健康・医療

《整う正座風呂・やせる湯圧風呂トレ》温熱、浮力、水圧作用で健康効果も期待できる6つのメソッド&正しい入浴法

入浴中の女性
湯船に入るメリットを生かして健康に!(写真/GettyImages)
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暖かくなってきたから、あるいは面倒だからと、入浴をシャワーだけで済ませる人もいるだろう。しかし近年、浴槽の湯につかることで得られる健康効果が次々と判明している。入浴は体を清潔にするだけにあらず。ダイエット効果も期待できる、整う入浴方法を紹介する。

温熱、浮力、水圧作用による健康効果が!

「入浴には汚れを落とす以上に、健康で長生きできるためのさまざまな健康効果があります」とは、温泉療法専門医の早坂信哉さんだ。湯につかるだけでも3つの作用が期待できるという。

「1つ目が温熱作用です。体が温まると血管が広がり、血行がよくなります。これにより全身に酸素や栄養が運ばれ、老廃物や疲労物質の排出が促されるので、新陳代謝が活発になり、疲れがとれやすくなります」(早坂さん・以下同)

体が温まると、神経痛や慢性的な痛みが緩和し、自律神経の調整を促して心身がリラックスできる。

「2つ目は浮力作用。水中では体にかかる重力が軽減されるので、筋肉や関節を休められます。

そして3つ目は水圧作用。湯が全身をほどよく締め付けるため、むくみなどが解消されます」

シャワーだけでは、これらの健康効果は得られない。

週7回の入浴で要介護リスクが3割減

近年は入浴が、病気や介護の予防に一役買うこともわかってきた。

「要介護認定を受けていない高齢者1万3786人を対象に、3年間の追跡調査を行ったところ、毎日お風呂に入っている人は、週に0~2回しかお風呂に入っていない人に比べて、3年後に要介護認定を受けるリスクが3割ほど少ないことが判明しました」

早坂さんの研究によると、毎日浴槽の湯につかっている人は、そうでない人に比べてうつ病の発症リスクが約2割減、認知症の発症リスクが約3割減という結果も出ている。

「毎日の入浴で、心臓病や脳卒中、糖尿病の予防ができることもわかっています」

浴槽での動き方次第で、ダイエット効果も得られるという。詳細は以下から紹介するので、正しい入浴方法と併せて参考にしよう。

たった30秒!「正座入浴」のススメ

湯にはつかるだけでもいいが、ちょっとした動きを加えると、さらなる効果が加わる。そのひとつが「正座入浴」だ。

「正座をするとふくらはぎに圧がかかるので、足を崩したときに血流がよくなり、むくみが解消されます。30~90秒程度で、充分な効果が期待できます」(戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さん・以下同)

ひざに痛みがある人でも、湯の中なら正座がしやすいという。

「浮力でひざへの負担が軽くなるからです。体が温まっているので、ひざも曲がりやすくなります」

正しい正座はかかとをつけるが、ひざが痛い人はお尻が完全にかかとにつかなくてもいいという。

「できる範囲で少しずつ正座に近い角度までもっていければ、ひざを伸ばす筋肉・大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)がほぐれて、ひざの痛みが軽くなります」

「正座入浴」の正しいやり方

湯の浮力&温め効果を味方につけよう!1回30~90秒で足のむくみが解消。

【1】ひざ立ちし、両かかとをつける

湯船でひざ立ちしている女性のイラスト
ひざ立ちし、両かかとをつける(イラスト/ico.)
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浴槽の中でひざ立ちする。両足のかかとをつけ、親指同士の間は少し開く。

【2】かかとをつけたまま腰をおろす

湯船で正座している女性のイラスト
かかとをつけたまま腰をおろす(イラスト/ico.)
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両足のかかとをつけたまま、かかとの上にお尻をのせるように腰をおろす。そのまま30~90秒キープ。

