
劇団四季の海外新作ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が4月6日、ついに開幕する。2月27日の稽古場取材会(神奈川・横浜の四季芸術センター)では、マーティ・マクフライ役候補の立崇(りす)なおと、笠松哲朗、ドク・ブラウン役候補の野中万寿夫、阿久津陽一郎らにより3シーンが初公開。劇団四季では超レアともいえる裏話が飛び出した。【前後編の前編】
チケットは9月まで完売
1985年の初公開から40周年を迎えたいまも、世界中で愛され続けている映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。ミュージカルコメディーとして再構築されたこの作品は、2020年にイギリスで上演されて以来、ロングランを重ねて米ブロードウェイにも進出。英国演劇界で最も権威のあるローレンス・オリヴィエ賞で最優秀新作ミュージカル賞にも輝いている。
さらに制作スタッフには、映画を手掛けた脚本家のボブ・ゲイルや監督のロバート・ゼメキスが名を連ねる。そんな話題作がいよいよ日本上演とあって、今年9月までの半年分のチケットは早々に完売というから、世間の期待の大きさがうかがえる。

劇団四季代表取締役の吉田智誉樹さんによると、市場調査では『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は映画版をオンタイムで見ていた50~60代だけでなく、20~30代の若い世代に至るまで、老若男女に愛されていたことが明らかになったという。
男性ファンが多いのも特徴で、これまであまりミュージカルに興味のなかった男性客をも見込んでおり、「男性トイレ(の混雑)問題をどうするか」(吉田さん)と、うれしい悲鳴をあげている。
アメリカンジョークやウイットで抱腹絶倒
今回、初めて公開されたのは、映画の中でも印象的だった3つのパート。
まずは、1985年から1955年にタイムスリップしてしまった主人公のマーティが、科学者のドクに助けを求めるシーンから。冒頭、ドクは何やら電話で投資話を持ちかけられているのだが、儲かるわけないと取り付く島もなく電話を切る。
ところがセリフをよくよく聞くと、相手はのちに世界的チェーン店となる、実在の某飲食店オーナーではないか!
みすみす大儲けするチャンスを逃してしまうドクに、思わず笑いが起こる。こんなウイットに富んだセリフの応酬と場面の連続で、見ている方はコメディーの沼にずるずると引きずり込まれていく。
この日は、マーティ役候補の立崇が赤いダウンベストにナイキのスニーカーという出で立ちで登場した。1985年は大流行していたものの、1955年当時の人々には奇妙に映ったダウンベスト。それゆえ、“沿岸警備隊と間違えられる”というおなじみのシーンも登場する。
今作の影響で、赤いダウンベストのブーム再燃もない話ではなさそうだ。

ドクとマーティの息の合った様子はもちろんのこと、アンサンブルが一体になったエネルギッシュなダンスも、ストーリーを大いに盛り上げる。イギリスの初演時から演出を務めるジョン・ランドさんも「これがミュージカルのあるべき姿」と話す。
劇団四季の俳優陣について、ランドさんは「あらゆる訓練を受けた経験値の高いパフォーマーたちで、非常にレベルが高い」と絶賛。なんと、前夜9時にもアンサンブルの練習風景が動画で送られてきたそうで、練習熱心さに驚いていた。

目の動きまでドクになりきり
続いて、もう一組の笠松(マーティ役)と阿久津(ドク役)が登場。白衣姿にゴーグルを掛けた阿久津は、眼光鋭い目の動きでもドクの“変人科学者”ぶりを熱演する。
マーティを未来に戻す計画が危うくなるなか、ドクが科学者としての誇りと夢を追い求める想いを歌い上げる。


50年代のダイナーで繰り広げられる歌とダンス
最後は、1985年ではヒルバレーの市長選に立候補しているゴールディ・ウイルソン(安田楓汰)が1955年当時ダイナーで働きながら夢を語り、マーティの父で気弱なジョージ(斎藤洋一郎)を励ますシーン。


初めて公開されたこの3シーンだけでも、笑いや驚きが満載。
【後編】では俳優陣らが明かす、必聴ポイントや見どころを紹介します!

取材・文/高城直子