
さまざまな理由で若い頃に勉強ができなかった人たちが、時間的・経済的余裕ができたタイミングで“学び直し”をするケースが増えている。厚生労働省では、仕事をしながら学ぶ「リカレント教育」を推進。各教育機関でも広く門戸を開いており、社会からの追い風も吹く。実際に学び直しをした人たちは、「人生が変わった」と目を輝かせる。いまや年齢は関係ない。35才で高校を卒業、大学に進学して起業したタレントのスザンヌ(38才)も学び直しをした1人だ。スザンヌに話を聞いた。
学び直しを決意したのは息子の一言
「なんで勉強しなきゃいけないの。ママも子供の頃、ちゃんと勉強していたの?」
スザンヌが学び直しを決意したのは、当時小学1年生だった息子の一言だった。
「ハッとしましたね。子供には『勉強しなさい』と口うるさく言っているのに、自分は高校中退なわけですから」(スザンヌ・以下同)
このときふと、高校の恩師が、「うちには通信制もある。勉強したくなったらいつでも言いなさい」と、声をかけ続けてくれたことを思い出した。
「もともと勉強が好きではなかったので、その気になれなかったのですが、このままでは子供にあれこれ言う資格はない――。そう思って、母校の通信制に通うことを決めました」
2021年、34才のときだった。
「子育てと仕事をしながら通学するのは難しかったのですが、ちょうどコロナ禍で、オンライン授業になったことが幸いしました」
とはいえ、毎朝4時半に起床し、録画していた授業を見たり、レポートを書いたりした。その後、息子を起こして学校へ送り出す。日中は仕事をこなし、夜は息子と一緒に早く寝て、早朝の勉強に備えた。
「休みの日にリビングで勉強していると、息子もそばで宿題を始めるようになったんです。母のがんばる姿を見てくれているのかな、とうれしかったですね」
大学でも学びながら起業。自立した母を目指して
当初は高校卒業が目標だったが、恩師から系列大学への進学を提案された。
「大好きなファッションを学べる学部があったことも決め手でした。私以外にも、学び直しで入学した社会人が何人もいらして、勇気づけられました」

学ぶうちに起業に興味が湧き、在学中にアパレルブランドを立ち上げた。今年に入ってからは故郷の熊本を元気にしたいと、後継者不足で閉館した旅館を買い取り、自費で改修。旅館「龍栄荘」を開業した。
「今年は大学最後の年。卒論では地域創生をテーマに、廃旅館を買い取ってからオープンするまでの一連の流れをまとめるつもりです。私が勉強や仕事をがんばるのは、息子からきちんと子離れするためでもあります。お互い自立したうえで、息子のことを応援できる母親になれたらと思っています」

◆タレント・スザンヌ
熊本県出身。中学時代から芸能活動を始め、2007年『クイズ!ヘキサゴンⅡ』(フジテレビ系)にて"おバカキャラ"でブレーク。現在は九州を中心に活動。
取材・文/植木淳子
※女性セブン2025年6月5・12日号