【ひざが痛い人は…】

両手で浴槽の縁を持ち、できる範囲でひざを曲げて30~90秒静止。

湯の中では体への負担が10分の1に軽減

水圧や浮力を利用したアクアフィットネス運動を、自宅の浴槽でも簡単に行えるようにアレンジしたトレーニングを考案したのが、風呂トレ・インストラクターのゆきんちょさんだ。

「女性の場合、浴槽の湯の中では体に約500kgの水圧がかかるとされています。体が締め付けられた状態でエクササイズをすると呼吸が深くなり、代謝も上がりやすくなります」(ゆきんちょさん・以下同)
一方、浮力により、水中では体の重さが本来の約10分の1に軽減される。

「湯圧がかかっても浮力で体への負担が減るので、運動が苦手な人やひざや腰に不安がある人でも動きやすく、安全に運動ができます」

体を動かす際は、呼吸を止めないこと。一つひとつの動作は大きく、手を前に押し出す際は、背中から押し出す意識を持とう。

湯圧で効果アップ!風呂トレ5つ

忙しい人におすすめなのが、入浴時間を有効活用したダイエット。運動が苦手&ひざや腰が痛くてもできる、特にお腹回りや二の腕などに効くエクササイズを紹介。

ツイスト運動

【1】右腕を左前方に突き出す

浴槽の中で右腕を左前方に突き出している女性のイラスト
右腕を左前方に突き出す(イラスト/ico.)
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浴槽に座り、息を吐きながら、右腕を左前方に、湯を押し出すイメージで突き出す。左腕は腕をひねってひじをしっかり後ろに引く。

【2】左右交互に10回繰り返す

浴槽の中で左腕を右前方に突き出している女性のイラスト
左右交互に10回繰り返す(イラスト/ico.)
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同様に左腕を右前方に突き出す。右腕は腕をひねってひじをしっかり後ろに引く。呼吸は腕を逆にするタイミングで吸い、左腕を突き出すときに吐く。

舟こぎ運動

【1】手の甲をつけて両腕を伸ばす

浴槽の中に膝を立てて座り、腕を前に出している女性のイラスト
手の甲をつけて両腕を伸ばす(イラスト/ico.)
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浴槽に座り、肩甲骨のあたりから腕を伸ばすようなイメージで手を前方に突き出し、手の甲を合わせる。このとき、息をしっかり吐ききる。

【2】息を吸いながら腕を引く

浴槽の中に膝を立てて座り、両ひじを引いている女性のイラスト
息を吸いながら腕を引く(イラスト/ico.)
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舟をこぐようなイメージで、わきをしめながら腕を引き胸をはる。腕を引いたときに手は上に向ける。15秒間で10回繰り返す。猫背の改善にも効果的。

水かき運動

【1】浴槽の縁に右手を置く

浴槽の中で水をかいている女性のイラスト
浴槽の縁に右手を置く(イラスト/ico.)
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浴槽に横向きに座り、右手を縁に置く。左手は体から離して、体の横に広げる。

【2】息を吐きながら体の前まで湯をかく

浴槽の中で水をかいている女性のイラスト
息を吐きながら体の前まで湯をかく(イラスト/ico.)
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左手を体の前まで動かす。視線は左手に。13秒間で10回繰り返す。反対も同様に。

ひざリフト運動

【1】手は浴槽の底に。ひざを立てて座る

浴槽の中に膝を立てて座っている女性のイラスト
手は浴槽の底に。ひざを立てて座る(イラスト/ico.)
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手は浴槽の底につけ、両ひざが離れないよう注意しながら、足をそろえて座る。

【2】太ももとひざを上げ下げする

浴槽の中に膝を立てて座り、足を持ち上げている女性のイラスト
太ももとひざを上げ下げする(イラスト/ico.)
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息を吐きながら両ひざを胸に近づける。顔を下に向けないこと。15秒間で10回繰り返す。

