ペット・動物

国内では唯一「鳥羽水族館」でしか見られない!“最後のラッコ”「メイとキラ」をどう飼育しているのか?ごはんの準備からトレーニングまで

国内では唯一「鳥羽水族館」でしか見られない!“最後のラッコ”「メイとキラ」
国内では唯一「鳥羽水族館」でしか見られない!“最後のラッコ”「メイ(左)とキラ(右)」(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

国内の水族館で唯一見られる“最後のラッコ“、メイとキラは、5人の飼育員さんたちと一緒に鳥羽水族館で暮らしている。個性あふれる性格や、飼育員さんたちとのかわいいやり取りも人気! 思わずキュンとしてしまう、ラッコたちの仕草や技を紹介する。

ラッコを取り巻く現状は?

ラッコは国内の水族館で1982年から飼育され、1984年には鳥羽水族館で初めての赤ちゃんが誕生。全国の水族館で、一時は最大122頭が飼育されていたが、繁殖や飼育環境の整備などの難しさから、現在は鳥羽水族館の2頭のみに。飼育下での寿命は20~25才といわれている。野生のラッコは、国内では北海道に生息。ラッコには3種類の亜種がおり、鳥羽水族館の2頭がアラスカラッコなのに対して、北海道で見られるのはチシマラッコ。

ここにキュン!2頭それぞれ個性がちがう

鳥羽水族館では、“我が道をゆくクール派”・キラと、“鳥羽水族館生まれの甘えっ子”・メイの2頭が飼育されている。

メスのラッコ・メイとキラ
メスのラッコ・メイ(左)とキラ(右)、飼育員の西田さん(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

我が道をゆくクール派・キラ(♀)

アドベンチャーワールド生まれ。2021年、当時1頭だけで暮らしていたキラが、ほかのラッコと暮らせるようにという理由から、同じく1頭だけだったメイのもとにやってきた。現在16才。

鳥羽水族館生まれの甘えっ子・メイ(♀)

人間で言えば“おばあちゃん”の年齢だが、日々飼育員さんたちと全身を使って遊んでいるおかげか、20才になったいまも元気いっぱい!

キュートすぎる!(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

ここにキュン!手を握ってすやすや

手を繋ぐのは、もっぱらメイから。甘えん坊のメイは、となりの部屋のプールに行くときも、いつもキラを誘う。

メスのラッコ・メイとキラ
手を繋ぐのは、もっぱらメイから(写真提供/鳥羽水族館)
写真30枚
メスのラッコ・メイとキラ
手を握ってすやすや(写真提供/鳥羽水族館)
写真30枚

キュンポーズが止まらない!メイ&キラのスゴ技3つ

とても賢い動物として知られるラッコ。メイ&キラの技のなかから3つを紹介する。

【1】旗を持って決めポーズ!

ラッコには鎖骨がなく、柔軟に体を動かせる。体幹もバッチリ。

旗を持って決めポーズ
旗を持って決めポーズ(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

【2】大ジャンプでイカ耳ゲット

水槽にペタッと張り付いたイカ耳をとるために、潜ってジャンプ!

大ジャンプでイカ耳ゲット
イカ耳を狙い…(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
ラッコ
ジャンプ!のびると長い!(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

【3】遊んだものはお片付け

カラーコーンも遊び道具の1つ。もこもこした肉球で器用に掴む。

遊んだものはお片付け
遊んだものはお片付け(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

「最後のラッコ」を守るため、できることは全部やる!飼育員の多忙な毎日に密着

ラッコの飼育員を務める、飼育歴40年以上のラッコマイスター・石原さん、入社2年目の期待の若手・西田さんの、多忙な毎日に密着。飼育する上では、ラッコならではの大変さも! 水族館の舞台裏には、努力と愛情が詰まっている。

ラッコマイスター・石原さん、入社2年目期待の若手・西田さん
ラッコマイスター・石原さん(右)、入社2年目期待の若手・西田さん(左)
写真30枚

【8時30分】ごはんの準備

好き嫌いの多いキラはイカと貝とエビを。メイはそれに加え、カジキとタラを食べるそう。キラが残したエビの殻も、メイがよく食べているんだとか。

ラッコマイスター・石原さん、入社2年目期待の若手・西田さん
ごはんの準備(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
入社2年目期待の若手・西田さん
大量のイカを処理(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
fご飯
メイ&キラのご飯 たくさんの貝が並ぶ(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
入社2年目期待の若手・西田さん
食材を保存する大きな冷凍庫も(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

