
「調理法がマンネリ」「後片付けが面倒」などの理由で敬遠しがちな魚料理。そんな悩みをすべて払拭するのが、驚くほど簡単なのに魚本来の味が堪能できる、いま、激推しの調理法「湯煮」だ。料理研究家のしらいのりこさんが教えてくれた基本のやり方をチェック。そして、フードスタイリストのダンノマリコさんが提案する丸生魚や干物を使ったレシピに挑戦しよう。
基本の「湯煮」
切り身なら最速5分で火が通る。ポイントは“沸騰させない”だけ。
「アレンジもしやすい、注目の調理法です」(しらいさん・以下同)
【1】魚に塩を振る

バットなどに薄く塩を振り魚の切り身を置いたら、上からも塩を振る。
「塩味をつけるためではないので、塩は少量でOK」

10分ほどおき、出てきた水気をキッチンペーパーなどで拭き取る。
「魚のくさみが取れ、旨みの流出も防げます。塩鮭や干物など、すでに塩が当ててある魚には不要です」
【2】沸騰しない火加減で煮る

鍋やフライパンに魚がひたるくらいの湯(直径26cmのフライパンなら水4カップが目安)を沸かし、日本酒大さじ2を加える。
「酒の有機酸が魚のくさみを分解」

魚を加えたらすぐに火を弱め、沸騰しない火加減で5~7分煮る。
「100℃以上になるとたんぱく質が凝固して身が硬くなり、旨みも流れ出てしまうので、絶対沸騰させないで!」


加熱中にアクが出たら除く。
「さばなど脂が多い魚は入れた瞬間、湯が濁ります。再び湯が透明になったら火が通った合図」
【3】取り出して水気をふく

静かに取り出してキッチンペーパーで水気を拭き取り、好みのたれなどをかける。
「冷めても硬くならないので、お弁当にもおすすめです」
安い魚もしっとりプリプリに仕上がる
「干物は塩を振る下準備が不要なので、より手軽に湯煮ができますね」とダンノマリコさん。
「安い干物や脂ののりがイマイチな魚も、湯煮にすればプリプリ、ジューシーに仕上がります。干物特有の風味が気になるときは、たれに薬味や酸味をきかせるといいですよ」(ダンノさん・以下同)
丸生魚、干物も湯煮で生まれ変わる
「丸魚は小さめを選ぶと火が通りやすいですよ」
「いわしのレモン&オリーブオイルがけ」のレシピ
くさみのないさわやか味でいくらでも食べられる!
《作り方》(2人分)
【1】いわし4尾は塩小さじ1をまぶして10分おいたら、水で塩を洗い流す。
【2】フライパンに湯を沸かし、白ワイン大さじ2、【1】を入れたら基本の湯煮通り4〜6分煮て取り出し、水気を拭き取る。
【3】【2】を器に盛り、塩適量を振り、国産レモンの薄切り4枚をのせてオリーブオイル適量を回しかける。バゲットの薄切り適量を添える。
「めばるのチョリム風」のレシピ
切り込みを入れて食べやすく。煮魚風も簡単に失敗なくできる。

《作り方》(2人分)
【1】めばる2尾は両面に3か所ずつ切り込みを入れ、塩小さじ1をまぶして10分おいたら、水で塩を洗い流す。
【2】フライパンに湯を沸かし、酒大さじ2、【1】を入れて基本の湯煮通り5〜7分煮る。6cm長さに切った万能ねぎも加え、さっとゆでる。
【3】しょうゆ・酒・ねぎのみじん切り各大さじ1、コチュジャン・ しょうがのみじん切り各大さじ1/2を耐熱容器に入れて混ぜ合わせ、ラップをふんわりとかけて電子レンジ(600W)で40〜50秒加熱する。
【4】水気を拭き取った【2】を器に盛り、【3】をかける。
《Point》
丸魚は頭と内臓を除いたら、腹の中まで塩をまぶし、10分おいて洗い流す。
「身の厚い丸魚は、中骨と上下のひれの上3か所に両面切り込みを入れると、食べるときに身がほぐれやすく、火も通りやすくなります」
「あじの干物たたき風」のレシピ
あじのたっぷりの旨みを薬味が引き立てる。

《作り方》(2人分)
【1】あじの干物2尾は塩をせず、酒大さじ2を入れた湯で基本の湯煮通り5〜7分煮て取り出し、水気を拭き取る。
【2】【1】を皮目を下にして器に盛り、玉ねぎの薄切り1/4個分、にんにくの薄切り小1/2片分、万能ねぎの小口切り適量をのせ、ポン酢しょうゆ適量をかける。
「かますの干物サルサがけ」のレシピ
淡白なかますをスパイシーなサルサで洋風に。

《作り方》(2人分)
【1】かますの干物2尾は塩をせず、白ワイン大さじ2を入れた湯で基本の湯煮通り7〜10分煮て取り出し、水気を拭き取る。
【2】ボウルにトマト中1個、玉ねぎ1/6個、ピーマン1/2個、にんにく1/2片をみじん切りにして入れ、レモン汁・タバスコ各小さじ1を加えて混ぜ、塩適量で味を調える。
【3】【1】を皮目を下にして器に盛り、【2】をかける。
「ししゃもの干物梅風味マリネ」のレシピ
頭も中骨も驚きの食べやすさ!作りおきにもおすすめ。

《作り方》(作りやすい分量)
【1】ししゃも12尾は塩をせず、酒大さじ2を入れた湯で基本の湯煮通り4~6分煮て取り出し、水気を拭き取る。
【2】保存容器に梅肉小さじ1、米酢・砂糖各大さじ1、しょうがの薄切り5〜6枚、せん切りにした大葉3枚分・みょうが2個分を混ぜ、【1】を漬ける。
※漬けてすぐから食べられるが、おくと味が染みる。冷蔵で3〜4日保存可。
「ほっけの干物ピリ辛山椒オイルがけ」のレシピ
旨みが増したほっけとピリッと山椒のきいたたれが合う。

《作り方》(2人分)
【1】ほっけ1尾は頭がついている場合は切り落とし、塩をせずに酒大さじ2を入れた湯で基本の湯煮通り7~9分煮て取り出し、水気を切る。しめじ小1パックもほぐして加え、煮る。
【2】【1】のしめじの水気を切り、斜め薄切りにしたねぎ5cm分、しょうがのせん切り適量、しょうゆ・粉山椒・サラダ油各小さじ1、塩少量と和える。
【3】【1】のほっけを皮目を下にして器に盛り、【2】をのせて、好みでラー油適量をかける。
◆教えてくれたのは:フードスタイリスト・ダンノマリコさん

日本各地の漁港や市場を訪ねて取材し、魚のおいしさを発信。『フライパンひとつで魚のごちそう』(青春出版社)他、魚料理の著書も多数。
撮影/鈴木江実子 スタイリング/三谷亜利咲 協力/UTUWA
※女性セブン2025年4月24日号