
もっとお金があれば幸せになるのに──そう思っている人は多いだろう。しかし、ひとつ言えるのはお金持ちだからといって決して幸せだとは限らないということ。むしろ、少ない収入の方がお金のありがたみを感じ、大事に使うのでより幸せを感じられるという。いますぐ真似したい「幸せの買い方」を紹介しよう。【全3回の第3回。第1回から読む】
新しい体験で分泌される“ひらめきの物質”が脳を活性化
お金が増えたことによる幸福度はどこかでピークを迎えて、その先は持続しない。一方でこれまで登場してきた人たちのように、少額でも幸福度を高める方法がある。そのポイントは「感謝」だ。『精神科医が見つけた3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』の著者で、精神科医の樺沢紫苑さんが語る。
「脳内物質で言えば、生活が豊かになるとドーパミンが分泌されて『ドーパミン的幸福』が手に入る。一方でどんなに小さなことでも感謝する気持ちを持つと、“愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されて、他者との関係性やコミュニケーションに幸せを感じる『オキシトシン的幸福』を得ることができます。
ドーパミン的幸福は長続きしませんが、これにオキシトシン的幸福が掛け合わされると幸福度が長く持続します。これを『幸福の掛け算』と呼び、少ないお金でも感謝してちゃんと使うと、満足度は高まります」(樺沢さん・以下同)

2つのタイプの幸福に加え、心身の健康を示す「セロトニン的幸福」も重要だ。
「人間は精神的な余裕と時間的な余裕がないと幸福になれません。もちろん最低限の蓄えは必要不可欠で、お金がないと不安になって心身にマイナスの影響を及ぼします。
幸せになるために“幸せを買う”ことも大事ですが、マイナスにならない状態を維持することも重要なので、『お金』『他者とのつながり』『心身の健康』という3つの幸福をバランスよく保つことが求められます。
そのためにも規則正しい生活や運動、睡眠を心がけて、ストレスのない日常を送り、セロトニンの分泌を促して命を大切にすることがとても大切です」
そのなかで上手にお金を使って幸せになる方法として樺沢さんがすすめるのが、「新しい体験」と「ドキドキワクワク」だ。日帰り箱根旅行を始めたフルや、ジムに通っているショコラさんのように、それまでとは違う日常を習慣にすると新しい扉が開く。
「新しい体験をすると“ひらめきの物質”といわれるアセチルコリンが分泌されて、脳が活性化されて新鮮な気持ちになれます。また、ワクワクドキドキすることにお金を使えばドーパミンやセロトニン、オキシトシン、アセチルコリンすべてが分泌されて幸福度がより高まります」
小さな幸せや楽しみを自分から見つけにいく
知らない場所に行って知らない人と出会って新しい経験をして、そのことに感謝すれば幸福度はさらに高まり、長く持続する。
そこには大きなお金は必要ない。
「“どうせ、それをするにもお金が必要なんでしょ”と言う人は多いですが、地域のサークルに参加してコーヒーを飲みながらお話しするだけならコーヒー代しかかかりません。
“自分にはムリ”とあきらめるのではなく、小さな幸せや楽しみを自分から見つけにいって、それに参加することが大切です。行動力と好奇心、そして小さな幸せに感謝する心があれば、年収がいくらでも人は幸せになれるんです」
お金は目的ではなく、目的を手に入れるための手段だ。正しく使うことさえできれば、きっとあなたは幸せになれる。


※女性セブン2025年5月22日号