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《夫が知らない妻の本心》“共働きなのに家事や育児の負担は妻”のケース、妻の積年の恨みは定年後の“熟年離婚”で決着する 

ただ妻の後をついて回る夫にほとほと嫌気

昨年、同い年の夫と一緒に定年を迎えたEさん(61才)は働こうと思えばまだまだ働けたが、これまでがむしゃらに働いてきたので一旦休もうと夫婦で決めて、セミリタイア生活に入った。

だが時間ができたからとずっとやりたいと思っていた習い事や外出を楽しむ妻とは対照的に、夫には「これをやりたい」という主体性がなく、ただ妻の後をついて回るだけだった。

「私を真似て始めた社交ダンスではロクに踊れず逆上して怒り出し、古典文学の勉強会に出たら大いびきをかいて居眠り。絵画教室では小学生以下の絵を披露して周囲を唖然とさせました」(Eさん・以下同)

極めつきは妻と友人との食事会だった。誘ってもいないのに妻について無理やり出席した夫は、「疲れた」「もう帰ろう」と空気を読まない発言を連発して、妻に大恥をかかせたのだ。

「さすがに夫を人前に出すのがはばかられて、仕方なく家にこもってドラマや映画を見ていると、『これってどんな話なの?』『この人は何の役?』などと質問攻めにされ、あまりの濡れ落ち葉ぶりにほとほと嫌気がさした。ウザい、の一言です」

もうこれ以上、夫につきまとわれるのはごめんだと心に誓ったEさんは、再び外で働くために再就職の準備を始めたという。

慣れない家事をいちから教えるのも手間になる(写真/PIXTA)
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定年後の妻が現実を見つめる一方、夫はロマンを求めるというのは小林さんだ。

「男性の方が女性よりロマンチックで、定年後は妻とゆっくり過ごしたいと思いがち。活発に動く妻に対して、“すぐ友達と出かける”“おれの相手をしてくれない”などと、寂しさを訴える夫が少なくない。

60才前後はまだ男性として元気な人もいて妻を異性として見るようになり、現役時は別々だった寝室をまた一緒にしようと提案することもある。もっとも、多くの妻は『いまさらありえない。勘弁して』と呆れますけど」

無用のロマンを抱く夫とは逆に妻は家にいる夫が鬱陶しく、夫を置いていそいそと外出する。

「家にいると夫がしょっちゅう話しかけてくるのが嫌でたまらず、公民館などに出かけてヨガや体操をすることが増えがちです。だいたいお昼は何か用意しておくんですけど。

夫が定年後の夫婦旅行を望んでも妻は家にいる夫と旅行まで一緒に行きたくないと、友達との旅やひとり旅を選ぶ人も多いと思います」(小川さん)

ただし、かつての定年の概念が崩れて就労期間が長くなったいま、妻にとっては、夫がずっと家にいる「地獄の季節」がいくらか短くなっていることも事実である。

「夫が60才で定年退職すると妻と一緒にいる時間が長くなり、夫婦間のトラブルが多くなります。一方で、夫が65才まで働くと年齢的にだいぶおとなしくなり、その後の揉め事は少なくなる傾向です」(小林さん)

定年前後に夫婦の関係がギクシャクすると、そこから先の介護にまで影響する可能性もある。

「夫婦仲がこじれて介護になると、寝たきりの夫から『ティッシュを取ってくれ』と言われた妻がわざとティッシュの箱を後ろにずらして意地悪したり、介護ベッドからずり落ちた夫に対し、妻が“どうせ上げてもまた落ちるから”と後回しにしたりする事態に陥ります。

確かに昔の夫の所業のせいかもしれないけど、あまり冷たくすると後味が悪く、夫の死後、妻が良心の呵責に苛まれる恐れがある。やはり元気なうちから良好な夫婦関係を維持して、恨みつらみを介護に持ち込まないことが望ましいですね」(小川さん)

熟年離婚の割合は年々増加している!
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(第3回に続く。第1回を読む

※女性セブン2025年7月17日号

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