
杉は、「生きていく上でいちばん難しいことは、理解すること」だと高校生たちに訴えた。
「自分はまだまだ若いと思っているだろうけど、皆さんもいずれ死にます。この短い人生をどう生きるのか。自分が生きている意味を問い続け、答えを探すんです。力強く生きないと、人生もったいない! 理解に近づくには経験をすること。人が書いたものを読んで感じたことではなく、自分の経験に基づいた考えを持ってほしい。ネットも便利だけど、すべてが正解ではない。そこだけで答えを探そうとしても、本当に中身まで練られた人間になることは難しいんじゃないかと思います。
皆さんに立派な人になってほしいとは思いません。立派とは何かはわからない。でも人に迷惑をかけない人間にだけはなってほしい。そして、人生の目的は何か、想いを巡らせて考えてください」
明日を生きるヒントとして、何かひとつでも、若者たちの心に残ればいい――。その一念で杉は収録の時間が過ぎても、生徒たちの質問に答え続けた。マイクは使わず生の声で、生徒たちに歩み寄ってひとりひとりの顔を見ながら、心と心で対話を試みた。
講演後、「なぜそこまでして福祉をやるのか、売名だろう、とさんざん言われ続けた。ここまでくると売名という言葉は出てこなくなったけれど、銀行でお金を借りてまでやるなんてヘンなやつだ、と。でも、性分だから。自分の身を抵当に入れようと、こうして生きているんだからいいんじゃないかと思うんだ」と杉。同じ質問に繰り返し答える理由を「こうした機会に理解者が増えたらいいな、福祉の輪を広げられればいいなと思っている」と、明かした。
若者へ語り続けた90分。生徒たちは65才上の先輩の話に真剣に耳を傾け、杉を前に政治家になりたい夢なども語った。そんな彼らに、杉は何を感じたのか。
「特殊詐欺の受け子など、若い世代にはそうした悪い報道からくるイメージも重ねられてしまっている。でも、そうではない。こうして社会貢献についての意見を聞きたいという若い人たちがいて、世の中捨てたものじゃないと思えた」
まっすぐ自分の夢を求めて一直線に歩もうとする、そんな子どもたちも大勢いるんだと世の中へ伝えられたら――。若者と交流してひとつ理解を深め、杉はかみしめるようにそう語った。