
加齢による眼精疲労や老眼が重なって、肩こりや頭痛などに悩まされる人は多い。また、白内障や緑内障などのリスクも増加。そして、それらを助長するのがスマホ使用による疲れ目やドライアイだ。いつまでも見える目を維持するために何をすべきか? 専門家に聞いた。
目の命は短く、50代で寿命を迎える
50才を過ぎると目の不調が急激に進みやすくなる。その理由を眼科専門医で医学博士の深作秀春さんが説明する。
「閉経後、女性ホルモンが減少すると目の水晶体が硬くなるため老眼が急激に進みます。加齢により眼球組織の成分である『膠原線維』が劣化すると、網膜剝離などの疾患が起こりやすくなります」
また、眼科医の佐藤香さんは、体全体の潤いが不足することで、50代以降はよりドライアイになりやすいと話す。

「女性ホルモンは体の粘膜を潤す働きがあるため、減少すると目の表面が乾き、涙が出づらくなりドライアイが進みます。ドライアイになると目の表面が傷つきやすくなって、ピントの調節機能もうまくいかなくなり、老眼がますます進行します」(佐藤さん)
しかも、目の寿命は「思ったよりも早く来る」と深作さんは警鐘を鳴らす。
「最近は医学の進歩により体の寿命が100才近くまで延びていますが、目の命は短く、50代で寿命を迎え、多くの疾患が起こりはじめます。目にやさしい食事と習慣を心がけるなど、早めの予防が必要です」
では目を守るために何をすればいいのか? 解説する。
青魚の刺し身や缶詰、間食はダークチョコを
50代以上の目を守るためには、「ビタミンA、ビタミンC、ルテイン、βカロテンなどが含まれたものを摂って」と、管理栄養士の望月理恵子さんはすすめる。
「さばやいわしなどの青魚に含まれるDHAは、網膜や視神経の機能を改善し、視力低下や疲れ目の予防、網膜機能改善効果が期待できるとされます。DHAは加熱によって酸化しやすいので、お刺し身などで食べましょう。さば缶などの缶詰は保存もきき、手軽に食べられます」(望月さん)

「3食以外に、間食でダークチョコレートを摂ると眼精疲労や視神経の機能改善につながる」と言うのは、理学博士の平賀広貴さんだ。
「ダークチョコや赤ワインに含まれるポリフェノールには抗酸化作用が、フラボノイドには一時的にコントラストの感度を上げ、視覚機能を上げる作用がある。
アルコールには血流をよくする働きがあり、中でも赤ワインがおすすめです。ただし、飲みすぎは肝臓によくないのでグラス2杯程度に」(平賀さん)


近くものを見る機会を減らし、目を休める
「見えづらさには、疲れ目が関係している」と言うのは、前出の佐藤さん。
「目は常にピントを調節しているのですが、特に近くのものを見るときは、目の周りの筋肉を過剰に動かすため、目が疲れているとピント調節がうまくできず、見えづらくなるのです」(佐藤さん・以下同)
それを防ぐためにアメリカの眼科学会には「20-20-20ルール」があるという。
「これは『20分連続して近くを見る作業をしたら、次の20秒で20フィート(約6m)先のものを見て目を休める』というもの。目の疲れを取ることは、近くのものを見る機会を減らすことでもあります」
見えづらいと感じたら、「躊躇せずにメガネの使用を」と河内さんはすすめる。
「たとえば、運転時とスマホを見るときでは、見る対象の距離が異なるため、度数の異なるメガネをかけるべき。特に50才を過ぎたら眼科で視力を測定し用途に合わせたメガネを作って、使い分けると眼精疲労を軽減できます」(河内さん)

取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2025年5月22日号