
6月に入り、各地で梅雨入り。梅雨時は旅から足が遠のきがちだが、この時期だからこそ魅力が増す絶景や楽しみもある。今回はそんな梅雨の絶景を眺めつつ、アートや食、温泉三昧でゆったりと過ごせるおすすめ宿を、旅行ジャーナリストの村田和子さんに紹介してもらった。
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梅雨シーズンの旅のスタイルは、観光は欲張らず一点豪華にすること。宿にこだわり早めにチェックインして、のんびり温泉や料理、あるいは好きなことをして楽しむ。心身のメンテナンス時間を持つのがおすすめです。
今回は、“梅雨シーズンに訪れたい絶景スポット”と“寛ぐのにぴったりな温泉宿”をセットで2プラン紹介。ひとつは紫陽花を愛でながら箱根・登山鉄道で行く箱根・強羅の旅。もう一つは雨の日に魅力を増す「苔」をテーマに楽しむ青森県奥入瀬渓流の旅。晴耕雨読、のんびりと雨ならではの過ごし方で大人旅を楽しみましょう。
雨で美しさを増す絶景!箱根・強羅で訪れたい箱根美術館&名勝「神仙郷」
梅雨空に映える紫陽花は、この時期ならではの楽しみ。旅の目的地「箱根・強羅」へは、神奈川県・小田原駅あるいは箱根湯本駅から、沿線の紫陽花が美しい箱根・登山鉄道で向かいます。

私イチオシの梅雨時の観光スポットは、強羅にある箱根ケーブル「公園上駅」を下車すると目の前にある箱根美術館。箱根美術館の本館および別館は登録有形文化財に指定され、日本陶磁器を主とした展示も素晴らしいのですが、特筆すべきは美術館が佇む敷地そのもの。名勝に指定された「神仙郷」には、美術館のほか、築山や滝などを組み合わせた「石楽園」、「苔庭」、「竹庭」など、四季折々の自然を感じる庭が配されており、どこを切り取っても絵になる美しさです。



中でも梅雨時に美しさを増すのが「苔庭」。茶室 真和亭では、抹茶が頂けるのですが(茶菓子付き、800円)、雨音を聞きながら、青々と輝く苔庭を眺めつつプライスレスなひと時が過ごせます。


雨は素晴らしい景観ですが、足元が滑りやすくなります。十分注意して散策を楽しみましょう。
■箱根美術館 https://www.moaart.or.jp/hakone/
デザインアワード受賞「ラフォーレ箱根強羅 湯の棲 綾館」で温泉と食を堪能
宿泊は、全室温泉露天風呂付の客室でのんびり寛げる「ラフォーレ箱根強羅 湯の棲 綾館」へ。箱根美術館からも徒歩圏内ですが、急こう配なので、雨の日はタクシー利用がおすすめです。
綾館は2024年1月に新館としてオープンし、インテリアデザインはZA DESIGN Inc. 座間 望氏が担当。世界最高峰のデザイン賞『iF DESIGN AWARD2025』を受賞したアートな宿でもあります。

歴史を刻んだ植栽をできるだけ残しつつ、工事で伐採した樹木や掘り起こされた箱根火山由来の石材(小松石)はアップサイクルし、インテリアとして配置。デザイン賞受賞も、こういった持続可能性というコンセプトやアイディアの部分が高く評価されたといいます。


22室ある客室は、すべてテラスに温泉露天風呂があり、箱根の外輪山の雄大な眺望が広がります。晴れた日はもちろん、私が訪れたときも雨が降っていましたが、雨音を聞きながら水墨画のような景色を眺めつつの温泉も情緒があります。大涌谷を源泉とする温泉は、硫黄、カルシウムを含む硫酸塩泉で、入浴後は体がぽかぽかと中から温まります。また、メタケイ酸が多く含まれるので、湯上がりは肌がしっとり! 女性にはうれしい泉質です。



