
本場の味を知る人からジワジワ人気が高まっているのが、韓国の伝統酒・マッコリ。本来のマッコリは素材由来の自然の甘さがあり、生ならではの発泡感が味わえる。日本に居ながらにして、本物の味を楽しめるようになってきたマッコリの知られざる魅力を徹底紹介する。
本物のマッコリは甘くない!腸活効果抜群!
1917年に自家醸造が規制されるまで、韓国では、マッコリは家庭で作られるのが当たり前だったという。
「米マッコリは腹持ちがよく農酒として親しまれていた大衆向けの酒で、自家製を楽しむキムチのような存在でした」(韓国農水産食品流通公社 本部長・尹 祥榮さん・以下同)

本来は加糖せず殺菌しない生を味わう
日本で知られているマッコリは、甘くてマイルドな口当たり。これは甘味料などで甘みを足し、加熱して発酵を止めているから。
「本物は米本来のほのかな甘みと酸味、発酵特有の微炭酸を感じます。酵母が生きている生マッコリは、瓶内でも発酵が進むため、賞味期限は10日ほどと短く、冷蔵保存が必須です」
韓国では地域ごとに特色がある
主な原料は米、水、麹。水や使用する麹が地域ごとに異なるため、日本の地酒のように土地によって味わいに違いがある。
「また、賞味期限が短く長距離の運搬が難しいため、各地域のマッコリはその土地まで足を運んで飲むのが主流です」
乳酸菌と酵母が生きているから腸活に◎ 栄養素が豊富で健康効果も
加熱殺菌していない生マッコリは、乳酸菌が腸内の細菌バランスを整え、酵母が免疫力をアップ。また、ビタミンBやC、食物繊維なども含むため、高血圧や糖尿病予防に効果があるといわれている。
韓国ではマッコリとチヂミはセット
「韓国では『雨が降ったら、マッコリを飲みチヂミを食べる』という習慣があります。いわれは諸説ありますが、農業が主流だった時代は雨が降って作業ができないとき、簡単に作れるチヂミとマッコリで気分を晴らしたという説。また、雨が降るときのパチパチという音がチヂミを焼く音に似ているから、という説が言われています」
韓国通が教えるマッコリに合う料理
フードスタイリストの久保百合子さんと竹内万貴さんから、それぞれおすすめの料理を教えてもらった。
「マッコリがおいしい店はキムチも間違いない!」
「韓国でマッコリのお店に行くと必ず注文するのが『豆腐キムチ』。キムチを炒めて、温かい豆腐と食べる料理です。マッコリにこだわりのある店は、キムチもしっかり熟成しています」(久保さん・以下同)



酸味のあるマッコリには風味の強い食材が合う
「セリのナムルやうなぎの白焼きなど、ややクセのある料理も、しっかり酸味が効いていて自然な甘みのあるマッコリは受け止めてくれます。意外に相性がよかったのが栗。栗で作ったマッコリもあると聞き、納得でした」(竹内さん・以下同)



エンタメの中のマッコリ
韓国エンタメに精通するライターの渥美志保さんが教える、マッコリにちなんだドラマもチェック!
「シンデレラのお姉さん」( U-NEXTにて配信中)
マッコリの造り酒屋が舞台。童話の『シンデレラ』を姉目線で再解釈している。
「義理の父・デソンから初めて父親の愛を受けたウンジョが、彼の死後、祭壇の前で『お父さん』と呟き、マッコリを注ぐシーンは号泣ものです」(渥美さん・以下同)

「花が咲けば、月を想い」(U-NEXTにて独占配信中)
禁酒令下の朝鮮王朝時代、密造酒業を行う力強いヒロインと家門を背負う役人のロマンス時代劇。
「密造チームが一仕事を終え、みんなで乾杯するシーンがチームの絆を感じさせます。ゆずを搾って飲むマッコリがなんともおいしそう」

「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫」(U-NEXTにて配信中)
恋愛や人生に奮闘するアラサー女子3人組を描く。「主人公の1人の脚本家デビューを祝い、家族が親類縁者を招いて開くパーティーの主役がマッコリ。老若男女が集まってワイワイ騒ぐ楽しいイベントなら、お酒はマッコリがお決まり」

日本でも買える本物マッコリ
・300年続く蔵元の和マッコリ『虎マッコリ』
日本酒造りの技術を活かし、こだわりの米麹で作るマッコリは和食との相性抜群。

・甘さ控えめさらりとした後味『円頓寺マッコリ』
清酒と呼ばれる上澄みまで味わう。醸造所では料理も楽しめる。

・米由来の甘さと濃厚な味わい『ギョン濁酒 12度』
歌手のソン・シギョン氏が開発に携わったマッコリは「大韓民国酒類大賞」を2年連続受賞。※『ギョン濁酒』のギョンは、正しくは王へんに竟

・人気シリーズから辛口が登場『ボクスンドガ(福順都家)スーパードライ』
発酵過程で自然に出る果実のような香り、味わいを楽しめる。

◆教えてくれたのは:韓国農水産食品流通公社 本部長・尹 祥榮さん

1999年設立の政府機関。韓国の食文化の発信や貿易振興活動などを行う。韓国の本場の味を伝えるイベントも多数行っている。
◆教えてくれたのは:ライター・渥美志保さん
韓国エンタメに精通し、釜山映画祭には20年以上通う。著書に『大人もハマる!韓国ドラマ 推しの50本』(大月書店)がある。
撮影/玉井幹郎 取材・文/勅使河原桜