《早期退職と定年退職、どちらを選ぶべき?》生涯現役を目指すなら「早期退職」にメリット 再就職で有利になり、人間関係や趣味を充実させやすくQOLが高いという調査結果も

「生涯現役」が当たり前になりつつある時代、「定年退職」してなお働き続ける人は多い。むしろ、定年を待たずに「早期退職」を選び、“新たな人生”をスタートさせる人も増えている。定年退職かはたまた早期退職か、この選択は、退職金の額も、年金も、さらには健康状態や夫婦関係まで左右する“究極の二択”なのだ。【前後編の後編。前編から読む】
バリバリ働くなら早期退職という選択肢も
生涯現役で働きたいなら、早期退職は決して不利にはならない。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが話す。
「企業は経験値だけでなく若さを重視する傾向にあります。早期退職後の再就職の方が、これまでの実績や専門性が評価されやすく、有利になると考えられます。
一方、定年退職後に再就職を目指すとなると、“勤め上げた後”になるので、求人の内容も簡単な仕事や軽作業ばかりになりがちです。低い賃金での嘱託的な仕事が中心になり、やりがいも待遇も早期退職ほどは望めなくなります」

早期退職を選ぶ人は、退職後に独立してフリーランスになるケースが多いと話すのは社会保険労務士の蒲島竜也さんだ。
「社会保険上の問題や年金が減るリスクなどもある一方で、自分のスキルを生かして思い切り働くことができ、成功すれば巨額の財を成すことも不可能ではありません。ただし、もし早期退職後にやりたいことが決まっておらず、再就職を目指すことになった場合、就職できずに心身の健康が損なわれることも少なくない。ただ安定を求めるなら、定年まで働き続けるのがいいかもしれません」
生活の安定を求めるなら、定年後に同じ職場の再雇用で働き続ける手がある。マネージャーナリストで税理士の板倉京さんが語る。
「仕事を探さなくてもそれまでと同じように働き続けられることが、再雇用の大きなメリットといえます。一方、定年前と比べると平均して20%近く給与は少なくなります。ポジションが下がることをデメリットと感じる人もいるでしょう」
「家で何もしない」がいちばん危険
老後の暮らしに重要なのは、お金と仕事だけではない。健康や趣味、夫婦関係も充実させてこそのセカンドライフだ。
「シニア夫婦へのアンケート調査では、定年よりも早期退職の方が人間関係や趣味を充実させやすく、退職後のQOL(生活の質)が高いことがわかりました。
定年を待たず、体力や気力、記憶力が高いうちに新しいことを始める方が、より満足度が上がるのでしょう」(三原さん・以下同)

仕事に限らず、やりたいことがあるなら、早期退職の方が向いているのかもしれない。一方で「熟年離婚」のリスクは、定年と早期退職のどちらも変わらない。
「子育てが終わって“親としての役割”がなくなった後、退職して“職業としての役割”も失ったら、残るは〝夫婦としての役割〟のみ。ふたりきりで過ごす時間が増えることでストレスが目立ち、離婚に至るケースは少なくありません。リタイア後の夫とうまく過ごすためには、家事の役割分担も決めておきましょう」
もし、子供の独立と夫の定年を機に離婚を考えているならば、退職金を得た直後に切り出し、財産分与で受け取る方がいい。夫の退職のタイミングを知らないと、自分自身の老後設計も崩れてしまうので、相談し合うことが必要だ。
また、夫が退職後に再就職をしなければ「毎日が日曜日」ということになる。夫婦仲がよければ問題はないかもしれないが、朝から晩まで夫が家にいることでいさかいが増えることは、決して珍しいケースではない。仕事というやりがいを失った夫が精神的に落ち込み、引きこもりとなってしまう恐れもある。
「孤独感と社会的孤立が強まると、認知症などのリスクが上がることがわかっています。定年か早期退職かにかかわらず、退職後に積極的に社会参加することを意識してほしい」
生涯現役が当たり前のいま、定年まで働き切るか、早期退職するかは、夫婦にとって大きな決断だ。迷ったときの決め方について、蒲島さんは言う。
「迷うということは、どちらにも魅力を感じているということかもしれません。もし、いまの仕事に不満があり、精神的に負担になっているなら早期退職を。
そして、早期退職で得られる退職金などの条件を見ても迷うなら現状維持、つまり定年まで働く方に惹かれているということ」
お金や仕事はもちろん、心身の健康や趣味、家族との仲もあきらめない。夫婦にとって後悔のない老後を目指して、二つに一つの道を選ぼう。

※女性セブン2025年5月22日号