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女性の「キャリアアップ」や「もう一度働きたい」を叶える 無償の「AIスキル」人材育成講座がスゴすぎた!

スキルが向上して雇用や昇進に結びついたケースも

日本マイクロソフト プロフェッショナルスキル開発本部 トレーニングプログラムマネージャの河村明子さんによると、同プログラムの参加者から「Microsoft Copilotを取り入れている企業と縁がつながった」「希望の仕事を任されるようになった」「転職のチャンスが訪れた」などと、さまざまな報告があったと話す。

「プログラムを修了したかたは、マイクロソフトのテクノロジーを学んだ証として"デジタルバッジ"という認証を取得できます。資格ではありませんが、一定のスキルをもった証として認識する企業が増えています。CWBJのパートナーである派遣会社でも、デジタルバッチは大きな評価ポイントになっています」(河村さん・以下同)

日本マイクロソフトの調査によると、経験よりAIスキルを社員に求める企業が増えているという
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それにしても、CWBJはのべ30万人にAIのスキルを提供するというビックプロジェクトだ。“女性ならだれにでも無料”で門戸を開いているのは、どういった意図があるのか。

「結婚や出産といったライフイベントに伴いキャリアを中断、進路変更せざるを得ない女性が数多くいるという現実、そして AI を活用していくには多様性が大変重要だからです。しかし、当社の調査では7割以上の企業が〝経験よりAIスキルがある人材を採用したい″と答えています。IT業界全体の深刻な人材不足解消のためにも、AIを活用できる女性の育成が急務だと考えました」

2024年の最新レポートでは、国内の男女平等の度合いを示すジェンダー・ギャップ指数(※)が日本は「0.663」と146か国中118位という低い結果に。お隣の韓国が94位、中国が106位というから、いかに日本国内の女性の地位が低いかよくわかる。事実、日本国内の働く女性の数は欧米各国と同じく半数なのに対し、厚生労働省によると2022年の女性管理職の比率はわずか13%弱。スウェーデンやアメリカをはじめとする欧米各国が40%前後(労働政策研究・研修機構調べ)であることを考えると、世界各国と比較して、この水準はかなり低い。

評価されても時給が10円しか上がらないジレンマが支援の力に

実は河村さん自身も、結婚を機にキャリアをゼロリセットし、非正規雇用で就業した経験がある。

「いくら高評価を得ても、年間で時給が10円しか上がらない世界観を身をもって体験しています。だからこそ、現状にジレンマを抱く女性の気持ちはよくわかっています。そんな経験もあって、たくさんの可能性を秘めた女性を、マイクロソフトならではの形でサポートしていければと、プログラム内容を固めていきました」

講座のステップについて説明する河村さん。自身の苦い経験が支援活動にいかされている
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CWBJはまだ始まったばかり。1期目を終えた経験を生かし、2期目以降はリアルアイムのオンライン講義からオンデマンド形式に変えるなど、忙しい女性が続けやすい環境を整えている。昨年11月に第2期もスタートしたが、途中からの参加も可能。現在も、参加者を募集している。

「学ぼうとすること、チャレンジする気持ちが新しい世界を開きます」と河村さん。この一歩が、未来を大幅に書き換えるきっかけになるかもしれない。

※世界経済フォーラムが、経済、教育、健康、政治の分野ごとに各使⽤データをウェイト付けして算出したもので、指数が1に近いほど男女平等が進んでいることを示している。

「Code; Without Barriers in Japan」について知りたい人はこちら

取材・文/高城直子 撮影/五十嵐美弥