大事なのは食べたらすぐ口腔内環境をリセットすること
口腔内環境が悪化すると、最終的に歯を失うことになるが、虫歯がないから大丈夫と考えていると、その陰で気づかぬうちに歯周病が進行していることがある。
「人によって虫歯と歯周病のどちらになりやすいか傾向があります。『虫歯になったことがない。健診なんて無駄だ』と自慢する人がいますが、実は歯周病が進んでいたケースが多い。
反対に若い頃から虫歯に悩んでいた人は、治療のためこまめに受診するので80才になったときに歯が残っていることが多いのです」(大塚さん)
歯周病は歯茎の病気ではなく骨の病気で、歯周病が悪化すれば、あごの骨が溶けて歯が抜け落ちる。
「歯周病菌は嫌気性細菌という、空気が苦手な菌です。あごの骨が溶けるのは、歯周病菌が骨に付着すると骨髄炎と骨髄膜炎という、より重篤な病気になるため、体は歯茎を犠牲にしても骨を溶かして逃げているためです」(飯塚さん)

歯周病菌は虫歯菌のように特定の食べ物に影響されないが、口のなかの衛生状態が悪いと増えやすいためセルフケアが鍵になる。
「空気が苦手なので、ネバネバしたバイオフィルム(歯垢)を作り出してそのなかで増殖します。特に磨き残しが出やすい歯周ポケットや歯と歯の隙間で増える特徴があり、凶悪な菌は歯茎のたんぱく質を分解して歯周組織を破壊します。
歯周病対策は歯間ケアがマスト。まずは歯ブラシよりもフロスや歯間ブラシの使用を徹底することです」(照山さん)
口腔内環境を悪化させ、歯をダメにする食べ物はなるべく避けると同時に、大事なのは食べたらすぐに口腔内環境をリセットすること。歯磨きとフロス、難しければ食後に水を飲んで少しでも早くに中性に戻そう。
「歯の健康のためには間食はよくありません。糖分が含まれず酸性が強くない水やお茶を飲むようにしましょう」(飯塚さん)
フッ素入り歯磨き粉の使用も推奨される。
「フッ素は歯のカルシウムやリン酸の吸収を助けて、酸に強くします。フッ素入り歯磨き粉を使うと歯磨きの効果を高められます」(大塚さん)
一方で、マウスウォッシュは逆効果になる可能性も。
「マウスウォッシュの普段使いは殺菌作用が強く、無害な常在菌まで殺してしまい、別の細菌感染を起こすリスクが上がるので常用はやめましょう」(飯塚さん)
食べ物やケアに気を配り、定期的な健診が“歯の寿命”を長くする。
「歯周病は痛みがないため気がつかないうちに進行します。さらに50才を過ぎると歯茎が自然と下がり、エナメル質のない歯根がむき出しになることで虫歯になりやすく、進行も早い。高齢になると定期健診で虫歯や歯周病を初期に治すことが、歯を失わないために重要です」(大塚さん)
100才になっても自分の歯で食を楽しむために、正しい知識で歯を守りたい。


※女性セブン2025年6月26日号