
全国にある大学には、研究成果の社会還元や生涯学習の機会提供を目的とした博物館やミュージアムがあるのをご存じだろうか。研究活動と深く結びついた資料や展示内容が特徴で、入館料は無料~500円以下。涼しくて避暑にも最適な夏休みのキャンパスに、知的欲求を満たしに出かけませんか?

どこから回る!? 全国の大学博物館
全国には数多くの大学博物館があり、展示物は剝製や標本、工芸、美術作品などさまざま。学生の解説付きで見学できるところも!
個性豊かな建物も見どころ
「17世紀まで遡る」という大学博物館の歴史を、美術ライターの浦島茂世さんが説明する。
「世界最古の大学博物館は17世紀後半、イギリスのオックスフォード大学で生まれました。日本では、1870年代に東京大学が付属の植物園を設置したのが最古とされています。その後、北海道大学農学部や東京農業大学資料室など、自然系の博物館が登場します」
日本で一般公開を目的とした「博物館」が整備され、活発に活動するようになったのは、1995年以降のこと。
「その背景には、当時の文部省学術審議会が『ユニバーシティ・ミュージアムの設置について』という報告書に、『大学に博物館をつくりましょう』という提言を行ったことが挙げられます」(浦島さん・以下同)
大学博物館には、どんな魅力があるのだろうか。
「その大学が研究している専門分野の貴重な資料など、最先端の研究成果が『展示』という形で、誰にでもわかりやすく解説されているところですね。
たとえば『杉野学園衣裳博物館』(東京)は、日本初の衣裳博物館で、日本はもちろん、西洋衣裳や各国の民族衣裳なども公開しています。『國學院大學博物館』(東京)は考古学の歴史以外に、神道についての展示もわかりやすく、勉強になります」
展示内容だけでなく、建物も魅力的なものばかり。
「『駒澤大学禅文化歴史博物館』(東京)は、『銀座ライオンビアホール』などを手がけた建築家の菅原英蔵さんが設計したスタイリッシュな建物で、外観を見ているだけでも充分楽しめます」
キャンパス内にあることが多く、学生気分で散策できるのも楽しい。
「ただし、関係者以外立ち入り禁止の場所もあるため、ルールやマナーは守りましょう。入館料は無料のところが多いですが、パンフレットやグッズなどを買う場合、クレジットカードなどが使えないところもあるので、現金を忘れずに」
【北海道】北海道大学総合博物館水産科学館
約70年の歴史があり、今年4月にリニューアルオープン。さまざまな種類の水圏生物(※水圏生物は、水中に生息する生物全般のこと)の剝製のほか、屋外には14mのニタリクジラの全身骨格標本が展示されている。

住所:北海道函館市港町3-1-1
営業時間:10~16時
休日:日・月・祝
料金:無料
【山形】山形大学附属博物館
1952年「山形大学附属郷土博物館」として開館。1978年に現在の名称に。山形県寒河江市石田遺跡より出土した「結髪土偶」(縄文時代晩期)を展示している。
住所:山形県山形市小白川町1-4-12 人文社会科学部1号館
営業時間:9時半〜17時
休日:土・日・祝、お盆、年末年始
料金:無料
【宮城】東北大学総合学術博物館
世界最古の魚竜ウタツサウルスや黒鉱鉱石など生命の進化をたどる化石や、大地の成り立ちを記す岩石・鉱物、約1500点を展示。1995年開館。
住所:宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
営業時間:10〜16時
休日:月(祝日の場合は翌日)、お盆ほか
料金:大人150円
【茨城】茨城大学五浦美術文化研究所
1955年に天心偉績顕彰会から寄贈。岡倉天心記念館では、近代日本美術の発展に尽くした天心の遺品や平櫛田中などの作品も展示している。
住所:茨城県北茨城市大津町五浦727-2
営業時間:4~9月の8時半~17時半ほか
休日:月(祝日の場合はその翌日)
料金:一般400円
【千葉】千葉大学 サイエンスプロムナード
数学、物理、化学、生物、地球科学の研究を展示。学生スタッフが展示説明をすることも。2001年開館。
住所:千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33理学部2号館1・2階
営業時間:月~金の10時~17時半、土の12~16時
休日:日・祝、お盆ほか
料金:無料
【東京】明治大学博物館
96年の歴史を持つ「刑事博物館」と「商品博物館」「考古学博物館」が、2004年10月に統合。所蔵資料は45万点以上。
住所:東京都千代田区神田駿河台1-1
営業時間」月〜金曜:10〜17時(入館は16時半まで)。土曜:10〜16時(入館は15時半まで)
休日:日・祝日、8月12〜15日、9月19日までの土曜。
入場料:無料
【東京】東京理科大学 近代科学資料館
明治時代の乾電池や東京理科大学で使用された実験機器など、貴重な資料を多数展示。前身の東京物理学校は夏目漱石の小説『坊っちゃん』の主人公の出身校で、同原稿のレプリカなども見られる。
住所:東京都新宿区神楽坂1-3
営業時間:水・木・金の12〜16時、土の10〜16時
休日:日・月・火・祝及び大学の休業日
料金:無料
【東京】東京大学総合研究博物館
収蔵品は400万点以上にのぼり、彗星のチリやレアアース泥といった世界的発見の標本も見られる。9月5日まで特別展示「FORMOSA-異端の植物学者 早田文藏」を開催中。1996年発足。

