
「女性セブン」で紹介するたび反響を呼んでいる鍼灸師・松岡佳余子さん考案の「輪ゴム健康法」。手指や手足に輪ゴムをかけたり巻いたりして一定の圧で刺激すれば、痛みや不調を改善し、全身によい効果が期待できるという。体調を崩しがちの猛暑を前に、ぜひマスターしてほしい。
手は全身の縮図!内臓や骨格の不調は「手」の刺激で改善できる
東洋医学では、手のひらや甲にある経絡やツボは、体のそれぞれの箇所に対応していると考えられている。まずは手のどの部分が体のどの箇所に対応しているのかを学んでいこう。
家にあるもので簡単にセルフケアできる
経絡とツボにアプローチする鍼灸治療に加え、手や指のツボを刺激する「手指鍼」を30年以上続け、約1万人を治療してきた鍼灸師の松岡佳余子さん。
「東洋医学では、“手は全身の縮図”と考えられており、手のひらや甲を適度に刺激すれば、体の各部位の痛みや不調を改善することができます」(松岡さん・以下同)
なかでも、指先に集中している毛細血管への刺激が重要と考える松岡さんは、手を指で押したりもんだりするだけでなく、家庭にある輪ゴムを使ったセルフケア法を考案した。
「不調に呼応する部分に輪ゴムをかければ、一定の圧で経絡やツボを刺激することができます。また、両手同時に輪ゴムをかけることもでき、誰かに押してもらったり、自分で押し続ける必要もありません」

手のひら側は内臓の写し鏡。位置は右手も左手も同じで反転しないので、肝臓なら左手の場合はイラストのように人差し指の下あたり、右手の場合は薬指の下あたりに。輪ゴムをかけた後、手のひら側を刺激するとさらに◎。

手の甲側は、骨や関節の写し鏡。こちらも位置は反転しないため、右の甲に対応する骨格は、親指が左足、人差し指が左手、薬指が右手、小指が右足になる。
巻きっぱなし厳禁!1回1分を目安に
不調を感じたタイミングで、1日に何度行ってもいいが、きつく巻いたり、長時間巻きっぱなしにしても効果は高まらない。
「1回につき1分を守り、手指をきつく締め付けすぎない巻き方をすること。輪ゴムを巻いた部分に痛みを感じたり、うっ血して暗紫色になったり、手指が冷たくなった場合は、すぐに輪ゴムを外して。放っておくと、手指が壊死する恐れもあります。
また、輪ゴムをかけて5〜6秒ほどでうっ血したら、動脈硬化や心機能低下の可能性があるので、すぐ医師の診断を受けて」
1日に行う回数や時間を増やすより、毎日続ける方が効果が出やすい。まずは基本の巻き方から始めてみて。
「輪ゴム健康法」知っておきたい3か条
【1】普通の輪ゴムでOK!内径は38mmを
一般的な輪ゴムを使うが、女性は16号(内径38 mm)、男性は18号(内径44.5 mm)を目安に、長時間巻いても違和感のない強さのものを選ぶこと。ゴムアレルギーがある場合は、髪結い用の、ゴムがむき出しになっていないタイプのものを使うとよい。
【2】不調を感じる場所に対応する側の手から行う
左右の手、どちらから行ってもいいが、症状がある部位に対応する側から行うと効果を実感しやすい。叩いたり押圧して痛みのある方を重点的に刺激してから反対側も行って。また、不調を感じていなくても、次ページの「基本の巻き方」を行えば全身が整う。
【3】入浴後や就寝前は避ける
入浴後の体が温まっているときは30分以上時間を空け、クールダウンしてから行うとよい。就寝前に行うのも血流がよくなりすぎて寝つきにくくなる可能性があるため、避けたほうがよい。
「血流」「関節」「骨」を整える【基本の巻き方】
輪ゴム健康法の基本は、手の5本の指のすべてを同時に刺激し、手のひらも押圧すること。まずはこの3つの巻き方をマスターして、全身のバランスや体調を整えていこう。
【その1】《爪もみ巻き》で滞りやすい全身の血流を改善。グーパー運動で免疫力を高める
血流が滞りやすい指先に輪ゴムをかけて手を握ったり開いたりすることで、毛細血管を刺激して全身の血流の改善が期待できる。自律神経失調症、慢性疲労、高血圧、頭痛などに効果が。
【1】親指の爪の生え際あたりに輪ゴムをかける。

