
8月29日公開の主演映画『8番出口』が第78回カンヌ国際映画祭の「ミッドナイト・スクリーニング」部門に正式招待されたことで5月中旬に渡仏し、注目を集めた嵐の二宮和也(41歳)。世界初お披露目となった公式上映では上映後、スタンディングオベーションが8分続くなど、高い評価を得られたようだ。二宮の演技力は国内では「日本アカデミー賞」に4度ノミネートされ、海外でも映画『硫黄島からの手紙』(2006年)で巨匠・クリント・イーストウッド監督に見初められてハリウッドデビューを飾るなど、その実力は折り紙付き。これまでさまざまな映画界の名監督たちが彼の実力や人間性に魅了されてきた。そこで、二宮に対する評価の声を振り返る。

蜷川幸雄「世界の10代、20代のトップレベルの俳優と比べても引けを取らない」
まずは19歳の時、単独初主演を務めた映画『青の炎』(2003年)。二宮は家庭の平和を取り戻すべく完全犯罪を計画した17歳の少年役で、多感な少年期の心情を静かな怒りを秘め繊細に演じた。
監督・脚本を務めた蜷川幸雄氏は同作の披露試写会で二宮について、「世界の10代、20代のトップレベルの俳優と比べても引けを取らない」と賛辞を送った。
「蜷川監督もベタ惚れで、実際にパンフレットでも『想像以上に良かった。あの世代の演技者としては、世界レベルで見ても、十分通用すると思う。あの若さで、あんな繊細な演技ができるなんて。初めて会って5、6分話しただけで、二宮君と心中しようと決めたくらい』『ひそやかで、繊細。実は撮影中、台本を持って現われたことはないんだ。全部セリフを頭に入れて来てたんだよ』と褒めていたぐらいですから」(映画関係者)
クリント・イーストウッド「類まれな才能の持ち主」
23歳の時に旧ジャニーズ事務所のタレントとして初めてとなるハリウッド進出を果たした『硫黄島からの手紙』は、二宮の俳優としての評価を一気に高めた作品の1つだろう。クリント・イーストウッド監督のもと、“全くやる気のない日本兵”西郷昇陸軍一等兵役を演じた。
オーディションでのやる気のなさがクリントの目にとまり役を掴んだ二宮だが、同作の撮影終了後、イーストウッド監督は二宮について「類まれな才能の持ち主」と称賛したという。
同作の来日会見では、こんなエピソードも明かされていた。
撮影中は自由な役作りができたようで、二宮は「ワガママにやらせてもらいました。台本に書いてない事でも自由にできたのは、監督が最後まで味方でいてくれたからです」とコメント。イーストウッド監督は「それは俳優を信じているからです」とチームワークのよさと、二宮への信頼を明かしていた。
映画界を席巻する日本の名匠たちもその才能の虜に
他にも、さまざまな監督たちが二宮の才能に魅了されてきた。
二宮が食べた料理の味を絶対に忘れない“麒麟の舌”を持つ天才料理人を演じた映画『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』(2017年)。メガホンをとった滝田洋二郎監督は、中でも「この顔を見るためにつくっていた」と確信したというクライマックスの二宮の表情に感極まったという。
「ニノは常にシャープ。人に見せていないところをどれだけ用意しているか。あの表情は現場でいきなり出たわけではなく、日常からずーっと訓練している、積み重ねから出たもの。この先、もっとすごい顔が出てくるんでしょう」(『映画.com』2017年10月27日)
『湯を沸かすほどの熱い愛』『長いお別れ』など、これまで様々な家族の形を描いてきた中野量太監督とは、映画『浅田家!』(2020年)でタッグを組んだ。中野監督は二宮について以下のように語っている。
「俳優さんにとって必要なのは、脚本を理解して、自分がなにをしなければいけないかを察知する力。そしてそれを表現する力。二宮さんは、この2つをしっかりと持っている。なにをやらなければいけないのかを読み取って、ドンピシャの芝居をしてくれる。すごいですよ」(『MOVIE WALKER PRESS』2020年10月9日より)
ビートたけしが初めて書きあげた恋愛小説を映画化し、二宮が手作りや手書きにこだわるデザイナーの水島悟を演じた映画『アナログ』(2023年)。同作のタカハタ秀太監督は芝居だけではなく、二宮の人間性についても賛辞の言葉を送った。
「二宮さんの芝居には余計なものがない。そんなに多くの言葉を交わさなくても理解してくれるところがあります。『この人なら、これを演じたら面白いだろうし、あれも演じられるだろう』と、彼がまだやっていないものを探して、撮ってみたくなります。何より、人としてすごく素敵。いい青年だなと思って、いつも見ています」(『SCREEN ONLINE』 2023年10月13日)
ただ歩いているだけ
そして、二宮の最新作となる、“異変”探し無限ループゲームを映画化した『8番出口』。二宮は役者人生初となる名前のない主人公を熱演している。『告白』『悪人』『君の名は。』の企画・プロデュースで知られ、長編のメガホンをとるのは自身の小説を映画化した『百花』以来、2度目となる監督・脚本の川村元気氏も二宮に魅了された1人だ。川村氏はメディア向けのオフィシャルコメントでこう語っている。
「二宮さんは、セリフやアクションで発散する芝居も素晴らしいのですが、それ以上に『惹きつける』芝居が抜群だと思っています。ただ歩いている、ただなにかを見ている。それだけでも観客が前のめりで観てしまう、視線を惹きつける力がある俳優。それは『硫黄島からの手紙』でクリント・イーストウッド監督が発見した彼の最大の魅力だと思っていて、それを『8番出口』では存分に活かしたいと思いました。脚本の段階から撮影の現場まで、彼の豊富なアイデアに、その多彩な演技に、大いに助けてもらいました」
様々な冠バラエティー番組やYouTubeなどに出演し、アイドル・タレントとして人を楽しませる一方で、ドラマ、映画に出演し、役者としても多くの人たちを惹きつける二宮。今後、役者としてどんな新たな一面を見せてくれるのか、期待が高まる。