住所:東京都文京区本郷7-3-1
営業時間:10〜17時(入館は16時半まで)
休日:土・日・祝、お盆休みほか
料金:無料
【神奈川】麻布大学いのちの博物館
さまざまな動物の本物の標本を多数展示し、「いのち」の大切さについて学べる。ゾウの頭骨、シカの角やキリンの脚の骨、ウマやトラの頭骨に触って体感できるコーナーも。予約制。2015年開館。
住所:神奈川県相模原市中央区淵野辺1-17-71
営業時間:10時~15時半
休日:土・日・祝ほか大学の休みに準ずる
料金:無料
【愛知】名古屋大学博物館
日本在来種「木曽馬」やマッコウクジラの骨格標本、世界中の岩石などを展示。一部の標本はタッチできる。資料点数は約20点。現在、特別展「発光生物 裏庭から深海まで -光を操る生き物たち」を開催中2000年開館。

住所:愛知県名古屋市千種区不老町
営業時間:火〜土の10〜16時(入館は15時半まで)
休日:日・月
料金:無料
【京都】京都工芸繊維大学 美術工芸資料館
絵画、彫刻、金工、漆工、陶磁器、繊維品、考古品などを収蔵。前身の京都高等工芸学校図案科が教材用に集めたポスターにはロートレックやクリムトなどの作品も。1980年設立。
住所:京都府京都市左京区松ヶ崎橋上町
営業時間:10〜17時(入館は16時半まで)
休日:日・祝、お盆ほか
料金:大人200円~
【大阪】大阪大学総合学術博物館 待兼山修学館
日本で発見されたワニ類の化石第一号の「マチカネワニ化石」や国産初の電子顕微鏡を展示。建物は登録有形文化財に指定されている。2002年開館。

住所:大阪府豊中市待兼山町1-20
営業時間:10時半〜17時(入館は16時半まで)
休日:日・祝、お盆、年末年始
料金:無料
【島根】島根大学総合博物館アシカル
約200㎡の展示室の中には、絶滅した「ニホンアシカ」の明治19年の剝製標本や、国内で一体しか残されていない「オキウマ」の明治21年の骨格標本、世界最古の「アユの化石」などを展示。1918年開館。

住所:島根県松江市西川津町1060
営業時間:10〜17時
休日:日・祝、振替休日、年末年始ほか
料金:無料
【長崎】長崎大学医学ミュージアム 原爆医学資料展示室
原爆の爆心地から約600mという至近距離にあった旧長崎医科大学・附属医院の被害状況を伝承。当時の写真や、被爆直後の救護活動、原爆が人体に与える医学的影響などをパネルで展示。2008年開館。
住所:長崎県長崎市坂本1-12-4
営業時間:9〜17時
休日:土・日・祝、年末年始(8月は土日祝開館)
料金:無料
【沖縄】琉球大学博物館 風樹館
イリオモテヤマネコやヤンバルテナガコガネ、ヤンバルクイナ、ジュゴンなど琉球列島の貴重な生物の標本のほか、首里城関連の考古資料、琉球王国や沖縄の歴史や文化に関する展示も。1967年開館。

住所:沖縄県中頭郡西原町千原1
営業時間:10〜16時
休日:土・日・祝
料金:無料
※大学博物館は、入試や夏休み期間、大学の行事などにより、休館する場合があるので、必ず公式ホームページで確認してから出かけよう。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2025年8月21・28日号