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《退職金の受け取り方》「一時金」と「年金」の併用がお得 「勤続○○年+1日」で退職すれば、一時金の所得税控除額が増加

退職金の受け取り方は一時金と年金の併用がお得(写真/PIXTA)
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今年4月1日からの「高年齢者雇用安定法」の改正によって、定年は実質的に「65才」となり、生涯現役社会がまた一歩近づいてきた。来年度からも働いて自分で稼ぐか、リタイアして退職金を受け取るか──大損をしないために知っておくべきこととは。【全3回の第2回。第1回から読む

退職日が1日ずれると所得控除が増える

定年後にもらえるもっとも大きなお金はやはり「退職金」。老後の暮らしや第二の人生を楽しむのに欠かせない。だがこちらも、一歩間違えると大損しかねない。

まず、退職金の受け取り方には「一時金」「年金」の2種類があり、受け取り方で税区分が変わることを覚えておきたい。一時金で受け取ると「退職所得控除」、年金なら「公的年金等控除」が受けられる。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが解説する。

「一時金に適用される退職所得控除は税制優遇が大きく社会保険料もかからないため、一般的に有利とされています。

年金で受け取ると社会保険料などがかかる一方、運用期間によっては受取総額が一時金よりも大きくなる可能性もある。会社によっては一時金と年金を併用できる場合もあるため、金額次第では、併用するのがもっともお得でしょう」

おすすめは、「まずは退職所得控除の非課税枠上限までを一時金で受け取り、残りの退職金は年金で受け取ること」だ。

退職日を1日遅らせるだけで所得控除額に大きな差が生まれる
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退職金の一時金では、退職日を「3月31日」にするか、「4月1日」にするかが重要なカギを握る。

一時金を受け取る際に適用される退職所得控除額は勤続年数によって変わり、1年未満の端数は切り上げとなる。このため、例えば「勤続35年と1日」で退職すると、退職所得控除では「勤続36年」として計算されるのだ。「年金博士」ことブレイン社会保険労務士法人代表の北村庄吾さんが言う。

「勤続年数が20年以上だと、退職所得控除枠は1年につき70万円ずつ増えていきます。例えば、4月1日入社で35年後の3月31日付で退職すると『勤続35年』だが、退職日を4月1日にすると『勤続36年』となり、退職所得控除がまる1年分増えるのです。

退職一時金が2500万円とすると、まず勤続年数20年で800万円が控除されて課税対象額は1700万円。勤続年数が35年なら、そこに1050万円が加算され、合計1850万円が控除されることになる。ところが、退職日を1日延ばして勤続年数を36年にすると、控除されるのは1920万円に増えます。

この控除額を退職金から引いた額の2分の1が課税退職所得金額となり、ここから所得税額が計算されます」(北村さん・以下同)

ただし定年退職日は企業で就業規則に最初から定められていることが多く、手続きもすべて会社側で行うため、個人で調整できる余地はあまりない。しかし「定年延長」を選択することで勤続年数を延ばし、控除額を増やすことはできる。退職所得控除を受けるには、自分で会社側に手続きをする必要がある。

定年退職日や退職金などは企業の就業規則に最初から定められていることが多い(写真/PIXTA)
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「退職金を受け取る前に、会社に『退職所得の受給に関する申告書』を提出しなければ控除が適用されず、約20%が課税されるので要注意」

一方、年金で受け取る際は多くの場合「5年」「10年」「15年」など、受取期間があらかじめ決められており、一般的にはこの期間で運用を続けながら毎年受け取ることになるため、運用利回りが重要だ。

「超低金利時代とはいえ、銀行預金よりは増えやすい。会社によっては退職金の一部を終身年金にできることもあるので、もしあればこれを利用しない手はありません」

年金で受け取る際は、公的年金等控除が適用される。控除額は年齢や年金の受給額によって異なるが、例えば65才以上、年金収入110万~330万円未満の場合、控除額は110万円と定められており、ほとんどの場合、退職所得控除と比べると少なく、税制面でのメリットは小さいと言える。

(第3回に続く。第1回から読む

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※女性セブン2025年2月6日号

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