
体が発するにおいに敏感な日本人。すべての人間は常に何かしらのにおいを放っているため、気にしすぎる必要はないが、注目したいのは“普段と違うにおい”。原因を探ると、意外な病気が隠れているかもしれない――。肌・頭皮や、わきからのにおいの原因や対策、ケア法を紹介する。
肌・頭皮からのにおいの原因《加齢臭》
「体の表面には、汗を出すエクリン汗腺とアポクリン汗腺、油脂成分(皮脂)を分泌する皮脂腺の3つの外分泌腺があり、加齢臭に関係しているのは、このうちの皮脂腺です」とは、皮膚科医の佐々木良輔さんだ。
皮脂腺は本来、皮脂を分泌して皮膚をやわらかく保つなどの役目を担っているが、年齢を重ねるにつれて、皮脂にパルミトレイン酸という脂肪酸が増え始める。これに酸素や酸化した脂質である過酸化脂質などが結びついてできるのが「2-ノネナール」という物質。これこそが加齢臭のもとになる。
「加齢臭は古くなった油や枯れ草のようなにおいで、頭皮や耳の後ろ、首筋、背中、胸など、皮脂腺が多い部位から発生します。気になる場合は、この部分をよく洗うようにしましょう」(佐々木さん・以下同)
枕や下着などの布製品にもにおいが移りやすいので、柔軟剤の香りでごまかすのではなく、こまめな洗濯で皮脂を洗い流し、漂白剤などで消臭を。



肌・頭皮からのにおいの原因《汗臭(酸化や細菌の増殖)》
汗はエクリン汗腺とアポクリン汗腺から分泌される。体の不快なにおいを表現するのに、「汗臭い」という言葉がよく使われるが、エクリン汗腺から出る汗はほぼ無臭だという。
「汗がくさく感じるのは、皮膚表面に存在する細菌(常在菌)と汗が反応してにおいが生じるからです。頭皮の場合は皮脂腺から分泌された皮脂が酸化するせいでもあります」
一方、アポクリン汗腺から出る汗にはフェロモンの成分が含まれるため、においがある。
「これによって異性を引きつけたり、仲間であることを認識し合ったりします。強いにおいでも、かぐ人によってはいいにおいに感じられるのが特徴です」
汗臭の対策としては、入浴時に石けんやシャンプーで充分に汚れを洗い流すこと。日中のケアとしては、香水などでごまかそうとせず、ふき取りシートなどで肌や頭皮をこまめにふき、においの原因である汗を放置しないことが大切だ。
わきからのにおいの原因《多汗症》
「エクリン汗腺からの汗は多量でも、あまりにおいはしません。不快なにおいがするとしたら、ぬれたまま長時間放置することで細菌が繁殖したり、ムレた衣服に雑菌が増えたりしたせい。こまめに汗をふき、着替えることで解消できます」(佐々木さん・以下同)

わきの下などに過剰な汗をかく場合は、多汗症の可能性も。皮膚科などを受診すれば、塗り薬やのみ薬などで汗の量を減らせる。
「保険適用外治療ですが、ボツリヌス菌が作るたんぱく質『ボツリヌストキシン』を注射すると汗の分泌を抑えられます」
わきからのにおいの原因《腋臭症(わきが)》
エクリン汗腺と違い、アポクリン汗腺から分泌される汗は、腋臭症(わきが)の原因に。腋臭症はアポクリン汗腺の数が多い人に発症し、鼻にツンとくる独特のにおいを発する。ただ腋臭症の日本人はそれほど多くなく、皮膚科や形成外科を受診しても腋臭症でないケースがほとんど。
「治療法としては、患部を切除する手術やアポクリン汗腺をレーザーで焼く照射系治療法などがあります」
わきからのにおいケアグッズ
これからの季節の必需品!わきの汗とにおい対策になるケアグッズを紹介する。
ジェルタイプのわき用美容液
「爽やかデオセラム」30g1650円(5月22日発売予定・数量限定、ハーバー研究所)は、ひんやりジェルがパウダーに。清涼感のあるミントの香り。

毛穴まで塗り込む制汗パテ
「8×4デオドラントパテ」25g1540円 医薬部外品(ニベア花王)は、ニオイ菌を殺菌して1日ずっとにおわせない。

◆あつた皮ふ科・美容皮膚科クリニック・理事長、院長・佐々木良輔
皮膚科医。日本皮膚科学会専門医。2015年、現クリニック(旧あつた皮ふ科クリニック)を愛知県名古屋市に開業。
取材/上村久留美
※女性セブン2025年5月8・15日号