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《毎週1万枚のはがきが届いた》高田文夫さんが語る、ラジオで“ビートたけしの相棒”として出演することになったワケ

放送作家、タレントの高田文夫さん
放送作家、タレントの高田文夫さん
写真2枚

日本で初めてのラジオ放送は1925年3月22日9時30分、NHKの前身である東京放送局の仮放送所から始まった。それから100年、テレビの台頭やメディア、娯楽の多様化で斜陽を迎えた時期もあったが、インターネットを利用しての放送や配信が可能になったいま、幅広い世代に聴かれるように。放送作家という裏方からメインに抜擢されるなど、ラジオの面白さを知り尽くした人気パーソナリティーである高田文夫さん(76才)にその魅力を語ってもらった。

テレビの放送作家がビートたけしの相棒に

《どうなってんだよ、タケちゃん!》
《うるせーな、この野郎》

などの軽妙なトークで若者から圧倒的な支持を得た深夜ラジオ『ビートたけしのオールナイトニッポン』(ニッポン放送/1981~1990年)。その放送作家兼ビートたけしの相棒として活躍したのが高田文夫さんだ。

高田文夫さんのラジオの様子のイメージイラスト
(イラスト/佐藤ワカナ)
写真2枚

「当時、たけしさんはお笑いコンビ『ツービート』として人気絶頂期にいたの。だから、たけしさんの事務所は当初、コンビを離れてひとりでラジオをやらせることに難色を示していて、出された条件が、おれが隣にいること。たけしさんは人見知りだから、仲のよかったおれが一緒なら安心だと考えたんだろうね」(高田さん・以下同)

当初はラジオブースの中で、声を出さずにいた。

「だけど、たけしさんがあんまりくだらないこと言うもんだからさ。“んなわけねぇだろ”とか“嘘ばっかりつきやがって”とか、つい声に出ちゃうの。それがリスナーにウケたんだよ。おれもタケちゃんも早口だから、そのスピード感が深夜放送を聴いている若者にはたまらなかったんじゃないかな」

ネタのコーナーには毎週1万枚ものはがきが届き、“はがき職人”(優秀なネタを送ってくる常連投稿者)という言葉も生まれた。

「この番組でラジオに初めて出演したんだよ。おれは当時、あくまでテレビの放送作家だったんだから。何があるかわかんないよな」

ラジオの新たな可能性を感じて…

そもそも、放送作家を目指すきっかけになったのも、ラジオ番組だったという。故・青島幸男さんや故・永六輔さんら放送作家が出演し、フリートークで進行するラジオ番組『昨日のつづき』(ラジオ日本/1959~1971年)を子供の頃によく聴いていた。

「当時は、植木等さんや谷啓さんがメンバーの『ハナ肇とクレージーキャッツ』が大人気で、そのコントの台本を書いていたのが、青島さんや永さんたち放送作家だったの。それがわかったとき“なんてかっこいい仕事なんだ”って興奮してね、将来は絶対、放送作家になると決めたんだ」

その後、夢を叶えた高田さんがビートたけしとの縁でラジオに出演。ラジオパーソナリティーとしても人気を集め、1989年からは自身がメインを務める『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)の放送がスタートした。

「これまでに、たけしさんが捕まったり、おれが心臓疾患で倒れたり、本当にいろいろあった。でも“どんなときもラジオはユーモアを忘れちゃいけない”って思ってやってきたんだよ」

2000年代、インターネットや携帯電話が定着し、メディアと娯楽が多様化。若者の“ラジオ離れ”が起きた。それでも、高田さんたちのようにおもしろいラジオを作ろうとあきらめずに続けてきた人たちが、ラジオを生かし続けた。そして2010年、ラジオに新たな可能性が生まれた。インターネットラジオ「radiko」と「ポッドキャスト」(※)だ。

「皆が起死回生の知恵を出し合って、古い体制を変えてできたんだよ、すごいよな。全国のどのラジオでも聴けるようになったから、地方にもリスナーが増えてありがたいね」

ここまで長くラジオを続けられたのは、ひとえに“人が好き”だから。

「最近は、若い人たちがまたラジオを聴いてくれているのが何よりうれしいね」と笑顔を見せた。

◆放送作家、タレント、ラジオパーソナリティー:高田文夫さん

1948年生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業後、放送作家に。『オレたちひょうきん族』『スターどっきりマル秘報告』(ともにフジテレビ系)などのテレビ番組のほか、ラジオ番組『ビートたけしのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)などの制作を手がける。新著に『月刊Takada芸能笑学部』(飛鳥新社)。

【出演中】
『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)月~金曜(11時30分~13時)※月・金曜担当。

「昼休みのお笑いバラエティー」として1989年開始。ニッポン放送の日中ワイド番組の中ではいちばんの長寿番組。「爆笑問題」の太田光や脚本家の宮藤官九郎、俳優の浅野忠信らが、ヘビーリスナーを公言。

※「radiko」も「ポッドキャスト」もインターネットラジオの一種。スマホやパソコンなどで番組を聴取でき、エリア外の放送を放送終了後に聴けたりもする(一部有料)。

取材・文/植木淳子

※女性セブン2025年3月20日号