健康・医療

《国内で100万~200万人が罹患》「慢性副鼻腔炎」は放っておくと“がん”につながることも 実は危険な“鼻づまり“の原因、治療法、セルフケアを医師が解説

鼻をかむ女性
「鼻づまりが治らない」という人、手遅れになる前に対応を(写真/Getty Images)
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「鼻水が化膿し、おでこにもたまっていた」と明かし、お笑いタレントの有吉弘行(51才)が「慢性副鼻腔炎」の手術を受けたのは2023年のこと。ほかにも俳優の佐藤健(36才)ら多くの著名人がここ数年、同様の手術を受け、注目されている。「鼻づまりが治らない」という人、手遅れになる前に必読です。

実は危険な鼻づまり
実は危険な鼻づまり…放置すると危険!? (漫画/なとみみわ)
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鼻づまりの慢性化でがんのリスクが2倍に

西日本では梅雨が明けたが、いまだ気圧が不安定で風邪のような不調に悩まされる人は多い。高温多湿のこの季節は、カビやダニが発生しやすくアレルギー症状が出る人も。“危険な鼻づまり”は、そんな身近な不調から始まると、耳鼻咽喉科専門医の長友孝文さんは言う。

「アレルギー性鼻炎による鼻づまりの場合、アレルギーを自覚した患者さんが早々に対処するケースが多いのですが、風邪による鼻づまりは自然に治ると思ってきちんと治療しない人も。その結果悪化し、何か月も鼻づまりが続いたり、嗅覚障害や頭痛などの症状が出たりして慢性化することがあります」(長友さん)

風邪などが原因の鼻づまり(急性副鼻腔炎)が悪化すると「慢性副鼻腔炎」となり、治療には手術が必要になることも。患者数は国内で約100万~200万人いるとされ、放っておくと、副鼻腔がんの発症リスクが2倍以上に高まる。たかが鼻づまりと侮らず、正しい対処法を知ろう。

《最終的に手術!?》「鼻炎」「ポリープ」「鼻中隔湾曲症」 長引く鼻づまりの原因と治療法

頭痛や目の周りの痛みなど、鼻がつまる以外の症状が出たら、手術が必要かも!? 鼻づまりが引き起こす“重病”の治療法を紹介する。

鼻づまりが3か月以上続いたら要注意!

そもそも鼻づまりの主な原因は、風邪をひいたときなどに起こる「鼻炎」だ。これは、鼻の粘膜がウイルスや細菌に感染することで炎症を起こした状態を指す。鼻の粘膜が炎症や腫れによって膨らみ、空気の通り道が狭くなったり、粘性の鼻水がたまったりすると、鼻づまりが起こる。

「副鼻腔とは額や鼻、目のあたりにある大小の空洞のこと。鼻炎の症状は、数日から2週間程度で風邪が治れば解消されますが、鼻腔の粘膜の炎症が副鼻腔へと広がると、急性副鼻腔炎と診断されます」(長友さん・以下同)

炎症が起こる場所により痛みが異なる
炎症が起こる場所により痛みが異なる(イラスト/なとみみわ)
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急性副鼻腔炎は風邪のほか、口腔内の虫歯菌や歯周病菌が原因で起こったり、アレルギー性鼻炎の合併症として発症したりすることもあるという。

「鼻づまりなどの症状が3か月以上続いた場合は、慢性副鼻腔炎になっている可能性が高いといえます。そうなると、ドロッとした黄色い鼻水が出たり、鼻水から出る悪臭が気になったりします。頭痛をはじめ、鼻や目の周りが痛くなることも。この鼻水がのどにまで流れると、気管支炎を誘発することもあります」

鼻づまりが続くと集中力が低下し、仕事に悪影響を及ぼすこともある。

「急性、慢性ともに主な治療法は、抗生物質を中心とする薬物療法と鼻腔や副鼻腔内にたまった鼻水や膿を吸引する局所療法。

粘膜の腫れが長く続いたり、繰り返し起こったりすることでポリープ(鼻たけ)ができて鼻づまりを助長することもあり、その場合は、内視鏡手術が必要となります」

ちなみに、風邪をひいていないのに鼻づまりが気になる場合は、左右の鼻腔を隔てている「鼻中隔(びちゆうかく)」という壁が、どちらかに大きく曲がっていて空気の流れを悪くしている場合もある。これを「鼻中隔湾曲症(びちゆうかくわんきょくしょう)」といい、この場合も治療には手術が必要になる。

副鼻腔がんの手術で顏が変形することも

慢性副鼻腔炎は最悪の場合、鼻腔や副鼻腔のがん(特に上顎洞がん)を発症する可能性があるのは前述の通り。発見が早ければ内視鏡手術で対応できるが、発見が遅れると大きな手術や抗がん剤、放射線療法が必要になると、頭頸部がんを専門とする医師の田原信さんは言う(「」内、以下同)。

「近年では、抗がん剤や放射線による治療も進んでいますから、たとえがんのステージがⅢやⅣAまで進行していても、治すことはできます」

とはいえ、手術をした場合は顔に傷痕が残ったり、変形したり、眼球を切除するケースもあるという。

「術後、人目が気になって外出ができなくなったり、うつ病を発症したりする患者さんもいます」

鼻腔や副鼻腔のがんは、大腸がんや乳がんなどと比べれば発症率は低いが、術後のQOL(生活の質)が下がる可能性が高い。長引く鼻づまりを「いつものこと」と放置せず、軽症のうちから耳鼻咽喉科を受診するよう心がけたい。

こんな症状があれば慢性副鼻腔炎を疑って!
こんな症状があれば慢性副鼻腔炎を疑って!
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