【9時30分】設備点検

細かい毛が多いラッコの水槽には、巨大なろ過装置が4組も。設備の不具合はラッコに直接影響するため、異音がないかまで、入念にチェックする。

設備
設備点検は音にも注意!(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
入社2年目期待の若手・西田さん
こまめにチェックを(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

【11時】掃除

ラッコは激しく動く生き物。水槽も水滴で曇りやすいため、いつもの掃除に加えて、トレーニングのあとにもホースで毎回洗い流しする。

ラッコマイスター・石原さん
プロのホースさばき!
写真30枚

【13時】お食事タイム&トレーニング(1日3回)

朝・昼・夕方の食事は、大事な運動&健康診断の時間でもある。何をするかという決まりはなく、ラッコたちが考えて挑戦したくなるように、毎回工夫を凝らす。

入社2年目期待の若手・西田さんとラッコ
食事は、大事な運動&健康診断の時間(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
ラッコマイスター・石原さんとラッコ
足は異常なし…と(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
キラ
カラーコーンの先に隠されたエサを取りたくて…よいしょっ!(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

【16時】記録をつける

排泄物や、ラッコが割って歯磨きに使った貝殻も、体調を知る大事な手がかり。小さな袋に入れて保存している。

入社2年目期待の若手・西田さん
うんちもチェック!(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
ラッコのうんち
冷凍して保存(撮影/南幅俊輔)
写真30枚
入社2年目期待の若手・西田さん
細かく記録をつけている(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

ここにも注目!眠いときは毛がふわふわ

アザラシのような厚い脂肪を持たないラッコは、寝ている間に凍えないよう、眠くなると体がぽかぽかしてくる性質が。顔のまわりの毛が立ってきて、さらにかわいくなる。

キラ
う~ん、ねむたい…(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

ここにも注目!毛づくろいが足りないと濡れちゃう

ラッコにとっては毛づくろいも、体温を保つための大事な習慣。綺麗にしきれていない箇所があると、その部分だけ水を弾けず、黒っぽくなる。

キラ
ぷかぷか(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

手作りのおもちゃは市販のまな板を電動カッターで切ったもの。形が違うことで、工夫して持とうとするので、脳への刺激になる。

おもちゃも石原さんの手作り
おもちゃも石原さんの手作り(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

ラッコマイスター・石原さんインタビュー

ラッコマイスター・石原さん、
ラッコマイスター・石原さんとメイ(撮影/南幅俊輔)
写真30枚

石原さん「“ラッコが好き!”という方が年々増えているのを感じます。好き!という気持ちは、その生き物を深く知る原動力になるだけでなく、水族館にとっても大きな支えです。ラッコに限らず、生き物たちをじっくり見て、好きになって、何度でも水族館を訪れてくださいね。

もう1つ、もしあなたが、メイとキラに対して応援の気持ちを持ってくださっているなら、同じように野生のラッコや、ラッコに繋がる生態系全体も、ぜひ大切にしてください。将来、水族館のみならず、この地球上で“二度と出会えなく”なりそうな生き物もいるのですから」

今この瞬間、ラッコたちは何してる?「ラッコ ライブカメラ」

鳥羽水族館では、今この瞬間、ラッコたちが何をしているかをカメラ越しに目撃できる「ラッコ ライブカメラ」も設置している。なお、2025年3月17日からラッコの観覧方法が変わり、水槽前での見学時間は1分間に。詳しくは公式サイトで確認を。

ここでしか見られない生き物が多数!鳥羽水族館

鳥羽水族館では、ラッコの他にも、アフリカマナティー、パラオオウムガイ、ジュゴンなど、ここでしか見られない生き物が多数飼育されている。

アフリカマナティー
アフリカマナティー
写真30枚
パラオオウムガイ
パラオオウムガイ(写真提供/鳥羽水族館)
写真30枚
ジュゴン
ジュゴン
写真30枚

◆「鳥羽水族館」

入館料:大人2800円、小中学生1600円、幼児(3才以上)800円
休館日:なし(年中無休)
営業時間:9時30分~17時
※最終入館は16時
※営業時間は時期により変動
https://aquarium.co.jp/

◆撮影/南幅俊輔

著書に『ラッコのすべて』『リロぼん』(ともに廣済堂出版)、『美しすぎるネコ科図鑑』(小学館)など。

取材協力/鳥羽水族館

※女性セブン2025年3月13日号

関連キーワード