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《犬・猫の熱中症予防策》夏バテを防ぐポイントを獣医師が解説「エアコンは人間の適温+1℃に設定」「室温を一定に保つ」

寝てる猫と犬
《犬・猫の熱中症予防策》夏バテを防ぐポイントを獣医師が解説(写真/イメージマート)
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今年の夏は暑くなりそう――。もはや毎年そう聞いている気がするが、2025年もやっぱり暑くなるらしい。犬や猫と暮らしている人にとっては、自身の体調管理以上に愛犬、愛猫の夏バテや熱中症をいかに予防できるかが気になるところではないだろうか。犬や猫の夏バテ予防策について、獣医師の鳥海早紀さんに解説してもらった。

犬にも猫にもある夏バテ・熱中症

2023年、2024年は国内の夏(6~8月)の平均気温が2年続けて観測史上最高タイだった。2025年はこの2年ほどではないものの、やはり平年より気温がかなり高くなることが予想されている。さらに、梅雨入り・梅雨明けが早く、本格的な夏の到来が早いらしい。

人間より体温調節が得意でない犬や猫の体調管理には、そろそろ注意していきたいところだ。

鳥海さんは「犬も猫も人間に比べると極端に汗腺が少なく、体温を下げる手段としては、もっぱらパンティングに頼ることになります。パンティングというのは、ハアハアと口を開けて呼吸することですね。一度、体温が上がってしまうと、身体の外からいくら冷やしても内部はカッカと熱を持ったままだったりします。熱中症の治療は意外に難しい。だから、犬や猫はまず体温が上がり過ぎないように環境面から制御することが大切なんです」と話す。

猫に関しては先祖が砂漠に生きた動物だという説があり、犬より暑さに強いとされるが、近年の酷暑は油断ならないという。

「猫は犬より神経質なところがあって、エアコンを運転しているときの音を怖がる子が結構います。屋内で犬より自由にさせてもらっている子が多いので、エアコンが作動中の部屋から出て行って、気が付いたら気温の高い場所にい続けて具合が悪くなってしまうことがあります。犬も猫も、熱中症や夏バテになる可能性はあると思って用心してください」(鳥海さん・以下同)

夏バテは熱中症の手前の食欲不振や激しい呼吸、元気消退といった状態に陥ることを言う。令和の日本では犬でも猫でも、夏バテや熱中症の予防策を飼い主が講じる必要があるようだ。

(※ちなみに犬や猫の場合、「夏バテ」という表現は獣医医学的に正しい表現というわけではなく、あくまで環境温度の変化によるストレスからくる食欲不振や元気消失などの症状を飼主に伝わりやすいように使用)

人間の適温+1℃に設定し、エアコンを常時運転

暑さ対策として、飼い主にできることは、やはり室温管理。エアコンは何度ぐらいに設定するといいのだろうか。

猫とエアコン
人間の適温+1℃に設定し、エアコンを常時運転(写真/イメージマート)
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「温度は26~27℃ぐらい、湿度は30~40%ぐらいでいいと思います。基本的に、人間が快適に感じる環境は、同じ哺乳類の犬や猫にとっても快適です。ただ、冷気は床に近いところにたまりがちで、犬や猫の身体が冷えてしまうかもしれないので、飼い主さんがベストと思う室温から1~2℃上げて設定するといいですね」

例外は、寒冷地が原産で被毛が厚い犬種だ。表面を覆う上毛と身体の保温に役立つ下毛が生えている“ダブルコート”の犬種、具体的にはゴールデンレトリバーやシベリアンハスキー、サモエドなどは、寒さに強い分、暑さには弱い。

「サモエドを飼っている人で、夏場はエアコンを18℃に設定している人を知っています。飼い主さんファミリーが室内でダウンジャケットを着て、なんとか適応しているそうです。人間は脱ぎ着もできるし、体温調節もある程度できるので、人間が犬や猫に合わせるほうが理にかなっているんですよね」

暑さに弱い一部犬種の例を除くと、夏場のエアコン運転で大事なのは「涼しくする以上に、室温を一定に保つこと」だと鳥海さんは言う。

「酷暑や厳寒もつらいですが、朝晩の気温差が激しいとか、昨日は肌寒かったのに今日はかなり暑いとか、そういうことが動物の身体にはこたえます。室温に大きな差が出ないように、基本的には初夏から秋口まで、エアコンなどを使って室温管理に努めましょう」

清潔な水をたっぷり用意

エアコンの運転音を嫌がる猫などの場合はどう室温を調節するといいだろうか。

「猫のいる部屋に間接的に冷気を流すような感じでエアコンを運転すると、そこまで嫌がらないと思います。隣の部屋のエアコンをつけてドアを開け放っておくとか。エアコンに静音運転モードのような機能があれば、それを利用すると少し違ってくるはずです。あとは風通しをよくしたり、日陰になる場所をつくったり、冷感マットを置いたりするのもいいですね」

もう一つ、夏バテや熱中症の予防に大事なポイントが水分補給。水はいつでも新鮮なものを好きなだけ飲めるように準備しておく。水を飲みたがらない場合にも、冷やしたり温めたりしてその犬・猫の好む温度を探ったり、チューブ状のおやつをほんの少し水に混ぜたり、蛇口から細く水を出したり、電動の給水機を使って水に動きをつけたりして、水を飲むように誘導したいところだ。

犬
水はいつでも新鮮なものを好きなだけ飲めるように準備しておく(写真/イメージマート)
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「出かけるときは、犬・猫の飲み水が空になっていないか、悪くなっていないか、しっかり確認してください」

夏場の犬・猫のお留守番時は“エアコンをつけっぱなしに”“水はふんだんに”が基本。加えて、脱走防止にも注意を払う。

「夏は窓を開けて風を取り込むご家庭も多いと思いますが、犬や猫が網戸を破って脱走してしまわないように、外出の際は窓を閉めましょう。もしくはゲートやネットなどのグッズを使って、網戸に犬や猫が触れられないように対策しましょう」

フレブルやパグは夏前ダイエット推奨

人間なら夏バテ対策に精力のつく物を食べたり、食欲が減退しているときは消化にいいものを食べたり、気候に合わせて食事も変化させる人が多い。しかし、犬や猫の場合には、著しく食欲が落ちているのでなければ、普段通りで構わないそうだ。

「ウェットフードのほうが食いつきはいいと思うし、水分補給にもなりますが、ドライタイプよりウェットタイプのほうが太りやすい傾向にあるので、そこがやや心配です。夏太りは避けないと、喉周りに脂肪がつくと、パンティングで体温を下げる機能が弱まって、熱中症リスクが上がってしまいます」

とりわけ、フレンチブルドッグやパグ、シーズーなどの鼻が短い犬種は、夏季の肥満に要注意。もしも日頃から肥満傾向にあるなら、夏前に少し減量しておくと、夏を過ごしやすくなるはずだ。

◆教えてくれたのは:獣医師・鳥海早紀さん

鳥海早紀さん
鳥海早紀さん
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獣医師。山口大学卒業(獣医解剖学研究室)。一般診療で経験を積み、院長も経験。現在は獣医麻酔科担当としてアニコムグループの動物病院で手術麻酔を担当している。

取材・文/赤坂麻実

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