
誰であっても認知症になる可能性はある。もしそうなったときのために、どのようなケアが最適か家族で話し合うことは重要だ。認知症になっても自分らしく生きるための家族会議において重要な確認事項となるのが介護の方法や活用する支援制度についてだ。具体的にどのような話し合いをすればいいのか──。【全3回の第2回。第1回を読む】
介護サービスは本人が納得してから
家族で話し合う際に確認しておきたいのが、どんな介護や支援制度があるか。あわせて、できる限り自宅で過ごしたいのか、病院や施設を頼りたいかどうかだ。
埼玉県在住のBさん(47才・女性)は、先日、母から「もし私がBのことをわからなくなったら、施設に入れてね」と言われたと明かす。
「75才の母はもの忘れこそありますが、まだまだ元気。でも、テレビで認知症の親を介護する家族のドキュメンタリー番組を見たことで、“子供に迷惑はかけたくない”と思ったそう。母はそう言うけれど、私は可能な限り一緒に過ごしたい。いざとなればわかりませんが、何を頼れるか学ぼうというきっかけになりました」
すべての介護を家族が担うと、介護疲れで倒れかねないので上手に支援を活用したい。認知症の母親を20年にわたり介護してきたタレントの岩佐まりが話す。
「介護保険などの大きな制度は知られていますが、市区町村の自治体独自の制度や取り組みは把握が難しい。私も家族会などに参加したときに、おむつの助成が月5000円あると知り、大変ありがたかったです。
介護サービスを無理に使う必要はありませんが、デイサービスやショートステイを活用することで、家族も介護を考えないオフの時間が取れます。私もデイサービスとショートステイを活用したことで、子育てや仕事の希望を諦めずに今日まで20年間、母の介護を続けてこれました」

ただしヘルパーは気軽に利用すると大変なケースもある。介護保険外看護サービス・わたしの看護師さん代表の神戸貴子さんは、こう話す。
「介護保険を使うと1時間300円程度で利用できるため、ヘルパーを気軽に付けるケアマネジャーや利用者家族がいますが、赤の他人のヘルパーがいきなり家に来て、勝手に掃除や料理、買い物といった仕事を奪うことになるので、認知症のかたにとってはものすごいストレスになります。
実際にヘルパーさんに怒鳴り散らしたり、勝手に解約したり、居留守を使って家に上げないように抵抗される例も多いです。必ず本人の納得を得られるように対話をしながら進めてください」
介護を考える上では、介護資金についてもシミュレーションしておく必要がある。明石行政書士事務所代表の明石久美さんが言う。
「介護サービスを受ける費用はもちろん、施設に入れるとなれば、どんな施設か、金額面ではどれほどかかるか、それを誰が負担するのかまでを話しておくことが理想です。がんなどの病気であれば、罹患してからでも話し合いはできますが、認知症が進行してしまうと難しい。
金融機関が認知症と認識すると、銀行口座が凍結されてしまうケースもあるので、事前に代理人登録をしておくと安心です」

(第3回につづく。第1回を読む)
※女性セブン2025年8月14日号