
国内の水族館で唯一見られる“最後のラッコ“、メイとキラは、5人の飼育員さんたちと一緒に鳥羽水族館で暮らしている。個性あふれる性格や、飼育員さんたちとのかわいいやり取りも人気! 思わずキュンとしてしまう、ラッコたちの仕草や技を紹介する。
ラッコを取り巻く現状は?
ラッコは国内の水族館で1982年から飼育され、1984年には鳥羽水族館で初めての赤ちゃんが誕生。全国の水族館で、一時は最大122頭が飼育されていたが、繁殖や飼育環境の整備などの難しさから、現在は鳥羽水族館の2頭のみに。飼育下での寿命は20~25才といわれている。野生のラッコは、国内では北海道に生息。ラッコには3種類の亜種がおり、鳥羽水族館の2頭がアラスカラッコなのに対して、北海道で見られるのはチシマラッコ。
ここにキュン!2頭それぞれ個性がちがう
鳥羽水族館では、“我が道をゆくクール派”・キラと、“鳥羽水族館生まれの甘えっ子”・メイの2頭が飼育されている。

我が道をゆくクール派・キラ(♀)
アドベンチャーワールド生まれ。2021年、当時1頭だけで暮らしていたキラが、ほかのラッコと暮らせるようにという理由から、同じく1頭だけだったメイのもとにやってきた。現在16才。
鳥羽水族館生まれの甘えっ子・メイ(♀)
人間で言えば“おばあちゃん”の年齢だが、日々飼育員さんたちと全身を使って遊んでいるおかげか、20才になったいまも元気いっぱい!

ここにキュン!手を握ってすやすや
手を繋ぐのは、もっぱらメイから。甘えん坊のメイは、となりの部屋のプールに行くときも、いつもキラを誘う。


キュンポーズが止まらない!メイ&キラのスゴ技3つ
とても賢い動物として知られるラッコ。メイ&キラの技のなかから3つを紹介する。
【1】旗を持って決めポーズ!
ラッコには鎖骨がなく、柔軟に体を動かせる。体幹もバッチリ。

【2】大ジャンプでイカ耳ゲット
水槽にペタッと張り付いたイカ耳をとるために、潜ってジャンプ!


【3】遊んだものはお片付け
カラーコーンも遊び道具の1つ。もこもこした肉球で器用に掴む。

「最後のラッコ」を守るため、できることは全部やる!飼育員の多忙な毎日に密着
ラッコの飼育員を務める、飼育歴40年以上のラッコマイスター・石原さん、入社2年目の期待の若手・西田さんの、多忙な毎日に密着。飼育する上では、ラッコならではの大変さも! 水族館の舞台裏には、努力と愛情が詰まっている。

【8時30分】ごはんの準備
好き嫌いの多いキラはイカと貝とエビを。メイはそれに加え、カジキとタラを食べるそう。キラが残したエビの殻も、メイがよく食べているんだとか。




【9時30分】設備点検
細かい毛が多いラッコの水槽には、巨大なろ過装置が4組も。設備の不具合はラッコに直接影響するため、異音がないかまで、入念にチェックする。


【11時】掃除
ラッコは激しく動く生き物。水槽も水滴で曇りやすいため、いつもの掃除に加えて、トレーニングのあとにもホースで毎回洗い流しする。

【13時】お食事タイム&トレーニング(1日3回)
朝・昼・夕方の食事は、大事な運動&健康診断の時間でもある。何をするかという決まりはなく、ラッコたちが考えて挑戦したくなるように、毎回工夫を凝らす。



【16時】記録をつける
排泄物や、ラッコが割って歯磨きに使った貝殻も、体調を知る大事な手がかり。小さな袋に入れて保存している。



ここにも注目!眠いときは毛がふわふわ
アザラシのような厚い脂肪を持たないラッコは、寝ている間に凍えないよう、眠くなると体がぽかぽかしてくる性質が。顔のまわりの毛が立ってきて、さらにかわいくなる。

ここにも注目!毛づくろいが足りないと濡れちゃう
ラッコにとっては毛づくろいも、体温を保つための大事な習慣。綺麗にしきれていない箇所があると、その部分だけ水を弾けず、黒っぽくなる。

手作りのおもちゃは市販のまな板を電動カッターで切ったもの。形が違うことで、工夫して持とうとするので、脳への刺激になる。

ラッコマイスター・石原さんインタビュー

石原さん「“ラッコが好き!”という方が年々増えているのを感じます。好き!という気持ちは、その生き物を深く知る原動力になるだけでなく、水族館にとっても大きな支えです。ラッコに限らず、生き物たちをじっくり見て、好きになって、何度でも水族館を訪れてくださいね。
もう1つ、もしあなたが、メイとキラに対して応援の気持ちを持ってくださっているなら、同じように野生のラッコや、ラッコに繋がる生態系全体も、ぜひ大切にしてください。将来、水族館のみならず、この地球上で“二度と出会えなく”なりそうな生き物もいるのですから」
今この瞬間、ラッコたちは何してる?「ラッコ ライブカメラ」
鳥羽水族館では、今この瞬間、ラッコたちが何をしているかをカメラ越しに目撃できる「ラッコ ライブカメラ」も設置している。なお、2025年3月17日からラッコの観覧方法が変わり、水槽前での見学時間は1分間に。詳しくは公式サイトで確認を。
ここでしか見られない生き物が多数!鳥羽水族館
鳥羽水族館では、ラッコの他にも、アフリカマナティー、パラオオウムガイ、ジュゴンなど、ここでしか見られない生き物が多数飼育されている。



◆「鳥羽水族館」
入館料:大人2800円、小中学生1600円、幼児(3才以上)800円
休館日:なし(年中無休)
営業時間:9時30分~17時
※最終入館は16時
※営業時間は時期により変動
https://aquarium.co.jp/
◆撮影/南幅俊輔
著書に『ラッコのすべて』『リロぼん』(ともに廣済堂出版)、『美しすぎるネコ科図鑑』(小学館)など。
取材協力/鳥羽水族館
※女性セブン2025年3月13日号