【2】1回ずつねじりながら人差し指から順に、小指まで巻きつける。

【3】輪ゴムが爪の生え際にあることを確認する。もう片方の手も同様に。

【4】手を、じゃんけんの「グー」「パー」をするように、1秒かけてゆっくり握り、1秒かけてゆっくり開く。これを10回繰り返したら輪ゴムを外す。

【その2】《指の股巻き》で関節のゆがみを整えて全身の動きをなめらかに
普段動かすことのない指の股を一度に刺激し、全身の関節の動きをなめらかにする。首や肩などのこり固まりやすい箇所の状態を確認してから行うと、即効性を実感できる。
【1】親指の付け根に輪ゴムをかけ、1回ずつねじりながら人差し指から順に、小指まで巻きつけていく。

【2】基本1と同様に手を10回握ったり開いたりし、輪ゴムを外す。

【その3】《手のひら交差巻き》で骨盤を締めて腰痛改善や下腹部を引き締め
骨盤を支えるベルトのような役割が期待できる巻き方。骨盤のゆがみが整うことで腰痛改善、下腹部やお尻の引き締め効果も。輪ゴムの交差部分を指で押圧すれば、内臓不調の改善に。
【1】輪ゴムに手を入れ、親指の付け根の高さに置き、手のひら側の中央で2回ねじって輪を作り、親指以外の4本の指を通す。

【2】手の甲側の輪ゴムが平行になるように調整したら、手を10回握ったり開いたりする。輪ゴムの交差部分を10秒ほど押圧し、輪ゴムを外す。

慢性的症状から突然の痛みまで《つらい症状別巻き方8選》
肩こりなどの慢性的な症状だけでなく、頭痛などの突然の痛み、冷え症などの全身症状にも効果的な輪ゴム健康法。輪ゴムを巻いた部分を押圧し、各10秒ほどもむとさらに効果がアップする。
【頭痛】頭に対応する部位とツボを刺激(2本使用)
頭部に対応する中指の先を刺激して痛みを緩和。親指には、頭や肩など上半身の自律神経の乱れを抑えるツボがある。

【1】中指の爪の中間部に4回(ややきつめに)巻きつける。
【2】親指の爪の中間部に4回(ややきつめに)巻きつける。指輪をクルクル回すイメージで、輪ゴムをもう片方の指でしごく。反対の手も同様に行うか、痛みが強い方の手の指のみでもよい。
【肩こり】首から肩にかけての血流を改善(3本使用)
肩甲骨に対応する中指の第二関節に交差部分を作り、肩関節に対応する中指の両付け根とともに刺激する。

【1】人差し指の付け根に3回巻きつける。
【2】薬指の付け根に3回巻きつける。
【3】中指の第二関節の少し下に輪ゴムをかけ、手の甲側、手のひら側、手の甲側の順でねじり、第一関節と第二関節の間で巻く。反対の手も同様に。
【不眠症】リラックス効果を高める(2本使用)
交感神経を抑えて寝つきをよくする。強く巻くと刺激が強いので、ゆるめに巻いて就寝前に外すこと。

【1】中指の爪の生え際と、第一関節の間に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】薬指の第二関節に輪ゴムをかけ、第一・第二関節に交差部分がくるようにして巻きつける。手の甲側の交差部分を押圧する。反対の手も同様に。
【もの忘れ】脳と自律神経を整える(3本使用)
頭部に対応する中指の先を集中的に刺激して、脳と自律神経を整え、疲労からくるもの忘れを改善。

【1】中指の爪の中間に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】爪の生え際と第一関節の間、【3】第一関節にもそれぞれ輪ゴムを3回巻きつける。すべての輪ゴムを指輪をクルクル回すイメージで、もう片方の手の指でしごく。反対の手も同様に。両手を同時に巻いてもよい。
【冷え症】全身に血流を行きわたらせる(6本使用)
手のひらと同時に、5本の指先すべてを刺激し、全身の血流を促して体を温める。

【1】親指と人差し指の股、小指の付け根に輪ゴムをかけて、手のひら側で2回ねじって甲側に回し、上下の輪ゴムの位置が親指の幅になるよう、下の輪ゴムの位置を上げる。
【2】5本のすべての爪の生え際に輪ゴムを3回巻きつける。反対の手も同様に。
【高血圧】根気よく巻き、血流を改善(3本使用)

3本の指を刺激して血流改善につなげる方法。基本1の「爪もみ巻き」にも、高血圧の改善効果がある。
【1】薬指の第二関節に3回巻きつける。
【2】小指の第二関節に3回巻きつける。
【3】中指の第二関節に輪ゴムをかけ、手のひら側、手の甲側、手のひら側の順に交差させて巻きつける。反対の手も同様に。
【更年期障害】内臓を刺激し、ホルモンの乱れを調整(3本使用)
手のひらの下部への刺激で内臓全体を、薬指と小指の第一関節への刺激でホルモンバランスを整える。

