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【幸せの買い方】幸福度を上げる“ご褒美”は「置き換え法」で見極める 何に幸せを感じたかを記録する「ハッピー・レコーディング」で幸せへの感度が向上

幸福度を上げる“ご褒美”は見極めることも大事になる(写真/イメージマート)
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「幸せ」は目に見えないもの。量を測ることも、どれほどの対価で得られるかを知ることも、人と比べることも難しい。だが、“目に見えないのだから買うことはできない”と決めつけてはいけない。正しいお金の使い道を知っていれば、それはすなわち「幸せを買う」ことになる。貧富や収入の差と諦めずに、「幸せの買い方」を知っておこう。【全3回の第3回。第1回から読む

「ハッピー・レコーディング」を続けると幸せへの感度が向上していく

幸せになるためにどうお金を使うべきか、その指標の一つになるのが「ハッピーマネーの法則」だ。節約・投資系ユーチューバーで節約オタクのふゆこさんが語る。

「カナダの心理学者エリザベス・ダン博士とハーバード大学教授のマイケル・ノートン博士が複数の社会心理学研究をもとに提唱した法則で、どんなことにお金を使えば幸福度を最大化できるかを明らかにしています」

ハッピーマネーの法則では、自分のための「ご褒美を買う」ことも、幸福度を上げると説いている。拓殖大学政経学部教授の佐藤一磨さんが語る。

自分へのご褒美は幸福度が上がる(写真/PIXTA)
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「幸福研究によると、自分がほっとしたり、癒されるための出費も重要。例えば“1週間がんばった自分のために、金曜日の夜はスイーツやお酒を買う”など、ちょっとしたご褒美でかまいません。また、こうした投資は、やめてしまうと幸福度が下がると考えられています」

ただし、ストレス解消のためのご褒美はNGだ。

「ストレス解消のためにお金を使っても、それはマイナスがゼロになっているだけで、幸せになったわけではありません。それどころか、ストレスで判断力が下がっているときは“売りたい側の戦略”に乗せられて、浪費してしまうことも多い。ストレスがたまるたびにお金を使っていては、幸せにはなれません。ストレスはお金ではなく、生活習慣などで解消すべきです」(ふゆこさん・以下同)

いくらご褒美が幸せにつながるからといって、何かにつけて自分を甘やかしていては、お金は減る一方。繰り返すうちにご褒美の幸せにも慣れてきてしまうだろう。ふゆこさんは毎週土曜日だけ、自分に甘いものを許す。100円のチョコレートやコンビニのアイスクリームなどでは妥協せず、あえて奮発して洋菓子店で500円ほどのケーキを買うことが多いという。

「毎日14時頃になると甘いものが食べたくなるので、iPhoneのリマインダー機能を使って“スイーツは毎週土曜日に!”という通知が出るように設定して、土曜日を楽しみに1週間を乗り切っています。ちょっとお金をかけることで満足感が格段に上がるので、土曜日以外につい甘いものを買ってしまうことがなくなり、結果的に節約にもつながっています」

どれだけお金をかければいいのか迷ったときは、ふゆこさんの提唱する「置き換え法」を。

幸せだけを買えるようになる「大好物置き換え法」
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「つけ麺が大好きなので、欲しいものができたときはいつも“この値段で何回つけ麺が食べられるだろう”と、金額を置き換えて考えるのです。例えば、つけ麺1杯を約1000円とすると、5000円の服が欲しくなったら“これでつけ麺が5回食べられる”。れなら、つけ麺の方がうれしいと感じたら、買うのをやめます。

キリのいい金額のものなら何でもいいので、自分にとって幸福度が高くて値段が手頃な基準を1つつくっておくと、日頃の小さな買い物を決断する際に役立ちます」

基準を設けるには、自分の好きなことや好きな食べ物など、何に幸せを感じたかを記録しておく「ハッピー・レコーディング」が役に立つ。幸福学研究者の前野マドカさんが語る。

「幸せは、自分を知ることから始まります。どんなときにうれしくなり、ワクワクできるのかを書き留めて知っておくだけでも、自分にとって本当に価値のあるものを見つける力がつき、幸せへの感度が上がります。

何かモノが欲しいときも、モノ自体ではなく、本心はそれを通して得られる体験や感情を欲していることも少なくありません。“何が欲しいのか”ではなく“何がしたいのか”と自分に問いかけることも大切です。すると、自ずと『モノ消費』より『コト消費』が増え、より幸福度が上がるお金の使い方になるかもしれません」

なるべく早く「幸福への投資」を始める

最新の研究では、一定の収入を超えると幸福度が上がらなくなるのは「もとは不幸だった人」で、「もともと幸せな人」は、年収とともに幸福度はずっと上がり続けることがわかった。これについて、佐藤さんが分析する。

「もともと幸福度が低いのは、不健康や不安定な雇用、そして孤独といったネガティブな要素を抱えている人が多いのではないでしょうか。そうした人は所得が増えることで抱えていた不幸から脱し、一時的に幸福度が急上昇しますが、健康状態や孤独は、お金だけで完全に解決することは難しい場合が多い。このため、一定の収入を得た時点で幸福度が伸びなくなると推察します」(佐藤さん・以下同)

だからこそ、健康や人とのつながりにお金を使うことが「幸せを買う」ことに直結しているのだ。

いまあるお金だけでも、幸せは買える(写真/PIXTA)
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加えて、資産額や持っているモノなどを他人と比較しないことも重要。他者との比較は、どれだけお金を持っていても幸せを遠ざけるからだ。

「人は自分を他人と比べたときの相対的な地位で、幸せと不幸を感じます。たとえ一般的には高所得といわれる年収1000万円を稼いでいても、周囲の人が同じくらい稼いでいると、幸福度は低くなることがわかっています。

SNSを介して他人の暮らしを簡単に覗けるようになったいま、自分と他人を比較して自ら幸福度を下げている人も多いでしょう」

大切なのは、幸せになることを諦めず、なるべく早く「幸福への投資」を始めることだ。

「いまから効果的にお金を使って“幸せを稼ぐ”ことで、残りの人生はどんどん幸せになるはず。いま60才なら、健康寿命まではまだ15年以上、充分な時間があると思います」(ふゆこさん)

お金を使って購入した衣服や家電、スイーツの先にどんな幸福が得られるか。金額ではない豊かな使い方ができてこそ、幸せはやってくる。

(第1回から読む)

※女性セブン2025年3月20日号

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