健康・医療

《夏の尿トラブルに注意》「頻尿」「膀胱炎」のリスクと対策を医師が解説 細菌の繁殖や重大な病気につながるケースも

股間を抑える女性
重大なリスクをはらんでいる可能性がある夏の尿トラブル(写真/PIXTA)
写真4枚

「年々トイレが近くなって、せっかくの旅行や映画も100%楽しめない」「立ち仕事でトイレに行く暇もないほど忙しくて膀胱炎ぎみ」……多くの女性が抱える「頻尿」「膀胱炎」の悩みは、年齢のせいだと甘く見てはいけない。特に真夏の尿トラブルには、恐ろしいリスクが隠れている。

今年もレジャーや帰省のシーズンが到来した。長距離移動や観光地での行列では、トイレの心配がつきものだという人も多いだろう。もし、「最近、頻尿ぎみだから夏のおでかけが心配…」という兆候があるなら要注意。実は、夏の「頻尿」や「尿漏れ」、「膀胱炎」は、命にかかわる重大なリスクをはらんでいるかもしれないのだ。

「夏の頻尿」危険な兆候リスト
「夏の頻尿」危険な兆候リスト
写真4枚

夏こそ「冷えて」危ない頻尿を招く

特に気をつけるべきは「これまでは問題がなかったのに、夏になってから急に頻尿になった」ケースだ。その原因の1つは「冷え」だという。排泄ケア専門看護師の西村かおるさんが解説する。

「効きすぎるエアコンや冷たい飲食物の摂りすぎが夏の頻尿を招きます。特に下半身が冷えると血流が悪化した膀胱が刺激に敏感になり、頻尿になってしまう」

冷えによる自律神経の乱れも頻尿の一因だ。成城松村クリニック院長の松村圭子さんが話す。

「冷えると交感神経が優位に働いて体が“興奮状態”になり、全身の筋肉が収縮します。すると膀胱も頻繁に収縮し、尿意を感じやすくなるのです」

エアコンの効いた室内で長時間過ごすなど汗をかく機会が減ると、水分を排出する力が低下し、むくみやすくもなる。そうして水分をため込むと、「夜間頻尿」や「尿漏れ」につながる。

「通常であれば、夜間は血流量と尿量が減りますが、体が冷えてむくんでいると、寝ている間に尿がつくられやすくなります。布団に横になると、足と内臓が同じ高さになるため、足など体の下の方にたまっていた水分が血液とともに腎臓や心臓の方に流れていき、昼間につくられなかった尿がつくられます」(西村さん・以下同)

トイレにいる人
夜間頻尿に重病が潜んでいることも(写真/PIXTA)
写真4枚

夜間頻尿は、寝室とトイレの往復で転倒のリスクがあるほか、心臓疾患や腎臓疾患といった、重大な病気の予兆の可能性もある。

「怖いのは、夏だとそれを水分の摂りすぎや冷えのせいだと誤解してしまうこと。たとえば心臓疾患を抱えていると血流が悪くなってむくみやすく、それが夜間頻尿を招いている可能性があります。また、腎機能が低下していると、体が活動している日中は尿をつくる余力がなく、寝ている間にしか尿をつくれなくなっていることも。いずれも自覚症状がないことが多いため、夜間頻尿は1つの重大サインと考えるべきです」

中には睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿の一因になっているケースもある。

「眠っている間に呼吸が止まることで心臓に負担がかかるので、心臓を守るために『心房性ナトリウム利尿ペプチド』という血流をよくするホルモンが分泌され、その影響で尿量が増えやすくなります」

夜間頻尿は睡眠の質を下げることにもなり、睡眠不足によって免疫力が落ちてさまざまな病気を招く要因にもなるのだ。

夏の「膀胱炎」は命に関わる

膀胱炎は、睡眠不足などで免疫力が低下することで引き起こされる。膀胱内で細菌が繁殖して発症する病気で、特に夏は暑さによる「脱水」も、膀胱炎の要因になる。

「通常はトイレに行けば尿と一緒に細菌も排出されますが、脱水によって尿量が減ると尿が濃くなり、細菌が繁殖しやすくなります。また女性は男性と比べて尿道が短いので、細菌が尿道から膀胱内に侵入しやすいため、注意が必要です」(松村さん・以下同)

膀胱炎になると、排尿痛や残尿感などの症状が出る。ひどい場合は尿に血が混じることもあるという。自覚症状があれば泌尿器科などを受診して抗生物質をのめば治るが、慢性化すると症状がないまま細菌が繁殖し続けるケースもあり、放置すると命にかかわる「腎盂腎炎」に発展する可能性もある。

「膀胱で繁殖した細菌が腎臓まで広がって炎症を起こす病気で、膀胱炎の段階ではみられない高熱や腰痛があるのが特徴です。ひどくなると、腎臓から血液を介して全身に細菌が回り、敗血症で命を落とす可能性もあります」

また、非常にまれなケースながら、頻尿による脱水が脳梗塞や心筋梗塞につながることもあるという。

「頻尿で体内の水分が不足すると血液がドロドロになり、血栓ができやすくなり、詰まることも考えられます。高血圧や動脈硬化を抱えている人が夏に頻尿になったら、注意が必要です」

レモンイエローより薄い色がベスト

頻尿や膀胱炎の不安を感じたら、それが重大な病気のサインかどうか自分の尿をチェックすることが重要だと、西村さんは言う。

「使い捨ての紙コップなどで、朝一番の尿を確認しましょう。膀胱炎が進んでいる場合は菌によって尿の色が非常に濃くなって濁り、魚が腐ったような強い悪臭があるのが特徴です。そのうえで、38℃以上の高熱のほか、腰や背中に痛みがあると、腎盂腎炎の可能性が考えられます」(西村さん・以下同)

便器に座る人
加齢のせいだけではない尿もれ(写真/PIXTA)
写真4枚

頻繁な尿漏れも加齢だからと放置してはいけない。腎臓の不調で多尿になっていたり、膀胱が過敏になっている可能性も考えられる。

夏に尿トラブルを感じたら、まずは体内の水分バランスを整えること。尿を濃くしないようしっかり水分を摂り、尿意があったらがまんしないこと。逆に、トイレに行けないからといって水分を控えるのもNG。

「水の飲み方も重要です。エアコンの効いた室内で冷たい水を一気に飲むと、体が冷えて頻尿になりやすいうえ、胃腸が疲れて免疫力も低下します。氷はできるだけ入れず、時には白湯を飲むなど工夫しましょう。尿の色がレモンイエローより薄くなるくらいを目指して水分を摂ってください。

また、クランベリーのジュースやサプリメントもおすすめ。尿を酸性に保って細菌の繁殖を抑え、膀胱壁に細菌が付着するのを防ぐ作用があります」

それでも頻尿や膀胱炎の症状が現れたらすぐに医療機関を受診することが重要だと、松村さんは言う。

「泌尿器科を受診したうえで、自分では水分の摂り方に気をつけ、食事や睡眠、冷え対策で免疫力を高め、悪化や再発を防ぐのがいちばんの近道です。年をとったせいと甘く見ていると命にかかわる病気を見落とす危険もあります」(松村さん)

自分の体のことをいちばん知っているのは自分だけ。体が発するサインを見逃さないようにしよう。

※女性セブン2025年8月14日号

関連キーワード