【1】親指と人差し指の股、小指の付け根に輪ゴムをかけ、手のひら側で2回ねじって交差させ、甲側に回す。
【2】薬指と小指の第一関節に、それぞれ輪ゴムを3回ほど巻きつける。【1】の交差部分を押圧し、【2】は指輪をクルクル回すイメージで、輪ゴムをもう片方の手でしごく。反対の手も同様に。
【便秘・下痢】腸にアプローチして腸内環境改善(各3本、2本使用)
便秘も下痢も、腸内環境の悪化が原因。便秘は手のひら、下痢は指を刺激すること。

《便秘の場合》
【1】親指と人差し指の股、小指の付け根に輪ゴムをかけて2回ずつ巻きつける。
【2】親指の付け根と小指側に2回巻きつける。
【3】【1】【2】と平行になるように手首の少し上に輪ゴムを2回巻きつける。反対の手も同様に。
《下痢の場合》
【1】薬指の第二関節に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】小指の付け根に輪ゴムを3回巻きつける。反対の手も同様に。
輪ゴムを巻かずに…はめるだけ《関節の痛み別改善術》
年齢を重ねると、関節のあちこちに痛みを感じる人が増えるが、そうした関節のトラブルに着目して考案されたのが、「手足輪ゴム健康法」。“手と足のポイントに輪ゴムをはめるだけ”という、驚くほど簡単なセルフケアだ。
「体をあまり動かさないでいると筋肉が衰えて、関節をつなぐじん帯が硬化し、関節の動きが悪くなります。これを防いで体の不調を改善するには、関節の周囲を押圧刺激して血行を促すことが有効です。
一方、輪ゴムを関節にはめることで関節を360度にわたって刺激できるこの方法は、ピンポイントのツボを探すよりも簡単。片方ずつでも、左右同時に輪ゴムをはめてもかまいません」(松岡さん)
・輪ゴムのサイズ
肩関節や太もも、ひざには18号(内径44.5mm)を。足先や手先は16号(内径36mm)でもOK。
・共通のはめ方
【1】輪ゴムを2〜3本束ね、不調のある部位に呼応した体の箇所にはめる。手のひら以外は衣類の上からはめる。
【2】うっ血しないように10分程度おいて外す。
【3】【1】【2】を1日に数回繰り返す。続けて行う場合は、10分以上時間を空ける。
※症状が軽い場合は、【A】のみでもよい。程度に応じて【A】〜【C】まで輪ゴムを順番にはめる。

【肩関節痛】痛みをともなうこりや、五十肩など
【A】わきの下から肩関節にかけて、【B】上腕の付け根、【C】わきの下から肩上の順に、各10分程はめる。
【ひじ痛】ひじ痛に加え、テニスひじなどにも
【A】ひじ関節の中心位置、【B】ひじ関節を上がって少し凹んだ部分、【C】ひじ関節から少し下がって凹んだ部分の順に、各10分程はめる。
【腰痛】腰の痛み、だるさに
【A】手のひらの中央・親指と小指の間、【B】親指の付け根の関節の位置の順に、各10分程はめる。
【手首痛】手首の痛み全般に
【A】手首のまわり、【B】手首を少しひじ側に上がって凹んだ位置、【C】手のひらの下の部分の順に、各10分程はめる。
【ひざ痛】ひざの痛み、ひざ関節炎に
【A】ひざ関節周囲、【B】ひざ関節より少し上の凹んだ位置、【C】ひざ関節から少し下がって凹んだ位置の順に、各10分程はめる。
【股関節痛】股関節の痛み、だるさに
【A】股関節周囲・足の付け根あたり、【B】太ももの上部・股関節から5〜6cm下がった位置の順に、各10分程はめる。
【足関節痛】足関節の痛み、捻挫にも効果的
【A】足首まわり、【B】足首より少し上の凹んだ位置、【C】かかとの位置の順に、各10分程はめる。
【足裏痛】足の裏全般の痛みに
【A】足の土踏まずのあたり、【B】足指の付け根の位置の順に、各10分程はめる。
◆鍼灸師・松岡佳余子さん
アジアン・ハンドセラピー協会代表、鍼灸師。本場中国の中医薬大学等で研鑽を積む。鍼灸を発展させたセルフケアメソッドを考案。
取材・文/山下和恵 イラスト/いばさえみ、勝山英幸
※女性セブン2025年7月17日号