ歯かインプラントの2択になったら迷うとは思いますが、そうならないように口腔ケアをきちんとするしかありません。

A子:私が避けたいのは、人工内耳を埋め込む手術。誰もがすぐに聞こえるようになるものではなく、人工内耳を通して音を聞き取るためにはリハビリがすごく重要です。電極の調整や言語訓練など長期にわたるので、後悔する人もいます。熟考して受けるべきです。

D代:すぐに命に直結しない手術は、安易に受けない方がいいですよね。脊柱管狭窄症の手術を受けた親戚に、下半身まひの後遺症が残りました。術後は軽いしびれだったそうですが、そのうち感覚がなくなり、立ち上がることができなくなってしまって……。医療ミスではなく、事前に医師から後遺症のリスクなど説明を受けていますが、確率は低いのでまさか自分がそうなるとは思っていなかったそうです。どんな手術にも合併症や後遺症が起こりうるので、それでも受けるのかをよく考えた方がいい。

手術によって寝たきりや認知症になることもある(写真/PIXTA)
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術後のトラブルで来院するケースが多い豊胸手術

A子:命にかかわらないという点では、痔の手術も同じです。いぼ痔が飛び出て激痛があるとか、出血が止まらないという人でない限り、すぐに手術をする必要はない。生活習慣の見直しで改善することがあるのに、すぐに手術をしようとする病院も多いですよね。

B美:私が患者さんを診ていて絶対に受けないでほしいと思うのは、美容クリニックの豊胸手術。術後のトラブルを抱えてうちに来る人が本当に多い。バストにヒアルロン酸を直接注入する方法は特に危険です。メスを使わないから、シリコンバッグを入れるよりも安心だと思う人がいるけれど、体に合わずに炎症が起きても取り出せない。体に残るので乳房の形がいびつになり、しこりになることもある。受けたクリニックに相談してもろくに対応してもらえず、泣き寝入りの患者さんもいて、怒りを覚えますね。

D代:不勉強ながら、ヒアルロン酸の注入にそれほどの危険があるとは思いませんでした。最近は形成外科医のバックグラウンドがない医者が執刀する美容整形が増えていますよね。経歴を見ると内科とか、一般の病院での勤務経験がないこともある。

B美:泌尿器科医の友人が言っていましたが、尿漏れ対策として提案される腟HIFUも自由診療で行われているけど、本当につらいなら泌尿器科で保険診療を受けた方がいい。価格のわりに大した効果はありません。

(第3回に続く。第1回から読む

※女性セブン2025年1月2・9日号

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