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【内藤剛志インタビュー】27クール連続ドラマ出演の記録保持者が仕事を断らない理由「俳優はキャスティングされてナンボです。選択権はないと思う」 

「連ドラの鉄人」という異名を持つ人気俳優の内藤剛志
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デビュー以来、45年余り。今なお出演作が引きも切らない内藤剛志さん(69才)。「連ドラの鉄人」という異名を持ち、主演・助演にかかわらず、ドラマに欠かせない人気俳優として活躍する。その大半は刑事ものだが、正義感に満ちた一徹で、かつ人間味のある演技は、どのようにして生み出されるのか。ストイックともいえるその仕事術に迫った。【全4回の第1回】

俳優は受けるのが仕事。依頼さえあればやる

「風邪で、ちょっと調子悪いんです」と言いながら、取材用の応接室に入ってきた内藤剛志さん。183cmという長身、がっちりとした体躯に思わず「内藤さんでも風邪をひかれるんですね」と、つまらぬことを口にすると、「そりゃあ僕だって、ひきます、ひきます」と、可笑しそうに笑った。

役柄からか屈強な刑事といったイメージが強いためだが、「わかりますよ、長いこと土門薫(『科捜研の女』)やら、十津川省三(『西村京太郎サスペンス・十津川警部シリーズ』)やら……やっていますからね。街で、本物の警察官に黙礼されたこともあるくらいです」という。

実直で誠実な刑事役は、いつの頃からか、内藤の実像とどこか重なり合う気がするが、「それはよく言われますね。でも僕自身はそんなふうには思わないんです。イメージは人が決めるものですからね」と、微笑みつつもクールに答えた。

「絶対的に刑事ものをやるぞと思ってやってきたわけではないですし、俳優ですから、やれと言われたものを、一生懸命にやってきたというね。俳優はキャスティングされてナンボです。ちょっと語弊があるかもしれないですが、選択権はないと思う。自分で決められるものではなくて、やってくれと言われたら、はいっ、とやる」

『科捜研の女』シーズン2(2000年)に出演。シーズン5から主人公の榊マリコ(沢口靖子)とタッグを組む京都府警捜査一課の刑事・土門薫を演じた
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受け応えが、極めて明瞭な人だ。

脚本を読んだとき、自分には合わないからと、断る場合もある仕事だが、それもないという。

「いっさいないんですよ。俳優は、受けるのが仕事。だってそうでしょう、そもそも“嘘”をやるわけだし、俳優なんだから、天才外科医もやれば、殺人鬼だって何だってやるわけです。まあ、エベレストに登る役は、今は無理ですが(笑い)。逆に自分から、こういう役をやりたいと言うこともないですね。あくまでオーダーをされてから、自分はこの人間をどう演じるか、と取り組むことですから」

かつて、ドラマに出ずっぱりで、27クール(6年9か月)連続出演したという、日本新記録を持つ人である。話を聞いてなるほどと思う。まるでコツコツと作業する職人のようであり、それが彼の職業に対する考え、哲学ともいえそうだ。

「ああ、そうですね、植木職人とかそういう感じです。主演、助演だろうが気にしませんし、もちろん主演だと表現する場数が多いのでありがたいですが、ともかくそのとき与えられた役、その人間を、一心に演ずる。それだけでやってきました」

依頼側からの信頼も厚いのでしょうね、と言うと「そう思いたいですね。内藤なら形にしてくれる、と思ってくれるのではないでしょうか」と、堂々かつ清々しい。

俳優の内藤剛志
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(第2回につづく)

【プロフィール】
内藤剛志(ないとう・たかし)/1955年大阪府出身。1980年、映画『ヒポクラテスたち』で映像デビュー。以降、映画、ドラマ、バラエティーと活躍。代表的ドラマに『警視庁強行犯 樋口顕』『警視庁・捜査一課長』シリーズほか。声優としても活躍し、『千と千尋の神隠し』では、千尋の父親役を担当している。現在、主演ドラマ『旅人検視官 道場修作』の新作を撮影中。

取材・文/水田静子

※女性セブン2025年3月6日号

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