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老後を安心して過ごすために…公的年金に上乗せする“自分年金” 貯めるのが苦手な人向けの「個人年金保険」と自営業やフリーランスにおすすめ「iDeCo」 その特徴を解説 

老後を安心して過ごすための個人年金・iDeCo・新NISAなどの特徴とは(写真/PIXTA)
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止まらない物価高に、追い打ちをかけるような値上げ、さらには“トランプショック”と、経済の先行きはますます不透明だ。食品やサービスだけでなく、医療費の値上げも続き、老後不安は増すばかり。年金の給付水準が年々減少する中、頼れるのは自ら運用する「自分年金」だ。

世界中が注目した再選から約5か月、アメリカのトランプ大統領が次々と打ち出す“前例のない関税政策”によって、世界で株安の連鎖が起き、株価は乱高下を続けている。動揺を隠せないのは、1年前から新NISAを始めたという会社員のAさん(46才)だ。

「老後資金が心許ないので、新NISAで投資信託を始めました。年明けまでは順調に含み益があったのに、トランプの関税政策が発表されて以降、価格が下がり続け、マイナスが出ています。食品や燃料費の値上げも止まらないし、お金を貯めるのも難しい。老後が不安で仕方ありません」

トランプショックで株式市場に大打撃(時事通信フォト)
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そもそも、2024年1月にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)が瞬く間に口座開設数を増やし一大ブームになったのも、老後資金に不安を抱える人が多かったから。その一端は“改悪”され続ける公的年金制度にもある。昨年行われた財政検証では将来的に給付水準が2割ほど目減りする見通しが示されたほか、物価上昇を鑑みれば受給額は減っているという指摘もある。

そんななか、老後資産をつくるひとつの方法として注目されているのが、「じぶん(自分)年金」だ。ファイナンシャルプランナーの横川由理さんが解説する。

「年金には国が運営する公的年金(国民年金と厚生年金)と、企業や個人が導入、加入する私的年金があります。私的年金、いわゆる自分年金を活用すれば、こうした公的年金に“上乗せ”することができるため、老後をより安心して過ごすことが期待できるのです」

金利上昇で加入者が増えている「個人年金保険」

自分年金には、確定拠出年金(企業型・個人型)や、民間の個人年金保険などが挙げられる。いずれも自分で設定した金額を運用しながら積み立てていくが、個人型確定拠出年金(iDeCo)が国の制度であるのに対し、個人年金保険は民間保険会社の商品となる。

「個人年金保険は、保険会社に毎月の保険料を一定期間払い込み、満了すると、一定期間もしくは終身にわたってお金を受け取ることができます。

主に国債で運用するため、マイナス金利時代には利益が見込まれず商品の販売がストップされたこともありましたが、金利上昇によって販売が再開されて、加入者も増えています」(横川さん)

個人年金保険は、公的年金に上乗せして老後を生活を補う私的年金(写真/PIXTA)
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ファイナンシャルプランナーの飯村久美さんによると、個人年金保険に向いているのは、「自分で貯めるのが苦手な人」「運用するのが難しい人」だという。

「契約時の利率で運用する『定額』型を選択すれば、契約時に、支払う月額と将来的にもらえる金額がはっきりわかるので、資産形成のプランを立てやすく将来の受給額のめどがつきます。満期まで払い込むと基本的に元本割れしないことも大きな特徴です。

一方で、将来の物価上昇に備えて、お金を増やしたい人は『変額』タイプを選択する方法もあります。運用成果により、受け取れる額が変わりますが、自分で運用商品を選び、長期間運用していきます」(飯村さん)

iDeCoの「税制優遇」の注意点

一方、自営業やフリーランスで公的年金が基礎年金のみしか受給できないなら、iDeCoがおすすめだと言うのは横川さんだ。

「夫婦ともに自営業ならば年金収入は年間83万円しかないので、安定運用の個人年金ではなくiDeCoや新NISAなどで少しリスクをとった運用をした方がいいでしょう」

iDeCoは税制優遇がメリットとして挙げられているが、すべての人がその恩恵にあずかれるわけではない。

「掛金の全額が所得控除となり、運用益は非課税、将来受け取る際にも税額控除があります。ただし、専業主婦やパートなどで収入が少ない場合などいわゆる“160万円の壁”を超えていない場合には掛金の所得控除は受けられません。

また、年金には公的年金控除がありますが、そこを超えた分は課税対象となります。会社員や公務員は、iDeCoからお金を受け取ることで課税対象となるケースがある。基礎年金しか受給しない自営業者やフリーランスなら、その心配は大きくありません」(横川さん)

40代で加入すれば年金繰り下げでも安心

個人年金保険とiDeCoは、受け取り方にも違いがある。個人年金保険は契約時に定めた払い込みを終了して一定期間が経過すれば50代から受け取れる商品もあるが、iDeCoは原則として60才以降にならないと受け取れない。

「個人年金保険も基本的には老後に受け取るものとして多くの商品が10〜15年の期間を想定しているため、40代から加入することが理想。一方、60才からでも入れる商品もあるものの、短い期間で年金を多くもらうには、毎月の保険料が高くなってしまいます」(飯村さん)

実際に、いまからいくら払えば、将来どのくらいの年金をもらえるのか。一例として、「かんぽ生命」の「長寿支援保険」に、50才女性が加入する場合で試算してみよう。

15年間、月額4万4310円、総額にして約798万円の保険料を支払うと、65才から最大30年間、年30万円、総額900万円の年金を受け取ることができる。元本より102万円多く、45年間での運用益は約13%だ。ただし早期に死亡すると、支払った保険料の方が高くなると横川さんは指摘する。

「早期死亡に対する損失を回避するために、個人年金への加入は早い方がいい」

40才で加入し、55才で払い込みを終えれば、公的年金の受給額を繰り下げてもその期間の経済的支えになる。飯村さんも続ける。

「個人年金保険にも節税メリットがあり、10年以上払い込むなど要件を満たすと『個人年金保険料控除』として所得控除が受けられます。40代前半までにスタートして、少なくとも15年以上は運用しましょう」

個人年金・iDeCo・新NISAの違いとメリット、デメリット
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※女性セブン2025年5月1日号

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