
年をとるにつれ、人や物の名前が覚えられなくなったり、思い出せなかったり。「年だから物忘れは仕方ない」と放っておくと、実は認知症だったというケースも。専門家にアンケートを実施し、脳の老化を遅らせる食品と習慣をランキング化。今日からさっそくはじめよう。
9名の専門家を紹介
以下6名の「医療の専門家」と3名の「栄養の専門家」に「脳の老化を予防する食品と習慣」をそれぞれ挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。10位以内の回答を掲載した。
内野勝行さん(金町駅前脳神経内科院長)、遠藤英俊さん(いのくちファミリークリニック院長)、奥村歩さん(おくむらメモリークリニック理事長)、佐野こころさん(医学博士)、清水加奈子さん(管理栄養士)、中沢るみさん(管理栄養士)、松村圭子さん(成城松村クリニック院長)、望月理恵子さん(管理栄養士/健康検定協会理事長)、山本佳奈さん(医療ガバナンス研究所内科医)
いまや国民病の認知症
大手製薬会社のエーザイは今年2月、2023年9月に承認された世界初の認知症治療薬『レカネマブ』の投与患者数が国内で6800人に達したと発表。「順調に浸透している」との見解を示した。
昨年5月に厚生労働省が公表した資料によると、認知症患者数は2025年は471.6万人、2030年には523.1万人にのぼると推計され、高齢者の14%を占める見込みだ。脳の老化が進行し機能が低下することで発症する認知症は、いまや国民病になりつつある。
だからといって「加齢現象だから仕方がない」「なってしまったら薬をのめばいい」と考えるのは、早まった思い込みかもしれない。脳神経外科医の奥村歩さんは「個人の行動によって認知症は予防することができます」と言う。
「認知症は脳細胞が破壊されて記憶力や判断力が衰えていきます。しかし、最新の研究で、認知予備力を高めることで最大45%も認知症が減らせることがわかってきました」(奥村さん)
薬頼みではない、専門医と食のプロが選んだ今日からできる「食」と「習慣」の、具体的な脳の老化予防の方法を見ていこう。
食べて予防の認知症対策食品
脳の老化を防ぐ食品として、2位の「ナッツ類」にダブルスコアをつけ1位に選ばれたのは「青魚」だ。

「さばやいわしなど青魚には良質な脂であるEPAとDHAが豊富に含まれています。どちらも抗炎症作用があり神経細胞や血管を保護し、血流をよくして脳の機能を保つ働きがあります」(金町駅前脳神経内科院長・内野勝行さん)
老化を防ぎ、動脈硬化を予防するなどの働きがある抗酸化作用を理由にランクインしたのが5位の「ターメリック」。カレーには欠かせないスパイスだ。
「ターメリックの色素成分である『クルクミン』は強い抗酸化作用を持ち、神経細胞を傷つける活性酸素を除去する働きがあります。
週に1回カレーを食べると、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβの蓄積を、最大50%ほどに減らすという研究もあります」(いのくちファミリークリニック院長・遠藤英俊さん)

毎日の食事に欠かせない主食からは、6位「発芽玄米」、9位「白米」の2つが挙がった。
「65才を過ぎると食が細ることで体重が減少しはじめます。やせると認知症を含めて病気になりやすく、寿命が短くなるというデータがあります。糖は脳のエネルギー源なのでしっかり食べましょう」(奥村さん)
白米と発芽玄米の違いは、GABAの含有量の差だ。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「発芽した玄米に多く含まれるGABAはアミノ酸の一種で、神経伝達物質であり、脳の記憶力や空間認知能力の低下を防ぐ働きがあります」

寝ることで有害な物質を洗い流す
認知症対策では日々の行動も大事だ。識者たちが最も推し、1位になったのが「充分な睡眠」だ。
マドリード大学の調査では、平均睡眠時間が7時間の人と比べて6時間以下の人は36%も認知症リスクが上がるという結果が出た。医療ガバナンス研究所の医師である山本佳奈さんが解説する。
「アルツハイマー型認知症の主な原因は脳にアミロイドβが蓄積することです。脳はアミロイドβを睡眠中に掃除するので、睡眠時間が不充分だとアミロイドβがたまっていくことになります。日中に眠くならない状態が、適切な睡眠時間です」

2位以下で多かったのは「体を動かすこと」と、「他者とのコミュニケーション」の2種類だ。遠藤さんは、これらを組み合わせるとさらに効果的だと話す。
「有酸素運動と知的活動を組み合わせるデュアルタスクがいちばん効果的。
また、できれば生涯現役で週に2、3日仕事を続けるのがおすすめ。話しながらの散歩や、ゲートボールなど、他人と一緒にする運動も有効です」
身体活動と知的活動の組み合わせで特に票が集まったのが2位の「料理」だ。成城松村クリニック院長の松村圭子さんは、料理には認知症対策の要素が満載だと絶賛する。
「料理はレシピの選定、買い物、調理と常に考えて脳を使ううえに、調理中は体を動かし続けるので運動にもなります。新しいレシピへの挑戦や料理のアレンジをすれば、新しい刺激となってさらに脳の活性化を促せます」

そして、意識することですぐに実践できるのが7位の「笑う」こと。内野さんが話す。
「笑うことでドーパミンが分泌されて脳が活性化されます。実際には口角が上がるように割り箸をくわえるだけでも同じようにドーパミンが出るので、無理に笑わずともトレーニングは可能です」
ドーパミンが不足すると意欲が低下するので、笑えていないと思ったなら、まずは口角を上げてみよう。
認知症対策も一歩一歩、できることを生活に取り入れて、いつまでも衰えない脳を手に入れよう。
※女性セブン2025年3月27日・4月3日号