洗面器プッシュ運動

【1】洗面器を持ち、湯を前方に押し出す

洗面器をもって湯船に入っている女性のイラスト
洗面器を持ち、湯を前方に押し出す(イラスト/ico.)
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浴槽に軽くひざを立てて座る。洗面器を持ち、息を吐きながら洗面器の底を前方に押し出す。このとき、わきをしめておく。お腹の筋肉を意識し、腕の力だけで押し出さないように注意する。

【2】息を吸いながら洗面器を戻す

洗面器をもって湯船に入っている女性のイラスト
息を吸いながら洗面器を戻す(イラスト/ico.)
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引くときも腕の力に頼らず、背中の筋肉を意識しながら胸元に戻す。15秒間で5回繰り返す。二の腕の引き締め効果あり。

意外と知らない「間違った入浴法」&「正しい入浴法」

「間違った入浴法」&「正しい入浴法」について専門家が最新研究から解説する。

入浴の前後にコップ1杯の水分補給

「1回の入浴で、500~800mlの水分が失われます。水分が不足すると血液濃度が上がり、血管がつまりやすくなる原因に。それを防ぐため、入浴の前後にコップ1杯の水を飲んで」(早坂さん・以下同)

ぬるめの湯が好きな人は炭酸系入浴剤を活用

「湯の温度が40℃では熱いという人は、38~39℃の湯に炭酸系の入浴剤を入れるのがおすすめ。皮膚から炭酸ガスが吸収されると血管が広がり、血流を促してくれるので、しっかり温まります」

40℃の湯に10分、全身浴が理想的

「入浴の効果を最大限得るには、湯温、時間、水位が大事。水位は胸の上部から肩ぐらいまでの全身浴がベスト。湯の温度は40℃で、湯舟につかる時間は合計10分が理想。長すぎるのもよくありません」

就寝時間から逆算して入浴時間を決める

「寝る1時間半前に入浴を終えるのが理想的。入浴により上がった体温は、その後1時間半かけて下がります。このタイミングで寝ると、寝つきがよくなり睡眠の質が上がるとの研究報告があります」

42℃以上の湯は体に悪影響を与える!

「湯温が42℃以上だと交感神経のスイッチが入り、体は興奮状態に。血液の粘り気が増して血栓ができやすくなったり、血圧が過度に上がったりなど、本来の入浴効果が薄れます」

入浴時に汗をかいてもダイエット効果はない

「入浴中に汗をかくのは、体が温まった証拠。汗をかく=デトックス効果がある、と思われている人も多いですが、体内の有害物質は汗として排出されませんし、汗をかいただけではやせません」

「全身浴より半身浴が健康にいい」は間違い

「半身浴は、全身浴で得られる半分程度の効果しか期待できません。体も充分に温まらず、肩こりなどの痛みに関しても、半身浴より全身浴の方が効果的という研究結果があるほどです」

毎日体を洗う必要はなし!手でなでるぐらいでOK

「湯につかるだけで汚れはとれるので、毎日石けんで体を洗う必要はありません。洗いすぎは、皮膚の表面の角質をはがしてしまい、かゆみの原因に。洗うにしても、手でなでるぐらいで充分です」

◆教えてくれたのは:戸田整形外科リウマチ科 クリニック院長・戸田佳孝さん

医学博士。手術せずに変形性ひざ関節症を治す方法を研究。著書に『ひざ痛を自力で治す』(大洋図書)など。

◆教えてくれたのは:温泉療法専門医・早坂信哉さん

東京都市大学人間科学部教授。25年以上にわたって入浴について研究し、のべ4万人以上を調査してきた温泉・お風呂の専門家。著書に『おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術』(山と溪谷社)など。

◆教えてくれたのは:風呂トレ・インストラクター:ゆきんちょさん

37年にわたりのべ23万人以上を指導してきたフィットネスのスペシャリスト。著書に『おうちでずぼらフィットネス!かんたんお風呂トレダイエット』(GOT)。

取材・文/鳥居優美

※女性セブン2025年6月19日号

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