
ここ数年、ブームになっているのが盆踊りだ。ライターのオバ記者こと野原広子(68歳)も盆オドラーの1人。オバ記者が自身の盆踊り経験とその魅力について綴る。
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盆踊りの練習会に参加
夏祭り、盆踊りブームが再び来る? いやもう来ている? コロナ禍でなんとなく下火モードだったのが一昨年あたりから盛り上がってきていて、私の住んでいる神田でも神田祭のポスターがあちこちに貼ってあるの。
神田? 聞いてねーよ? いやいやいや、神田という町名は32もあって私が住んでいるマンションは「へぇ、あそこも神田なんだぁ」といわれるくらいの端っこだけどね。それにしてもポスターの文字のかっこいいこと! ご近所の仲良し、ミヤちゃんに言うと「NHKの大河ドラマ、『光る君へ』の題字を書いた根本知(さとし)さんって人の字だそうよ」と教えてくれたの。
そもそも神田祭は江戸三大祭り、神田明神のお祭りで2年に1度開催されて今年はその年、と言っては見たけれどどうにも居心地が悪い。だって私、東京に50年住んでいるけど自分を江戸っ子なんて思ったことないもの。あくまで茨城からの出稼ぎ労働者よ。
そんな私に「盆踊りの練習会があるから行きませんか?」とLINEをくれたのが江戸っ子ミヤちゃんだ。ミヤちゃんの別名は盆オドラー。知り合った区のスポーツセンターではそう呼ばれていたの。聞いたら4歳から近所のおばちゃんにくっついて盆踊り会場を回っていたんだって。

盆踊り大会に参加して涙が止まらなくなった
だけど考えてみたら私が神田に住むキッカケって盆踊りなんだよね。ここの前に住んでいたのは日本橋浜町で、夏の終りに出来心で浜町公園の盆踊りの輪に入ったら、泣けて泣けて涙が止まらなくなったの。あの感情はいまだに説明できないんだけど、フレアスカートをはためかせて楽しそうに踊る老女の『ダンシング・ヒーロー』とか、麻の浴衣をキリリと着こんだ下町旦那の『銀座カンカン娘』とか、たまらなかったの。
諸般の事情で翌年に浜町から引っ越すことになったけど、その時に真っ先に考えたのが、またあの踊りの輪に入りたい。それで浜町公園に浴衣で行ける範囲を探して探して、やっと見つけた手頃な物件が神田の端っこだったの。だから夏になると浴衣を着込んで浜町公園はもちろん、築地本願寺や日比谷公園の大盆踊りにも参加したのよ。
が、しかし、問題はここからなの。ちゃんと踊れるのは炭坑節だけで東京音頭も大盛り上がりの『ダンシング・ヒーロー』もごまかしごまかし。それでも楽しいけどちゃんと踊れたらどれほど楽しいか。とそう思っていたところだったからミヤちゃんの誘いはまさに渡りに舟よ。昨年のべったら市の盆踊りで仲良くなったミユキさんにお願いして後ろ姿でポーズを決めてもらったけど、この形にスッとなるのがすごい。私なんか手足バラバラで一曲とて「いけたか?」にもならなかったもんな。

講習会が終わって声をかけたのは?
練習会が終わった時、声をかけずにいられなかった人がいる。なんたって日本髪を結っているんだから。「今日はどこかで髪を結ってからきたんですか?」と聞くと「いえ、髪を結ったのは1週間前で、今日は会社帰りです。IT企業に勤めています」って、おいおい!(笑)
聞けば年中、日本髪に着物の人として何度もテレビに取り上げられている布留川真紀さんでした。練習会に集まった人の三分の一が着物、または着物風の人だったけれど、布留川さんが混じると一気に江戸にワープするんだよね。

しかし盆踊りはちゃんとやろうとすると、まぁ手強いよ。昼に教えられた振り付けを夜のステージで踊るのが当たり前だったと、元ジャニーズの人が言っていたけど考えられない! 別の星の人だって!
それでも未知の領域に足を踏み入れるのは面白いから、愚鈍に一歩ずつ前進する。今年は曲名を聴いたらそく身体が動くようになってやる! と、そう自分を鼓舞したのでした。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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