夕食は本館にあるダイニング旬菜蔵で、地元産にこだわった和洋折衷のコースを頂きます。和の繊細さがコース全体に息づき、それぞれの料理には、洋のスパイスや調理法を用いるなど新しい食のハーモニーが新鮮!
例えば「真鯛と蛤のナージュ、桜と地酒箱根の山の香り」は、フランスの調理法に、和の香りをあわせてあり、和洋の良さがギュッと凝縮されています、一皿一皿にこだわりが感じられる料理は、味も素晴らしく五感で堪能。コースは3種類、それぞれ季節ごとに内容が変わります。


朝食はビュッフェで好きなものを好きなだけ。小田原のブランド味噌「いいちみそ」や、富士山麓で育てられた卵「福が・きた」など、地元産にこだわった内容に朝からお腹も満たされます。


■ラフォーレ箱根強羅 湯の棲 https://www.laforet.co.jp/gora/
全室露天風呂付の客室は意外と手頃!? ラフォーレ倶楽部の会員ならさらにお得
箱根・強羅といえば、日本でも屈指の高級旅館が多い場所。宿泊費が気になりますが、今回滞在した新館の「綾館」は、客室に温泉露天風呂がついて2名一室利用で3万円前後(1名当たり、2食付き)~。訪日外国人も多く宿泊費が高騰している中で、記念日などなら手が届く範囲でしょう。
また綾館の22室のうち、4室はワンちゃんと過ごせるドックルーム。こちらは人気が高く、早々に予約が埋まるといいます。


また「ラフォーレ」という名に聞き覚えがあるかたも多いと思いことでしょう。企業の福利厚生施設ラフォーレ倶楽部の施設とあって、会員なら更にお得な価格で滞在ができます。
昨今は手軽にオンラインサイトから宿の予約が可能となり、会社の福利厚生サービスを使う人は減っていますが、ひと手間かけると実はお得! 本人や家族が勤める会社がラフォーレ倶楽部の法人会員なら、箱根・強羅を含む全国のラフォーレの他、マリオット系列のホテルなども会員価格で宿泊ができます。一度チェックしてみるといいですよ。
■ラフォーレ倶楽部 https://www.laforet.co.jp/
まだある!梅雨シーズンの絶景を求め青森へ。「奥入瀬渓流ホテル」で苔さんぽ
梅雨といえば、筆者の頭に浮かぶのが、青森県の十和田湖から流れ出る渓流美が美しい奥入瀬渓流。四季折々の素晴らしい景観が楽しめる渓流沿いに佇む「奥入瀬渓流ホテル」では、梅雨でも様々なスタイルで渓流散策が楽しめ館内施設も充実。特に雨に濡れイキイキとする苔をテーマにした滞在が人気で、「苔さんぽ」のアクティビティから「おいらせ苔パフェ」まで、五感に訴える苔推しの楽しみが揃います。

「苔さんぽ」は、奥入瀬渓流の絶景スポットをバスで巡り、ルーペをもってガイドとともに苔のミクロの世界を堪能。特に雨など湿気の多い日はいききとした苔の姿が見られておすすめだといいます。筆者も参加したことがあるのですが、小さな苔を拡大してみると精巧な作りに感動し、自然の神秘を感じます。

また梅雨の晴れ間には、オープントップバスで奥入瀬を巡るアクティビティもおすすめ。屋根無しのオープントップバスから眺める奥入瀬渓流は、歩くのとは目線がかわり、風を切りながら爽快な気分で奥入瀬の新たな魅力を堪能できます。

奥入瀬渓流ホテルのロビーでは、岡本太郎作の巨大暖炉「森の神話」が出迎え、大きな窓から青々とした緑を眺めながらゆったりと過ごせます。

館内はアートと自然の織りなす心地よい空間が広がり、おこもり旅にぴったり。八甲田を源泉とする温泉もダイナミックな自然とともに楽しめます。



■奥入瀬渓流ホテル https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/oirasekeiryu/
いかがですか? 梅雨時期など雨の日は、じっくりと旅先や宿を味わうおこもり旅で、五感で滞在を楽しみましょう。ただし梅雨時は、気温の変動が大きいので温度調整ができる服装をこころがけ、足元も滑りにくいものを選ぶこと。ここ数年、急な雨量の変化で交通機関に影響がでることが(梅雨時に限りませんが)多くなっています。気象情報を配慮しながら、臨機応変に対応をすることも心がけ、旅を楽しまれてくださいね。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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